法務省が全国で初めて北九州市小倉北区に開設した仮出所者更生保護施設「北九州自立更生促進センター」は、開所から2年が経過した。開所2年目は、入所者のうち23人が社会復帰を果たすなど、運営は順調に推移している。一方で、入所中に禁酒などのルールを破って仮釈放を取り消された人が開所1年目の1人を上回る4人になった。地元住民の一部にはなお反対論もあり、3年目に向けて課題も残る。
センターは、身元引受人がいない仮出所者を入所させ社会復帰を促す全国初の国営施設として、2009年6月29日に開設された。入所期限は原則3カ月。定員14人で、対象者は殺人や放火などの重犯罪を除く懲役8年未満の仮出所者だ。
センターによると、1年目の入所者と社会復帰者はそれぞれ20、13人だったのに対し、2年目は29、23人といずれも増加した。
2年目の入所者は26-62歳。窃盗や無銭飲食の罪を犯した人が多く、平均年齢は44・5歳。就労先は土木作業が最多の10人で、塗装工とプラント内作業が各2人と続く。退所後は半数が市内に定住しているという。
入所者が増えた理由について、センターは「保護観察官の数を6人から9人に増やし、九州内外の刑務所へ出向いての入所対象者の調査を強化したため」と説明。仮釈放の取り消しは「職場の人間関係に悩んで姿をくらましたり、将来への不安から飲酒したりしたケースがあった」としており、精神面のケアの必要性も浮き彫りにした。
ただ、センター反対の立場を取り続ける地元住民との間には今も溝が残る。西港臨海工業団地振興会の福井一憲会長は「地域住民が入所者による犯罪の被害者になったらどうするのか。人的被害が生じた際の具体的な対応策がない。出所後の追跡調査もしておらず、不安だ」と指摘する。センターの田畑義弥統括保護観察官は「入所者が地域でトラブルを起こさないよう、指導を徹底したい」と話している。
=2011/07/02付 西日本新聞朝刊=