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[28631] 【ネタ】 PaPa! Hold Me!! 【リリカルなのは】
Name: うぃる やま◆157cb198 ID:3242a2d6
Date: 2011/07/01 19:47
 『わたし』には前世の記憶があったりします。
 誰にも愛されず、なのに一人では生きられない弱い自分の記憶が。

 前世の両親は、『私』なんて見てくれませんでした。
 父は仕事と愛人の相手に忙しく、母は母でお金と若いツバメが大切で。
 いつしか、当然のように2人は離婚をし、『私』はそのどちらからも必要とはされませんでした。
 厄介者の『私』は、父方の祖父に預けられたけども、そこでも居ない者として扱われ、いつしか『私』は全てを諦めた。
 2次元の世界に逃避し、ネットの海に溺れたのです。
 学校にも殆ど行かず、いわば不登校児の見本みたいな存在でした。
 愛してくれる両親もいなく、一緒に笑い合う友達もいない『私』。

 そうして『私』は、いつしか夢想するのです。

 『私』を愛してくれる親。『私』と笑い合ってくれる友達の存在。

 ……少し頑張れば、両親は無理でも、友達は出来たかもしれなかったなぁ、って今になっては思いますが。

 当時の『私』にはそれは無理で。衝動的なのか、気づけばカッターナイフを手首に当てていました。
 震える手で躊躇い傷をいくつも作り、それでも最後は思いッきり深い傷を作れた……んだと思う。
 だって、止まらない血。遠のく意識。身体の芯から冷えていく感覚。そして、全てが闇の中へ……たぶん、死んだんでしょうね。

 そう思えるのは、『わたし』が『産まれた』から。

 母と思しき人に抱かれて泣く『わたし』。
 父と思しき人に優しい瞳で笑いかけられる『わたし』。

 父の優しい手。父の暖かい声色。父の……父の……父の……

 『私』が望んだ世界。『私』が、心より欲したもの。

 パパ。わたしは、パパが大好きだよ。

 誰よりも、誰よりも……

 そう、母さんよりも。

 母さんはダメだよ、パパ。
 だって、『私』のおかげで『わたし』わかるもん。
 母さんは、浮気してる。
 パパを裏切って、浮気してるよ?
 前世の母さんと同じで、あの人は、誠実な人じゃないから。

 だからパパ。母さんと別れて『わたし』と2人きりになろうよ。

 『わたし』はパパを裏切らない。
 『わたし』はパパのためなら、なぁんでもできる。
 『わたし』がパパを幸せにしてあげる。
 パパが幸せなら、『わたし』はどうなっても構わないから。

 だから、ねぇ、パパ。

 母さんと別れよ?

 母さんと一緒じゃ、パパは傷つくだけだよ?

 性欲を晴らしたいなら、『私』が他の女を捜してあげる。
 本当にパパを愛して幸せにしてくれる女の人を。

 そうでないなら……そう、『私』。『私』と『わたし』がパパのお嫁さんになってもいい!

 パパのお嫁さんになるよっ!

 そうすれば、ずっとパパといっしょ。

 ずっと、ずぅっと、パパといっしょだね♪


























 最近、身体がとても重い。
 理由は分かっている。
 妻だ。俺の妻は、浮気をしている。
 そう考えるだけで、心がもやもやする。
 ため息が止まらない。

 妻の浮気を知った切欠は、今年で小学2年生になる娘の美伊だ。

 そう、美伊が教えてくれた。

 妻が、見知らぬ男と抱き合い、キスをしていたと。
 最初は勘違いだと思っていた。
 でも、美伊は証拠を揃えてきた。
 家にあったデジカメを使い証拠写真を撮り、ホームカメラで情事の最中を明確に撮った。

 ……ショックだった。

 家族ですごす家に、他の男を連れ込んでセックスに耽る妻の姿が。
 相手は、よく言えば恰幅のいい男だ。
 そして、いかにも金のありそうな男でもある。

 名は、月村安次郎。

 某大企業の創業者の孫。現トップの従兄弟でもある。

 はは……すっげぇ金持ちじゃねーか。
 どこで知り合ったんだよ、おまえ。
 それに、なんだよこのおっさんは。どう見ても俺の方がいいじゃねぇか。
 金か? それともあっちか?
 確かにこのおっさんは、ねちっこいエロが得意そうだしな。

 そう心内で吐き捨て、俺は娘が持ってきてくれた水をグイッと呷った。
 喉を通る、冷たい水の感触。ササクレだった心が、少しだけ落ちついた気がした。


 「パパ、泣かないで、パパ……」

 「大丈夫、泣いてないよ、美伊」

 「ううん、泣いてるよ、パパ。わたし、わかるもん。パパが大好きだから。
 ねぇパパ。わたしが、みぃがぎゅってしてあげる。パパをぎゅって。だから、もう泣かないで」


 どしんと体当たりみたいに俺の胸に飛び込んでくる娘の体温は、とても暖かく。
 俺は、衝動のまま娘をギュッと抱きしめ。


 「パパ、大好き。大好きだよ、パパ」

 「ああ、俺も、美伊が大好きだ」

 「嬉しい! パパ! みぃはパパを愛してるよ!!」

 「俺も、美伊を愛してるよ」


 まるで幼い恋人同士のように。
 そして思う。
 俺は、ひとりじゃない。
 俺には娘がいる。
 俺を心から慕ってくれる、大切な、何よりも、誰よりも大切な娘が。


 だから、妻と別れよう。
 娘の心を傷つけた妻と。
 そんな妻の所業に気づけなかった自分と決別する為にも。


 年に似合わずパソコンを弄り、ネットを使いこなす娘の提案に従い、弁護士を雇い、調査会社に依頼する。
 弁護士は離婚がスムーズにいくように。調査会社は更なる浮気の証拠集めのために。
 結果、俺は妻の浮気の証拠を眼前に叩きつけられることになる。
 レストランで間男と食事する妻。路上で間男とキスする妻。ラブホテルに間男と手を繋いで入る妻。

 そして、俺達の家で、間男とセックスに興じる妻。


 めまいがする。吐き気がした。訳も分からず叫びたくなった。
 でも、しっかと手を握って離さない娘の手の暖かさに、辛うじて正気を保てた。


 「大丈夫だよパパ。わたしがいるから。みぃがいるから。みぃが、きっとパパを幸せにしてあげるから」

 「幸せに? それなら、もう幸せだよ。美伊がいてくれるから、パパはとっくの間に幸せなんだ」

 「違う。違うよパパ! もっとだよ! もっともっと幸せになるの!」

 「美伊が居てくれるだけで幸せなのに、もっとかぁ」

 「うんっ!」 


 俺は娘を抱きしめる。
 小さい娘の身体を、しっかり、ぎゅっと。

 かしこく、やさしく、あたたかい。

 そんな、宝物のような娘の身体を、いつまでも、いつまでも……




























 私とわたしはパパが大好き。

 だからぱぱ! 抱きしめて、みぃをっ!!


 PaPa! Hold Me!!






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