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東日本大震災:避難者5人がアルバイト 「しばたあやめまつり」で汗 /新潟

 ◇みんなに恩返ししたい--16歳の今井拓哉さん

 新発田市五十公野公園で開かれている「しばたあやめまつり」。同市は福島県からの避難者5人をアルバイトとして臨時雇用した。最年少の今井拓哉さん(16)は「お世話になった新発田に恩返しがしたい」と会場案内などに汗を流した。【塚本恒】

 今井さんが暮らしていたのは福島県南相馬市小高区。通信制高校に通う今井さんは地震当時、市内のプラスチック工場で働いていた。突然の大きな揺れに驚き、外の駐車場に避難。海岸沿いに並ぶ木々が倒れ津波が襲ってくる中、他の社員の車に乗せてもらって高台に逃げた。

 波が引いたころ、先輩社員がつぶやいた。「工場の隣家に寝たきりのじいさんがいたはずだ」。泥だらけの家の中を恐る恐るのぞくと、お年寄りの男性が亡くなっていた。言葉が出ない中、その場にいた社員らと遺体を運び出した。

 翌日、福島第1原発の爆発事故により、今井さんは母と兄の家族3人で南相馬市から避難。福島県内の避難所を転々とした後、3月下旬に新発田市内の避難所となっていた体育館にたどり着いた。

 そこで目にとまったのが、体育館に入りきらないほどの支援物資。積み重なる衣類や毛布、食品を前に「福島から離れた土地でも思いを寄せてくれる人がいる」と驚いた。市民ボランティアらが自然体で接してくれるのもうれしかった。

 2次避難所の同市内のホテルに移った後、同じ避難者から「あやめまつり」のアルバイトの話を聞いた。「気持ちも落ち着いた。今こそ新発田に恩返しができる」と応募した。

 接客と聞いていたアルバイトだったが、仕事内容はチラシ配りからゴミ拾い、交通量調査など多岐にわたった。戸惑ったのは、新発田市名産のアスパラをイメージしたゆるキャラ「アスパラくん」の着ぐるみをかぶってのPR。でも子どもたちに「かわいい」と囲まれて大人気だった。今井さんは「とても楽しかった」と笑みを浮かべた。

 4月から学業も再開。今は福島県の別の通信制高校に月3~4回通う。将来の夢は、福島に戻って地元を盛り上げること。「いつか地元が復興したら、必ずまた新発田に来て『ありがとう』とお礼を言いたい」と誓う。

毎日新聞 2011年7月2日 地方版

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