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自動車業界:「土日操業」節電と増産、両立を工夫

休日振り替えによる土日出勤が始まり、公開された日産自動車追浜工場の生産ライン=神奈川県横須賀市で2011年7月2日午後2時53分、小林努撮影
休日振り替えによる土日出勤が始まり、公開された日産自動車追浜工場の生産ライン=神奈川県横須賀市で2011年7月2日午後2時53分、小林努撮影

 夏の節電対策として電力需要の少ない週末に工場を稼働する「土日操業」が2日、自動車業界を中心に始まった。土日に出勤する従業員らは部品メーカーも含めると約80万人に上るとされる。大手自動車メーカー各社は原則、木、金曜を休日とするが、平休日の入れ替えは企業城下町など地域社会の活動にも影響を与えそうだ。

 日産自動車追浜工場(神奈川県横須賀市)では、午前5時半からの稼働を前に従業員が次々に出勤した。平日と変わらない風景だが、電力需要の多い昼間の操業を避けるため、始業は1時間前倒し。午後勤務は1時間遅らせ、節電に配慮する勤務シフトとした。ある男性従業員は「(平日に)家族で行楽地に行くには、人が少なくていいかもしれない」と、振り替えの休日の有効活用に期待を示す。

 節電の目玉として導入したのが、通信機能を備えた次世代型の電気メーター「スマートメーター」。グループ会社を含め7社16事業所に設置した。社員が各事業所の電力使用状況を管理できるモニターを監視。電力使用量が削減義務の15%を上回りそうになると警報が鳴り、事務所の空調など生産に影響しない設備を止める。担当者は「増産と節電を両立させる工夫をしていきたい」と話す。

 2日は自動車メーカー大手12社のうち、6月30日に前倒しで平日休業した日産やホンダなど8社が工場を操業。30日に操業したトヨタ自動車などは2日を休業にした。3日はトヨタを含む全社が工場を稼働させる。東日本大震災で寸断されたサプライチェーン(部品供給網)の急回復を受け減産分の挽回を急ぐが、「節電と生産回復の両立」(志賀俊之・日本自動車工業会会長)は各社共通の課題だ。

 自動車関連産業の裾野は広く、影響は土日操業に同調する部品メーカーにも及ぶ。2日出勤した神奈川県の部品メーカー幹部は「自動車業界以外の取引先もあるので、木、金曜も社員を交代で出勤させなければ」と対応に苦慮する。【米川直己】

 ◇「城下町」対応に追われ

 広島県府中町のマツダ本社。最寄りのJR向洋駅は、土曜にもかかわらず早朝から列車で出勤する従業員であふれた。土日操業に合わせてJR西日本広島支社は通勤時間帯の同駅着の車両を4両から8両に倍増した。神奈川県でも神奈川中央交通が7月の週末に関連路線でバスを増便。トヨタが本社を置く愛知県豊田市でも、愛知環状鉄道がトヨタ本社前と市中心部を結ぶ列車を週末に増便する。

 共働き家庭では土日の子供の預け先が課題。豊田市は7~9月、土曜開園のこども園を47園から49園に、日曜開園を5園から24園に増やす。ダイハツ工業本社がある大阪府池田市やホンダ鈴鹿製作所がある三重県鈴鹿市も休日保育を実施する。ただ、マツダ労組の内匠(たくみ)雅也書記長は「家族のふれあいの時間が減る。我慢しなくてはいけないが、節電は大変だ」と話した。

 休業となる木、金曜日を商機とみる百貨店やスーパーもある。豊田市の松坂屋豊田店は男性客が増えるとみて紳士服売り場で3万円以上の購入客にドリンク券をサービスする。担当者は「平日に買い物を楽しむ夫婦が増えそう」と期待する。

 一方で悲鳴も上がる。「木、金曜の売り上げが落ち、日曜も開けなくてはいけない」。マツダ本社近くのうどん店主は嘆いた。【矢追健介、柳原美砂子】

毎日新聞 2011年7月3日 9時57分(最終更新 7月3日 10時08分)

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