風来
前号で紹介した内橋克人氏の『日本の原発、どこで間違えたのか』(朝日新聞出版)の最終章<なぜ原発を作り続けるのか、電力会社の「利益」と「体質」>には、「『安い原発』の発電コストを解明する」という節がある
▼この節では、本書が『原発への警鐘』という題名で刊行された30年前、アメリカのあちこちの州議会で、州内に抱えた原子力発電所の廃炉のための費用を誰が、どんなやり方で負担するのか、住民も加えた特別委員会で議論されたことが報告されている
▼この時、電力会社は廃炉のための費用が原発の建設に要した費用の2〜3倍になるだろうと発表し、その費用の半分を電力料金で回収したいと要求した。これに対し、地域住民が「廃炉のために必要となる費用も用意しないで、原発をつくったのか!?」と抗議した
▼そのことを報告しながら、内橋氏はこの「原発未来図」が「わが国について描かれる日はそう遠いことではないだろう」と述べ、「原発のライフサイクルにとって、最重要の柱と考えられるコストをコストとして算入もせず、『原発の発電コストは安い、安い』の神話が、とりわけわが国において強く、広くばらまかれた」と指摘している
▼そして、新聞が資源エネルギー庁による計算式、計算根拠が伏せられたままの『電源別発電原価について』という資料に基き、「(1)原子力十二円、(2)石炭火力十五円、(3)LNG火力十九円、(4)石油火力二十円、(5)一般水力二十円。原子力が断然安い」などと書き、神話作りに加担したという事実を伝えている
▼この神話の欺瞞性は、3・11以後の状況が明かしている。
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