東北地方に甚大な被害をもたらした東日本大震災から3月半がたち、東海・東南海・南海の3連動地震を前提に被害予測や防災体制を見直す動きが出始めている。行政だけでなく、住民の間にも、地域や命を守ろうとの意識が高まりつつある。来るべき“その時”に向けた備えを検証する。
「そんなに少ないのか……」。老朽化に伴う施設の更新や耐震化を進める愛知県警の幹部は、県の津波被害想定を聞いて驚いた。東日本大震災が起こる直前、今年2月のことだ。
県が2003年に定めた「地域防災計画」は太平洋側沿岸部に押し寄せる津波の高さを最大6メートルと想定。津波による死者はわずか6人。建物倒壊などの死者2000人以上より圧倒的に少ない。県警幹部が感じた不安は、東日本大震災の被害の前に現実味をおびている。
■前提は「2連動」
太平洋に突き出た渥美半島に位置する田原市。同市渥美郷土資料館には過去の津波被害を克明に伝える一枚の絵図が眠っている。
嘉永7年(1854年)11月4日午前9時15分に発生した安政東海地震後に当時の西堀切村(現在の堀切地区)で描かれた。内陸部に東西約2.3キロの長さの線が引かれ、「此筋印嘉永七年寅年、大津波ノセツ御引アリ」とのただし書き。津波によって砂浜が広範囲に浸食されたことを示している。
田原市にはこの絵図のほか、領主らが残した記録が伝わっており、断片的ながら当時の被害を知ることができる。文献で確認できるだけで、死者は数十人。資料館の学芸員、天野敏規さん(42)は「安政の約150年前に起きた宝永地震の津波にも見舞われている。集落や寺は内陸よりに移っていたが、それでも相当な被害が出た」。
過去の経験があるのに地域防災計画が津波被害を少なくみている理由の一つは、東海、東南海、南海地震が同時か短時日のうちに連続して起きる「3連動」型が計画の前提になっていないことにある。
現在の同計画の最大被害想定は東海・東南海の2連動型地震(マグニチュード(M)8.27。安政東海地震は東海、東南海地震が同時に発生し、30時間後に南海地震が起きた3連動型。「宝永地震」も3連動型の巨大地震だった。
■独自の地質調査
「想定外」――。東日本大震災後、政府関係者や専門家が連発したフレーズだ。地震被害想定の見直しを進める国の中央防災会議は、26日にまとめた中間報告で各地域で起こる可能性がある最大の津波を想定する方針を打ち出した。
中部地方でも、海に面した愛知、三重両県が、国に先立って被害想定の見直しを進める。愛知県は過去の文献や地質の調査を初めて独自に行い、今秋をめどに3連動を前提にした想定を作る。三重県は、9月までに東日本大震災級の津波が押し寄せた場合の浸水範囲のシミュレーションを行う。
名古屋大の福和伸夫・減災連携研究センター教授の調査によると、愛知、三重両県で海岸から4キロ以内で、海抜5メートル以下の場所に暮らす人は約109万人。岩手、宮城、福島の3県の約3倍に相当する。福和教授は「津波被害が拡大する恐れが高い。まちづくりから考え直す必要がある」と警鐘を鳴らす。
津波被害、南海
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