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一つ上の階層にリンクします。電力の話(2010.05.25)

前回の「日本のエネルギー」でも言ったが、年々利用が拡大している電力の話をしてみよう。

電気にはお世話になっています。

そうじゃろう。電気は安全でクリーンな上、便利で使い勝手が良いので、年々利用が拡大し、最終エネルギー消費に占める電気エネルギーの比率(電力化率)も伸び続けて、今では約1/4が電気じゃ(2007年)。

 発電方式別の構成をみると、水力がほぼ一定で、火力、次いで原子力発電が伸びてきておる。また、石油危機を契機に「脱石油」をめざして、原子力・天然ガス・石炭などの発電が伸びてきたのう。


図1 日本の電源別発電電力量
使用データ:EDMC/エネルギー・経済統計要覧(2010年版)

私達の生活で身近に使われてますよね。

そうなんじゃ。なにしろ、安全でクリーンで便利で使い勝手が良いからのう。

それはもう聞きました!!

すまんすまん。「日本のエネルギー」の講義でも説明したが、エアコンなどの利用で家庭用電力消費量は増えておる。
 そこで問題になるのが「電力の需要量はいつも一定ではなく、季節や時間帯で大きく変化している」という問題なのじゃよ。これが電力の大問題の一つなのじゃ。

何が問題なのですか?

例えばじゃ、夏は冷房を使うため需要量は大きくなり、昼間は夜より需要量は大きくなっておる。特に夏の暑い日の日中はエアコンなどが普及したため、冷房用の電力需要などで電力消費量はピークに達し、最も少ない消費量との格差が大きくなっておるのじゃ。しかし、最近ではあまりその差は拡大しておらんのう。

 ここで問題なのが「電力は貯蔵できない」という性質なのじゃよ。そのため、ピークに合わせた発電設備が必要になり、この格差が拡大すればするほど、設備利用効率が低下し、電力コストが上昇するという訳じゃ。どうじゃ、大問題じゃろう。


図2 夏季の1日の電気の使われ方の推移
使用データ:資源エネルギー庁経済産業省、エネルギー白書 2007年版(2007)

なるほど、電気料金が高くなるのですね。それは困った。

そうじゃろう。そして、この需要量の変化に応じて安定的に電力を供給するため、電力会社ではいろいろな発電方式を組み合わせて発電を行っておる。例えば、流込式水力発電、原子力発電は一定の発電量を維持し、電力の需要量の変化には主に火力発電などで対応するといった方法がとられておるのう。それぞれの発電方式の特徴を生かして対応しておるという訳じゃよ。


図3 1日の電力需要量の変化に対応した電源の組み合わせ
出所:資源エネルギー庁パンフレット日本のエネルギー 2008

それぞれの発電方式の特徴とはどんなものですか?

良い質問じゃ、ワシも説明しやすいのう。まず、発電方式別の発電コストを比較すると、水力発電はコストが高く、石炭火力発電、LNG火力発電、原子力発電は比較的コストが低くなっておる。

 発電コストの中で、燃料費の占める割合の低い石炭火力発電や原子力発電は、燃料価格の変動に対して発電コストにあまり影響がないので、安定的なコストを維持しやすい発電方法といえるのう。

表1 発電方式別の発電原価試算結果(1kWh当たりの発電費用)
発電方式
発電単価(円/kWh)
設備利用率(%)

水力

8.2〜13.3
45

石油

10.0〜17.3
30〜80

LNG

5.8〜7.1
60〜80

石炭

5.0〜6.5
70〜80

原子力

4.8〜6.2
70〜85

太陽光

46
12

風力

10〜14
20
注)設備利用率(%)=1年間の発電電力量/(定格出力×1年間の時間数)×100%

使用データ:
経済産業省、エネルギー白書 2008年版(2008)

コスト以外の特徴は?

