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[28612] 【ネタ】奇天烈戦記(多重クロス)
Name: ヤスオン◆73866c3b ID:645e35d5
Date: 2011/06/30 03:20
『我が一生をかけた発明発見の全てを此処に書き残す
 但し此れを読む者 秘伝を他人に漏らすなかれ
この禁に従わざる時は大いなる災いを招くべし……』
                「奇天烈大百科」序文

発明家を志す一人の少年がいた。名を木手英一。
彼の発明に掛ける情熱は常軌を逸しており、周囲からは「キテレツ」のあだ名で呼ばれていた。
だが、彼にとってみればそれは誇りだった。
尊敬する祖先「奇天烈斎」と同じ呼び名であり、歴史に名を残す事のなかったものの彼は世界で初めて飛行機械を作り出した天才なのである。
(少なくとも英一はそう信じていた)

英一はある日、父から奇天烈斎の残したとされる白紙の書を受け取る。
それこそが奇天烈斎の残した「奇天烈大百科」であり、偶然秘密を解き明かした英一はその英知に触れる事になった。
そこに記されたのは現代科学を超えたオーバーテクノロジーの数々。
魂の物質化、質量・重力操作、時空間の移動、自立人形の作成法…
英一はそこに記された一体の絡繰人形を作り上げる…名をコロ助。
機械の身体にて純粋な魂を持つ侍。この物語の主人公である。

生み出されて数年、生まれた当初は幼児のような思考だったコロ助も数々の経験を経て心の成長を遂げていた。
ある日奇天烈斎が幼くして亡くした我が子を思って己の設計を行ったことを知り、キテレツと別れ奇天烈斎の元で暮らしたいと考えるようになる。
キテレツは悲しみはしたものの止めはしなかった。
それが過去を改変する事になると知っていてもだ。
「飛行機械を生み出した奇天烈斎は怪しげな術を用いて世を騒がせたとして幕府に捕らえられ獄中で発狂死を遂げた」
父から聞かされた尊敬する祖先の悲惨な末路。
それを変えたいと小学生の少年が思ってしまったのは罪だったのだろうか…
(科学は…人を幸せにする為に生まれたんだ。それを証明して欲しい)

コロ助が航時機で過去へ戻り、奇天烈斎と暮らし始めて数年。物語は始まる…




注:コロ助が奇天烈斎の元に行くのはアニメ版独自の設定ですが本作は漫画版も参考にしています。



[28612] 2話
Name: ヤスオン◆73866c3b ID:645e35d5
Date: 2011/06/30 06:07
「止めるナリ!奇天烈斎さまは何も悪い事をしていないナリ!」

コロ助は必死で声を上げる。だが代官は聞く耳を持たなかった。

「人形が喋るとは面妖な!誰かこ奴を切り捨てよ!」
「お待ち下され!私は抵抗など致しません!この者は我が子も同然。どうかお慈悲を…」

奇天烈斎の懇願に代官はほくそ笑んだ、この人形を使えば奇天烈斎に有用な絡繰りを作らせる事が出来ると…
彼の名は腹黒主水之介助兵衛(はらぐろもんどのすけすけべえ)、正真正銘の悪代官である。




奇天烈斎が空を飛んだのは安政6年(1859年)、山の麓より一里半(6㎞)飛んだと木手家に伝わっている。
この出来事が事件となり代官に捕らえられ座敷牢に入れられたと言われるが、この件は矛盾が多い。
奇天烈斎は当時いくつもの功績を立てており、殿様直々に褒められた事さえあったのである。
真実を知る為には当時の時代背景を知る必要がある。

安政元年、ペリー来航。所謂「黒船の襲来」は日本にとって大きな衝撃だった。
この時結ばれた日米和親条約は事実上の開国を意味し、幕末の始まりとなるのである。
これをきっかけに一部の有識者は日本の技術が諸外国に大きく遅れている事に気付いたが、対策を立てようにもそれどころではなかった。
安政2年にはマグニチュード6.9と言われる大地震と津波が発生。
翌年には大型台風が関東を直撃、さらにはインフルエンザとコレラが流行する等
安政という名前に反して当時の社会は混乱の極みにあったのである。
奇天烈斎が善人であったかどうか等は関係なかった。
怪しいと噂をされる、それだけで裁かれるに十分とされるが時代。
人々の理解を超える存在だった奇天烈斎は恰好のスケープゴートだったのだ。

…奇天烈斎の才能を知る者からすれば、彼を利用するは絶好の機会と言えた…


注:Wikiを参照にしたなんちゃって時代設定なので間違いがあるかもしれません



[28612] 悪代官篇 その1
Name: ヤスオン◆73866c3b ID:3687eedb
Date: 2011/07/01 22:29
腹黒主水之介助兵衛。彼は代々続く悪代官の一族だった。
といっても歴史は短い。彼の先祖は大阪の陣で首級を上げ武士になった元農民である。
口の甘さとズル賢さでのし上がった先祖はある悪徳商人と手を組み勢力を拡大。
果てには徳川家康の御落胤だという証拠を捏造し譜代となり悪家康と呼ばれたという。
だがその栄光も長くは続かなかった。
「悪が栄えた試しなし」
幾多の正義の味方が現れては腹黒家の覇道を阻むことになる。

「水戸黄門」徳川光國 with 助さん角さん
「新陰流」柳生十兵衛
「陰陽師」安倍晴明
「鬼無双」雷電為右衛門
「遠山の金さん」遠山左衛門尉景元
「子連れ狼」拝一刀

先祖が戦ってきた中で有名所を一部挙げるだけで錚々たる顔ぶれである。
彼らを少なからず退け、敗れたとしても生き延びただけで評価に値する話である。
「暴れん坊将軍」徳川吉宗が敵に回ったときは最大の危機だったが、闇だか網津だかいう異形の輩が暴れたおかげで有耶無耶になったというのだから悪運の強さは相当な物である。

しかし本人にしてみればとんでもない話だった。
悪事を働き金をいくら稼いでも屋敷に仕掛ける罠、用心棒の雇用、忍による情報収集代などで消えていくのである。
敗北した場合も考えて多くの役人に賄賂も送っておかなければならない。
勝利の代償として借金はかさみ、代官として持っていた利権も抵当にいれる羽目になる…
世間体は立派だが財政は火の車なのであった。

ある日の事、助兵衛は唯一の楽しみ。日課の「ザ・帯回し」を行なっていた。
「よいではないか よいではないか」
「ザ・帯回し」とは女中の帯を引っ張り回転される遊びである。
「旦那様っ…お許しを…」
これが中々奥が深い。時間をかければ逃げられるし、回転が早過ぎれば酔って大変な事になる。
「よいではないか よいではないか」
単純に見えるが、実際は人一人を倒れないよう支えるわけで、体力もかなり必要となる。
「あぁっ…堪忍して下さい…」
「よいではないかっ よいではないかっ! よいではないかっ!! よいではないかっ!?」
女中の頬が羞恥で朱に染まる。吐息が色っぽく否応なくテンションが上がる!
「ぅぼぇぁ」
高速回転に耐え切れず、ついに女中は光る液体をまき散らした…

泣き出した女中を返し一人部屋を掃除しながら助兵衛は呟く、全てが上手くいかないのは奴らのせいだと。
正義の味方に対抗する「力」を彼は誰よりも渇望していた…

注:この話では悪代官の時系列を1>2>3とイメージしています。(実際には1の40年後が2ですが、3は直接繋がっていません)


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