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[27707] 【習作】リリカルなのは――灰色の軌跡―― (女オリ主 再構成) 
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:053caef7
Date: 2011/07/01 22:27
 おはようございます。こんにちは。こんばんわ。

 初めまして。葉月といいます。

 みなさんのSSに影響されまして、自分も書いてみたいと思い投稿しました。

 小説自体は少し書いた事があるのですが、SSは初めて書きます。

 今回は、リリカルなのはを書かせていただきます。が、自分は原作のとらいあんぐるハートをやったことがないので、そっちのネタを入れることができません。

 なのはwikiとアニメを参考にしながら書いてこうと思っています。

 なのは達の口調に違和感があるかと思いますが、そこは遠慮なく指摘してください。修正していこうと思います。あと、語彙が少ないですが、なんとかしようと思っています。

 オリ主中心で進めていこうと思っていますが、

 ①主人公の強さは、なのはやフェイトより少し弱い程度(原作主人公は大事)
 ②百合っぽいなにかを追加予定
 ③ハーレムなし(オリキャラと原作キャラはくっつきません)
 ④できるだけ、原作(アニメ)を尊重
 ⑤予定では、STSまで
 ⑥オリジナルデバイスあり

 以上を基本にしていきたいと思います。

 拙い文章ですが、よろしくお願いします。


2011年5月10日 チラシの裏に投稿
2011年5月24日 無印 第6話・第7話修正・追記
2011年6月24日 無印 第1話・第2話修正
2011年6月25日 無印 第3話 修正
2011年7月1日 無印 第4話 修正



[27707] 無印 第1話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:053caef7
Date: 2011/06/24 19:15



『誰か……僕の声を聞いて。力を貸して……。魔法の力を……』



「ん……」

 白色を基調とした部屋にシングルベッドが壁際に置いてあった。そのベッドの緑色の布団の山が小さく震える。

「むー、変な夢……」

 夢見が悪かったのか、呟きとともに少女がベッドから、ゆっくりと起き上がった。少女は、癖のある肩まで伸びた灰色の髪を手櫛で整えながら、洗面所に向かう。


「にゃ~う」

 洗面所で癖のついた髪をドライヤーと櫛で整えていると、甘えるような鳴き声が聞こえた。

「おはよう。ニア」

 少女の足下には、黒猫が座っていた。彼女のペットで、大事な家族である。

「ご飯はちょっと待ってね」

 ニアにそう声を掛けて、水で顔を洗い身支度を整える。

「お待たせ、ニア」

「にゃう」

 少女は黒猫に声を掛け、洗面所からリビングに向かう。ニアは、鳴き声で応じ
て彼女の後についていく。
 リビングの扉を開けるが、そこには誰も居なかった。フローリングの床に絨毯が敷いてあり、4人掛けのテーブルと椅子があり、そこから見えやすい位置にテレビが設置してあった。

(お父さんもお母さんも、まだお仕事か……)

 少女の両親は仕事で忙しく、殆ど家にいない。いつの間にか帰っており、いつの間にか出かけているので、彼女は両親の顔をあまり覚えていない。そんな生活に少女は寂しい思いをしている。
 彼女は両親に、コミュニケーションは壁に掛けられている伝言板であり、以前そこにどういう仕事をしているか聞いた事があったが、『人々を守る仕事をしているんだよ』と返され、具体的に何をしているかはっきりしなかった。

「にゃ~」

「あっ、ごめんね。すぐにご飯用意するからね」

 少女は、リビングで両親について考え事をしていたが、ニアのせがむ鳴き声で現実に戻る。
 ニアに謝罪し、エプロンを取り出して台所でニアの朝食を作り始める。 とい
っても、猫用の缶詰を皿に移すだけであるが。

「はい、お待たせ」

 少女は、朝食のはいった皿と水のはいった皿を持って、ニアが寝転がっているリビングにやってきた。

「召し上がれ」

 ニアの前に朝食を置くと、微笑みながら頭を撫でる。

「あっ、自分のも作らないと学校に間に合わないや」

 少女は台所に戻り、パンとジャムを用意し、テーブルに並べようとした時に気が付いた。そこに置かれた手紙と弁当箱に。

『アリア。忙しい事を言い訳にして構って挙げられずごめんなさい。
 お昼のお弁当を用意しました。こんな母親でごめんね。
 今とりかかっているお仕事が終わったら、何処か遊びに行きましょうね。――――駄目な母親より』