ウム、くどくど説明するより下の表を見てくれ。それぞれの発電方式には長所や短所があるので、それらを考慮した効率的な利用が必要なのじゃ。

表2 主な発電方式の特徴
発電方式

電源特性

環境負荷

供給安定性

課題等

石油火力

需要量変化への対応に用いられている。

二酸化炭素排出量は、天然ガスより多く、石炭よりは少ない。

中東地域への依存度が高く、供給安定性に懸念がある。

石油依存度を低下させる目的から、さらなる導入は好ましくない。

石炭火力

一定の発電量を維持する発電に用いられている。

他電源と比べ、二酸化炭素排出量が最も多い。

資源が広く、多くあるため供給安定性は高い。

二酸化炭素排出を抑えるため、高効率な発電方式などの対策が望まれる。

LNG火力

高効率で、需要量変化への対応や一定の発電量を維持することも対応できるなど優れた特性がある。

石油や石炭火力と比べ、二酸化炭素排出量が少ない。

東南アジアや中東への依存度が高く、供給安定性は高くない。

より高い効率の発電方式が開発・導入されている。

原子力発電

一定の発電量を維持する発電方法がとられている。

発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない。

燃料のウランは多くの地域に分布し、燃料の備蓄が容易など、供給安定性は高い。

国民の原子力に対する不安や、高レベル放射性廃棄物の処理処分対策の解決が望まれる。

水力発電

需要量変化への対応にも用いられる。

発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない。

渇水時には発電が困難になる。

大規模発電が可能な場所が少なくなっている

太陽光発電

発電が不安定であり、天候や時間帯により必要な電力が得られない。

発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない。

資源の制約はないが、不安定である。

不安定な発電への対策と高いコストの低減が必要になる。

風力発電

発電が不安定であり、風の状況の良い場所が求められるため立地場所が限られる。

発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない。

資源の制約はないが、不安定である。

不安定な発電への対策と騒音、景観などへの対策が必要になる。

参考:原子力ポケットブック 2004年版

電力は組み合わせの問題ということですね。

まあ、そういう面もあるのう。そして、「日本のエネルギー」の講義でも説明したが、発電には損失があって、燃料のエネルギーを全て電気に変換できるわけではないのじゃ。実にもったいない。

 そこで、火力発電の例でいえば、関係者の努力で、その効率は年々良くなっており、最近では発電効率(発電端)の平均は40%を超えるまでになっておる。
 蒸気タービンとガスタービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電などのような最先端の発電所は、発電効率が50%を超えるものもでてきておるのう。ありがたいことじゃ。


図4 火力発電設備の平均発電効率(発電端)
使用データ:EDMC/エネルギー・経済統計要覧(2010年版)

少しづつ良くなってきてますね。

そうじゃのう。「小さいことからコツコツと」じゃのう。そして、最後に大事な事があるのじゃ。それは「もし電力が不足しても外国から輸入することができない」ということじゃ。ヨーロッパなど国境を接している国では電力の輸出入が行われており、電力の安定化に役立っておるが、海に囲まれた日本ではそうはいかん。電力が不足して大停電になったら、身近なエネルギーであるだけに暮らしに大打撃になるのは目に見えておる。これだけは、何としても避けなければならんのじゃ。

 それにじゃ、電気はだまっていても作られるものではない。毎日発電所で働いている人達や発電所の敷地を提供している地元の人達など多くの人々の努力や協力で作られておることも忘れてはならんのう。


図1 欧州の電力の輸出入の状況(2006年)
参考:資源エネルギー庁経済産業省、エネルギー白書 2009年版(2009)

本当にそうですよね。電気は最も身近なエネルギーの一つですからね。

なにしろ、安全でクリーンで便利で使い勝手が良いからのう。

それはもう何度も聞きました!!!

いやいや、電気だけに話にしびれてしまったよ。
 次回は電力の発電方法の一つである「原子力発電」について説明してみよう。 


関連ページ:
日本の発電電力量
世界の発電電力量と発電構成比率
各国の最終エネルギー消費に占める電力の比率
電力の輸出入
電力の需要量の変化とその対応
主な発電方式の特徴
発電方式別の発電コストの比較
火力発電の効率
関連サイト:
電気事業連合会
(財)電力中央研究所
(社)海外電力調査会

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