富裕層戦略の必要性
これまでの背景
日本では、戦後一貫して右肩上がりの経済成長が続きました。そして90年代初頭のバブルの崩壊と共に成長が止まり、未曾有の不況に突入していきました。それまでマーケットアウトの発想で、需要が供給を上回る経済でしたが、一転して供給が需要を上回るマーケットインの時代に入っていきました。
その経済環境はさらにバランスを崩し、90年代半ばからは貨幣価値が落ちるインフレとは反対のモノの価値が下がるデフレ経済に入っていきました。デフレ時代に付加価値商売は非常に厳しい環境です。直ぐに他社との値段比較となってしまい適正価格すら確保するのが難しい時代になりました。
今までなかった中小零細機業務向けの富裕層マーケティング論
富裕層マーケティングという概念は、実は以前から存在していました。ただし、それらは銀行、保険、証券などの金融業を中心とした資産家向けの資産運用を目的とした一握りの顧客のために構築されてきたマーケティング論でした。中小零細企業や小売物販業やサービス業には余り関係のない、別な世界でのマーケティング論でした。そして今も尚、一部の業種や大企業に限られたものになっています。それらのマーケティング論や方法論は、どうしても業種と企業規模が中小零細企業の実態とはかけ離れているため応用することは殆ど出来ない状況でした。
富裕層戦略から派生した所得層戦略
従来、マーケティング的発想から来る客層という概念は、年齢や性別、既婚または独身、家族構成など様々なジャンルに客層を分類し、データを取り、仮説と検証を繰り返してきました。その中にも年収とか納税額のデータを検証することはありました。
しかし、多くの検証結果は、年収や納税額に応じた商品やサービスをチョイスする発想のものが多く、集客方法や営業方法などを一般大衆層と厳密に分けるということをしてきませんでした。そして客数にこだわる経営発想からはオミットされてきました。
ランチェスター経営戦略では、「商品3分、売り7分」とよく言われます。売ることに7割の力を注ぎなさいと言われています。これは、BtoC(対個人商売)で捕らえると営業に力を入れるプッシュ型営業を中心にした考え方に近くなります。そこから地域戦略、時間戦略に展開していきますから「営業活動」に重きを置くことになります。
しかし、価値に値しないと見れば、一般大衆層よりシビアに価格を追求してくる特性もあります。それだけに、中小零細企業にとっては手強い相手に見えます。特に「勝てない勝負はしない」という考え方からすれば、顧客の対象から外すのは無理からぬことだったかも知れません。