「……お母さんのばか」

 少女――アリアは母親の手紙を読み終わると、誰にも聞こえないくらい小さな
声でそう呟いた。







あとがき

 短いですが、以上で第1話終了です。

 本当は0話としたいのですが、話の展開的に微妙なので1話にしました。

 なのは達は次話からになります。

 できるだけ、文章を長く、内容を濃くしていきますので(努力します)。




[27707] 無印 第2話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:5872df84
Date: 2011/06/24 19:12




「アリアちゃん、一緒に帰ろう?」

 放課後。アリアは教科書類を鞄の中に入れ、帰る準備をしていた時、3人組の少女達が彼女と一緒に帰ろうと誘ってきた。

「あっ! 高町さんにバニングスさん、月村さん」

「『高町さん』じゃなくて、『なのは』だよ~」

「なのは……。名前で呼んでもらうのはもう諦めなさい」

「なのはちゃん……」

 アリサが振り向いた先には、『高町さん』と呼ばれ頬を膨らませて抗議している高町なのは、そんな彼女に呆れているアリサ・バニングス、2人の様子を見て微笑んでいる月村すずかがいた。

「あっ……うん、ごめんね」

「アリア、いちいち謝らなくてもいいわよ? 呼び方なんて個人の自由なんだから……」

 アリアは、なのはの言葉につい謝ってしまう。そんな彼女に、アリサは苦笑いで注意する。

「アリサちゃんもそのぐらいにしないと。アリアちゃん、また謝るよ?」

 すずかはそんな3人のやり取りが面白いのか、笑みを浮かべて会話に加わる。

「う……、わかったわよ。それよりアリア、一緒に帰りましょう!」

「……うん」

 アリサの逃がさないと言わんばかりの誘いに、アリアは気圧される様に頷いた。



    ●



 アリア、アリサ、なのは、すずかの4人組は、今日の授業やそれぞれの興味のあることなど色々な事を話しながら歩いていた。

「?」

 アリアは、公園の脇にある林が続く小道が気になり立ち止まった。

「アリアちゃん……どうしたの?」

「なのは? アリア?」

 そんなアリアの行動を、同じ歩調で歩いていたなのはが気づいた。
 なのはの言葉に、アリサとすずかも気がつき足を止める。なのはは、彼女らに解らないという風に首を横にふる。

「…………」

 アリアはしばらくじっと小道を見ていたが、何かに導かれる様に小道に入って行く。

「ちょっと、アリア!」

「アリアちゃん!!」

 そんなアリアを見て、なのは達3人も彼女を追う様に小道に入って行った。

    ●

 公園の脇にある林に囲まれた小道を導かれる様に歩いていたアリアは、この道の事を考えていた。

(なんだろ? この風景……見たことある。赤い空……、擦れ合う木々……、マントに変わった服を着た金髪の少年……。黒く丸い体に赤い瞳の獣――――)

「――――ア、アリア!! しっかりしなさい!!」

 アリアが頭に次々と浮かぶ映像を思い出していると、彼女の名前を必死に叫ぶ声で空想の世界から現実の世界に帰ってきた。

「バニングスさん……。どうしたの?」

「『どうしたの?』じゃないわよ!足を止めてこの道をじっと見ているかと思えば、ふらふらっと入って行くし! いくら声を掛けても反応ないし!!」

「大丈夫?」

 アリアの目の前には、彼女の行動に怒っているアリサと心配そうに見つめているすずかの姿があった。
 なのはの姿が見当たらないので左右を見渡して探していると、背後から「夢で見た景色だ」という呟きが聴こえた。
 振り返ると呆然としたなのはがおり、アリサとすずかが心配そうになのはに声を掛けようとした時――――、

