農林水産省は27日までに、放射性物質を含む下水やし尿などの汚泥を肥料の原料として利用する場合、放射性セシウム濃度は1キロ当たり200ベクレル以下とする基準を初めて示した。政府の原子力災害対策本部はこれまで、汚泥を活用した肥料などの副産物は「当面、製品の出荷を自粛するのが適切」とし、基準を示していなかったため、検出された汚泥をどう処理したらいいのか困惑が広がっていた。
同省によると、活用可能としたのは、脱水汚泥や焼成汚泥など肥料原料の状態で、放射性セシウムが同200ベクレル以下の物。活用する場合は、原料汚泥の放射性セシウム濃度を定期的に測定して記録、保管し、毎月10日までに同省の農政事務所に報告することを求めている。製品段階での基準は設けないとしている。
同省長野農政事務所によると、県内では42事業者が汚泥を活用して肥料を製造している。
汚泥発酵肥料から同164ベクレルのセシウムを検出し、住民への提供を見合わせていた千曲市などの千曲衛生施設組合は27日、基準が示されたのを受け、提供再開を決めた。
中野市では公共下水道施設や農業集落排水処理場の計10施設の脱水汚泥から放射性物質を検出したため、加工した肥料を堆肥化施設で保管してきた。基準提示を受け、今後、扱いを検討するとしている。また、同市は近く県を通じて国に対し、濃度基準を上回るなどして製品として出荷できなかった場合の処分方法や費用負担を求める要望書を出したいとしている。
同対策本部は、放射性セシウム濃度が同8千ベクレル以下の汚泥焼却灰などは、跡地を宅地にしない場合に限り埋め立て処分できるとしたほか、汚泥を原料としたセメントは、製品段階で同100ベクレル以下になれば利用可能との基準を示している。