名古屋グランパスのMF小川佳純(26)とMF藤本淳吾(27)が3日、日本プロサッカー選手会(JPFA)の「ふれあいサッカーキャラバン」で、東日本大震災で被災した岩手県宮古市の高浜小学校と花輪小学校を訪れ、子どもたちと一緒にミニゲームやボールを使ったトレーニングを楽しんだ。
被災地へ向かう小川と藤本の目に飛び込んできたのは、震災から4カ月がたとうとしてもまだ色濃く残る爪痕だった。津波で低層階部分が流され、「解体OK」とメッセージが残された建物や、不自然に更地になってしまった海沿いの土地。藤本は「正直、へこんだ」と話し、小川は「まだ元に戻ったわけじゃない」と実感した。
この日最初に訪れた高浜小学校(大洞晴洋校長)も児童は全員無事だったが、小1女児の母親が亡くなり、約4割の児童が自宅を流されるなどの被害にあった。校庭も5月に土を入れ替えて、6月には1カ月遅れの運動会を短縮して行うまでに復旧した。しかし、海沿いのフェンスは津波が引くときの力で海側へゆがんだまま。避難場所に指定されているにもかかわらず、校舎の床ギリギリまで襲ってきた津波の激しさを物語っていた。
藤本と小川は、2月26日のスーパーカップの鹿島戦で幕を開けた今季、J1の12試合とアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の7試合、合計20の公式戦すべてに先発出場している。そんなグランパスの“鉄人”でも、魂は道中の光景にうちひしがれていた。その気持ちを「逆に元気をもらった。来て良かった」に変えたのは、元気な子どもたちの笑顔だった。
参加したのは全校児童80人のうち希望者41人。みんなが笑顔で1つのボールを追いかけた。「1つのボールを追いかけてゴールを目指すサッカーを通じて、目標に向かって頑張ることを感じてほしい」(小川)、「みんなで1つになると大きな力を生むとあらためて感じた」(藤本)。2人は、2日の仙台戦(ユアスタ)から一夜明けて強行日程で駆け付けた被災地で、サッカーという競技が持つ力を再発見していた。 (伊東朋子)
▼「ふれあいサッカーキャラバン」 日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催し、東日本大震災の復興支援活動の一環として、月1回のペースで被災地域の小学校を訪問している。第3回の今回はグランパスの2選手のほか、J2栃木のDF赤井、西沢、渡部と菊池GKコーチ(岩手県遠野市出身)が参加した。第1回は5月28日に日本代表MF長谷部、GK川島ら海外組9選手が参加し、宮城県内で開催。第2回は6月5日にC大阪、東京Vの4選手が参加し、福島県内で開催された。
この記事を印刷する