【助けて……】

 アリアの頭にそんな声が聴こえた。

「今、何か聴こえなかった?」

 なのはも聴こえたらしく、自分以外にも聴こえたか疑問の声を放つ。

「別に……」

「聴こえなかった……かな?」

「私は聴こえたよ……」

 なのはの質問に、アリサとすずかの2人は首を横に振り、アリアは聴こえたと答えると――

【助けて……】

「アリア、なのは!!」

「アリアちゃん、なのはちゃん」

 アリアとなのはは走り出し、すずかとアリサは2人の後を追うように走る。

「アリアちゃん、たぶんこっちの方から……」

「高町さん、あれ!!」

 2人が走る先に小動物が踞まっていた。小動物の前に屈み、様子を窺う。

「どうしたの? アリア、なのは。急に走り出して――」

「あっ、見て。動物? 怪我してるみたい……」

 アリアとなのはに追いついたアリサとすずかは、なのはが抱き上げた小動物に気づく。

「うん……。ど、どうしよう……」

「どうしようって……。とりあえず病院?」

「獣医さんだよ……」

「えっと、この近くに獣医さんってあったっけ!?」

「えっと……、この近くだと確か……」

「待って、家に電話してみる」

「月村さん、この近くだと槙原動物病院だよ!」

「ナイスよ! アリア。場所分かる?」

「ええ!!」

 アリア達は小動物の怪我に慌てふためき、病院もとい獣医の所に連れていく事になった。その場所はアリアが知っており、彼女を先頭にその動物病院に向かった。





あとがき

 さて、今回の話しは、アニメ1話のAパートです。物語はAパートで1話目、Bパート2話目と分割して、投稿していこうと考えています。


 なのは達の口調は大丈夫でしょうか? アニメを見直しながら書きましたが、全く自信がない……。
 あと、主人公の口調が安定しない……。このままでは、フェイトとかぶっていまいそうです。



[27707] 無印 第3話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/06/25 23:49



 アリアの案内でなのは達は、怪我をした小動物を治療するために槙原動物病院にやってきた。アリアはそこの獣医さんと顔馴染みの様で、彼女が事情を説明するとすぐに小動物の治療を行なった。

「まあ、怪我はそんなに深くないけど、ずいぶん衰弱しているみたいね。ずっと1人ぼっちじゃないかな?」

「院長先生、ありがとうございます」

『ありがとうございます!』

 女性の獣医――動物病院の院長――は、後片付けをしながら治療の結果をアリア達4人に報告する。
 アリアは治療のお礼を言うと、なのは達も続いてお礼を言った。

「これって、フェレットですよね? どこかのペットなんでしょうか?」

 アリサは、胴体に包帯を巻いて眠っている小動物――フェレットの様子を見ながら、片付けを終えた院長先生に質問する。彼女によるとフェレットにしては珍しい種類らしく、どの種類か判別できないようであった。
 アリアはフェレットを撫でようと手を差し出そうとしたところ、そのフェレットが目を覚ました。

「あっ、起きた……」

 フェレットが起き上がると、すずかが感激の声を上げる。
 フェレットは、アリア・すずか・アリサ・なのは・院長先生の順に視線を動かした。そして、なのはをじっと碧の瞳で見つめる。

「なのは、見られてる」

「えっと……、えっと……」

 アリサは、なのはに小さな声でフェレットに見られてる事を告げる。
 なのはは、戸惑いながら右手をフェレットの前に差し出す。

「わぁ……」

 フェレットは、なのはの手の匂いを嗅ぎ、ぺろっとなのはの指を舐めた。
 なのは達はその姿に感激していたが、フェレットは気絶するように身体を横にした。
 院長先生は、しばらく安静にした方が良いとアドバイスし、明日まで動物病院で預かることになった。

「すみません。また明日きます」

『ありがとうございました』

 アリア達は、明日引き取る約束をして動物病院を後にした。

    ●

「あのフェレット……、どうしよう……」

 帰り道。アリアの呟きにみんなは「う~ん」と唸りながら、頭を悩ませた。

「うちには、庭にも部屋にも犬がいるし……」

「こっちもネコがいるから……」

「うちは食べ物商売だから、原則としてペットの飼育はだめだし……」

「私の家も月村さんと同じで、ネコがいるし……」

 バニングス家には犬が、月村家とリヒテンシュタイン家には猫がいるため、フェレットを飼うのが難しい。飼育することになれば、フェレットは確実に餌になる。
 ペットを飼っていない高町家だが、駅前で有名な喫茶翠屋を経営しているため、こちらも厳しかった。

「やっぱり、みんな無理だよね……」

 望み薄とわかっていたのか、アリアの落胆は少ない。
 またみんなで頭を悩ませていると、駅前の大通りに出る。ここで解散となるが、フェレットの問題が片付いてないので、解散できない。しばらく、みんなはそれぞれ意見を述べたが、根本的な解決策は出てこなかった。

「う~ん。とりあえず、みんなに相談してみるね?」

 いい考えが浮かばないからか、高町家で一時的に預かるという形で相談してみると、なのはが提案した事でとりあえず解散となった。

    ●

「ただいま~」

 アリアは、なのは達と別れた後にスーパーで晩御飯の買い物を終わらせて帰宅した。
 『ただいま』という挨拶をしても、帰ってくる声はない。アリアが住む部屋は静寂が支配するのみである。

