太平洋海底 大量のレアアース
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太平洋海底 大量のレアアース

7月4日 4時51分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

ハイテク製品に欠かせない希少な金属「レアアース」が、太平洋の海底の泥の中に大量に存在している可能性があることを、東京大学のグループが突き止めました。陸上の埋蔵量の800倍もの量とみられ、今後、開発が進めば、中国が独占的に供給している「レアアース」の新たな調達先として期待されそうです。

大量の「レアアース」が存在している可能性があるのは、ハワイ沖の北太平洋や南太平洋にある深さ3500メートルから6000メートルの海底の泥です。東京大学の加藤泰浩准教授のグループは、海底の火山活動に伴って放出された熱水が「レアアース」を吸着しやすいことに着目し、太平洋の深海底で過去に採取された泥のサンプルを詳しく分析しました。その結果、分析した78か所の2000個のサンプルの一部に▽ハイブリッドカーのモーターに使われる「ジスプロシウム」や、▽液晶テレビに使われる「テルビウム」など、「レアアース」が高い濃度で含まれることが分かりました。高い濃度の泥は、日本の面積のおよそ30倍の1100万平方キロメートルに広がっているということで、研究グループでは、濃度や面積などからこの海域には、陸上の埋蔵量のおよそ800倍の「レアアース」が存在すると推計しています。「レアアース」を巡っては、世界の供給量の90パーセント以上を生産する中国が輸出規制を強化しており、価格が急激に上昇するなど、資源の安定的な確保が世界的な課題となっています。研究グループでは、深海底から泥を引き上げる技術的な課題はあるものの、泥から「レアアース」を取り出す処理は比較的簡単で、十分、採算性はあるとしています。今回見つかった「レアアース」を含む泥の多くは、公海上にあるということで、加藤准教授は、「国際調整を行ってこの資源を開発できれば、中国はレアアース市場を独占的に支配出来なくなる。最終的には日本の経済水域内で見つけることが目的で、その可能性は高いと思う」と話しています。

経済産業省によりますと、ハイテク産業に欠かせない重要な資源である「レアアース」は、年間の生産量の90%以上を中国が占めています。去年7月、最大の輸出国、日本に対し、去年の輸出量を前の年の60%に規制する方針を示したことで、日本の多くの企業に強い懸念が広がりました。このため、レアアースの調達先を中国以外にも探す動きが加速していて、去年11月には、日本の大手商社がオーストラリアの企業との間で供給を受ける権益を獲得しています。その一方で、埋蔵量を見ますと、▽中国が30%、▽CIS諸国が20%、▽アメリカが14%などと各国にも存在していて、レアアースの安定供給に向けては、今回発見された海底の泥とともに、調達先の多角化が世界の課題となっています。

今回のように公海上で発見された海底資源は、どこの国に採掘や調査の権利があるのでしょうか。各国の大陸棚の外側の海底は、どの国の管轄権も及ばない区域で、国連海洋法条約に基づいて設立された「国際海底機構」が人類共同の財産として管理することになっています。資源の開発は条約の規則に基づいて行われる決まりとなっていて、有用な金属が多く含まれるハワイ沖の「マンガン団塊」をめぐっては、調整の結果、2000年に各国に調査権が割り振られ、日本も契約を結んでいます。今回見つかったレアアースを含む泥についても、同様に国際調整を経て、開発を進めることになるとみられますが、開発には技術的な問題や採算性など、解決しなければならない課題があります。研究グループによりますと、今回のような水深3500メートルよりも深い海底から、大量の泥を引き上げた実績は世界でも確認されていません。あるのは、ドイツの鉱山会社が今から30年余り前に、水深2000メートルから資源を引き上げるテストを行った例で、研究グループでは、こうした技術を応用し、採算性のある採掘方法を見いだしたいとしています。