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'10/02/12 本紙掲載 
米軍再編と鹿児島 普天間の行方
 中》 馬毛島 


「軍事的価値」に注目

離着陸場の誘致話も
 「普天間飛行場の移設先を馬毛島に」−。昨年12月5日、朝日新聞夕刊に作家池澤夏樹さんのコラムが掲載された。
 (1)普天間飛行場の1.75倍の広さがあり、地形が平らで3000メートル級滑走路がすぐにも造れる(2)島の形に合わせれば滑走路は南北方向で、種子島の上は飛ばない(3)種子島と12キロ離れ、騒音が深刻な問題にならない(4)島なので兵士と住民の接触はない(5)嘉手納と岩国から輸送機で1時間の距離(6)ほぼ無人島で、ほとんど1企業所有で交渉が容易−を理由に、馬毛島を移設候補地に挙げた。
 池澤さんは「政府に対する挑発的提案」と説明する。日米が普天間返還に合意して10年以上すぎたが、いまだ実現しない。「種子島の人にはすまないと思ったが、具体的地名がなければ議論にならない」とし、沖縄の負担軽減を考える契機にしてほしいとの思いがあったという。
 一方、種子島の関係者らは驚きを隠さない。西之表市の長野力市長は「沖縄が大変な状況で憤りは分かるが、だから馬毛島に、と言う必要はない。種子島は自分たちの環境を生かし、自分たちで生きていく。環境を一変させる米軍施設には断固反対」と話す。
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普天間飛行場の移設候補に浮上している馬毛島。FCLPの候補地としても取りざたされている=2007年2月
 馬毛島をめぐっては、米軍の陸上空母離着陸訓練(FCLP)誘致という話もある。FCLPは、空母艦載機が陸上の滑走路を空母の甲板に見立てて、着陸と同時に離陸を繰り返す訓練だ。
 島のほぼ全域を所有する馬毛島開発(本社・東京)は2007年12月、FCLP誘致を表明。昨年12月には普天間移設の候補地として浮上したが、同社の立石勲社長は今年1月、取材に「普天間の移設話は来ていない。FCLP誘致で動いている」と明かした。
 馬毛島では05年7月から、同社が貨物専用飛行場建設を計画、調査測量のための伐採作業が進む。計11回166ヘクタールの伐採届が出され、島内では着々と工事が進んでいるとみられる。さらに、同島に自衛隊を誘致する陳情が西之表市民から市議会に提出され、反対陳情とともに継続審議中だ。
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 そんな中、政府内では以前から、馬毛島に「軍事的価値」を見いだしていたようだ。
 民主党の川内博史衆院議員(鹿児島1区)によると、06年の日米両政府による米軍再編合意前の05年ごろ、当時野党だった川内議員と鳩山由紀夫衆院議員が防衛施設庁首脳(当時)と会食した際、同首脳から「『米軍のことが分かっているわれわれとしては、普天間移設先として馬毛島が最適』と米国防総省にメールした」と明かされたという。
 川内議員は「当時の日本政府には、有事の際は馬毛島をベースに対処する構想があったのでは」と推測。朝鮮半島と太平洋を隔てる南西諸島で、一定の広さがあり、所有者も限られている島は魅力的、とされていた可能性がある。
  自民党から民主党に政権が変わった今、政府は馬毛島をどう位置付けるのか。
 今回の普天間移設に関し、多くの専門家は沖縄との距離的な理由などから馬毛島の可能性は低いと見る。池澤さんも「どうしても馬毛島に」という考えではない。「沖縄は長年、危険率や騒音という圧倒的な不公平の中で生きてきた。政府はこれまで米と真剣に交渉してきたのか、今後するつもりがあるのか。放置し続けるのは国家の品格にかかわる」といらだちを隠さず、今後の推移を見守っている。




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