「ニアは寝てるのかな?」

 アリアは買い物袋を持って、ニアの住処となっているリビングに足を向けた。

 リビングに入ったアリアは、ニアがいつも寝転がっているソファーを確認したが、黒い身体は見当たらなかった。

「あれ? 私の部屋かな~」

 ニアはリビングにいなければ、いつもアリアの部屋のベッドで丸くなっている。

「ニアのご飯を早く作って、今日1日のスキンシップをしよ」

 アリアの1日の楽しみは、ニアとたくさんじゃれあう事であった。彼女は、ニアと何して遊ぶかを色々考えながら、自分とニアの分の夕食を作り始める。

    ●

 ――アリサちゃん、すずかちゃん、アリアちゃん。
 あの子はうちで預かれることになりました。
 明日、学校の帰りにいっしょに迎えにいこうね。
                       なのは――

 フェレットを引き取れる許可が下りたなのはのメールに気がついたのは、ニアと遊んだ後であった。

「ふぁ……。遊びすぎちゃった……。今日はもう寝ないと」

 時計を見ると時刻は午後10時。ほとんどの小学3年生は既に寝ている時間。
 アリアは、欠伸を噛み殺して部屋の戸締まりを始めた。まずは、自分の部屋の窓の鍵を閉める。続いて、あまり使用してないいくつかの部屋の鍵を閉め、リビングにやってきた。
 リビングで戸締まりのチェックを済ませると、今度はキッチンで火の元と水まわりのチェック。最後に玄関の鍵を閉めて、戸締まりは終了となるはずだった。しかし、玄関にやってきた時、キンという金属音を耳にした。この金属音は、ニアと遊んでいる間も聴こえた。耳障りな音に顔をしかめて気にしないようにしていた。

「うぅ……。不愉快な音」

 改めて耳障りな音に顔をしかめるアリア。耳をふさいでも金属音は頭に響き、どうしようもなかった。

「ああ、もう! うるさい!!」

 アリアはこの不愉快な音の正体を突き止めるために防犯用の木刀を手に取り、家を出た。

    ●

「でも……、この音はどこで鳴ってるんだろ?」

 勢いよく家を出てきたが、肝心の音の出所がわからず、近くの十字路で途方にくれていた。

「くっ……、また? ……えっ?」

 再びキィンという金属音に、アリアは頭を押さえるが音はすぐにおさまった。
 音が止むのと同時にアリアの市街地の方角から、ピンク色の光の柱が立ち上った。

「あれは……なに?」

 巨大な光の奔流に、アリアの頭は疑問符でいっぱいになった。それから、頻繁に聴こえていた金属音は一切鳴り響いていなかった。
 アリアは、音と関係あるか確認するために光の柱のもとへと駆け出した。





あとがき

 第3話をお届けします。本編はアニメ1話のBパートをアリア視点でお送りしました。
 なのはさんのハレの舞台なはずなのですが……、間に合うかどうかはアリア次第です。足が速ければ活躍が見れますし、足が遅ければ活躍が見れず大変なことになります(笑)。

 なのはwikiを見ているとサウンドステージの存在を忘れていました(おい)。どうにかしてサウンドステージのお話を物語に組み込んでいけたらな~と思ったり。無理なら抜きで進めていきたいと思います。



[27707] 無印 第4話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/07/01 22:08





 ピンク色の柱はもうすでに見えなくなっており、アリアは柱があったであろう方角を思い出しながら、髪が舞う速度で駆けていた。家を出るときに持ち出した木刀は、柄頭を上に刃を下にして左手で鍔にあたる部分を持っている。

(次の道を右に曲がれば、槙原動物病院まですぐだったはず……)

 アリアは槙原動物病院への道を思い出しながら、十字路を右に曲がったとき、誰かに思いっきり衝突した。

「きゃっ!!」

「――――!!」

 アリアと衝突した相手は、ぶつかった衝撃になすすべなく尻餅をついた。

「いたた……。すみません! 急いでいたので……?」

「こちらこそ……すみま……せん?」

 アリアとぶつかった相手は、互いの姿を認識すると言葉に詰まった。

「えっと……。アリアちゃん?」

「た……高町さん?」

 アリアとなのははお互い驚きを隠せず、戸惑いの表情を浮かべて固まった。


    ●


 なのはは、青いラインが肩や袖口に入り、胸元に赤いリボン、スカートの裾にフリルがついた聖祥大附属小学校のような服装、左手に赤い宝石がついた杖、右手にはフェレットを抱えていた。

「早く起きてください! 来ます!!」

 フェレットの叫びに、アリアは喋るフェレットに驚き、なのはは慌てて立ち上がって後ろを振り返る。

「えっと……えっと……。どうすればいいの!?」

「さっき言った封印をするには、呪文が必要なんです。心を澄ませて。心の中に貴女の呪文が浮かぶはずです」

 なのはは、呪文という言葉に疑問を抱きながら、心を澄ますために目を瞑った。

 唸り声が轟くと黒く丸い身体を持つ生き物が、なのはを目指して跳び跳ねてむかってきた。
 なのはは目を見開いて、持っていた杖を構える。

『protection.』

 杖から女性の声が聞こえたと思うと、なのはの前にピンク色のバリアが出現する。
 そのバリアは黒い獣から伸びた触手を防ぎ、掻き消す。

「リリカルマジカル」

「封印すべきは忌まわしき器。ジュエルシード!」

「ジュエルシードを封印!」

『sealing mode.set up.』

 なのはが呪文を唱えると、杖の柄の部分からピンク色の羽根が出現する。赤い宝石からピンク色の帯が伸びて、黒い獣を拘束した。黒い獣の額に、ローマ数字の21が浮かび上がる。

『stand by ready.』

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル21。封印!」

『sealing.』

 再び、帯が伸びて黒い獣に突き刺さる。
 黒い獣は、苦しいのかうめき声を上げ、消滅した。

「あっ……」

 なのはは、獣がいた場所に光る物を見つけた。

「これがジュエルシードです。レイジングハートで触れて……」

 なのはは、フェレットに言われた通りに、レイジングハートを菱形の水色の宝石――ジュエルシードに近づける。
 ジュエルシードは、レイジングハートの宝石の部分に吸い込まれた。

『receipt number XXI.』

 ジュエルシードが吸い込まれると、なのはの服装がもとのオレンジのパーカーとスカートに、杖は小さい丸い宝石に戻った。

「あ、あれ? 終わった……の?」

「はい……。貴女のおかげで……。ありがとう……」

 なのはの戸惑った呟きに、フェレットは限界だったのか、お礼を言った後に気絶した。

    ●

(高町さん……すごい……)

 なのはが黒い獣を消滅させる一部始終を見たアリアは、驚愕の表情を浮かべていた。彼女は怯える事なく果敢に立ち向かい、消滅させたなのはを羨望の眼差しで見ていた。

(この音は……サイレン?)

 遠くから、パトカーのサイレンが響いていた。誰がこの騒ぎを警察に通報したようであった。
 アリアはこの場所にいると、厄介な事に巻き込まれると思い、慌てて立ち上がった。

「アリアちゃん!!」

「高町さん。早く逃げないと……とてもまずいことになるかも……」

 なのはもフェレットを抱えて、アリアと合流した。

「そうだよね……」

 なのはもまずい事はわかっているのか、冷や汗を額に浮かべていた。

『とりあえず……ごめんなさ~い』

 2人は塀や電柱が壊れ、道路も抉れた現場を慌てて離れた。

    ●

「ハア……ハア……」

「……疲れた……」

 アリアとなのはは、公園で一休みしていた。黒い獣と戦闘のあった現場から一目散に逃げたため、息が切れていた。休憩のため、ベンチに座って体力の回復に努めていた。

「……すみません」

「あっ、起こしちゃった? ごめんね、乱暴で。怪我いたくない?」

小さく謝る声が聞こえた。走った事で怪我が酷くなってないか心配になったなのはは、フェレットを案じた。
 フェレットは、怪我はほとんど完治したから心配いらないと答え、身体を震わせて巻いている包帯をほどいた。

「助けてくれたおかげで、残った魔力を治療にまわせました」

「よくわかんないけど、そうなんだ……。ねぇ、自己紹介していい?」

「あっ、うん」

 なのははフェレットが頷くと、咳払いをして……、

「私、高町なのは。小学校3年生。家族とか仲良しの友達は『なのは』って呼ぶよ」

「…………」

「アリアちゃん? 次、アリアちゃんの番だよ?」

「えっ!?」

「大丈夫?」

「う、うん……」

 呆けているアリアをなのはは、心配そうに見つめていたが、彼女の返答に笑顔になる。

「えっと……、アリア・リヒテンシュタインです。高町さんと同じ小学校3年生で、クラスメートです。みんなは『アリア』って呼んでます」

「僕はユーノ・スクライア。スクライアは部族名だから、ユーノが名前です」

「ユーノ君か……。可愛い名前だね」

 なのはとアリア、フェレットは自己紹介をしてお互いの名前を知った。なのはは、ユーノの名前を聞き『可愛い名前だね』という呟きに、アリアは可愛い?と首をかしげる。

「すみません……。貴女達を巻き込んでしまいました」

 ユーノは、なのはとアリアを交互に見ると頭を下げて謝罪した。
 アリアは、ユーノのセリフに先ほどの場面を思い出し、謎の金属音と光の柱を追った結果があれとは憂鬱な気分になった。

(あ~、色々あって頭が痛いよ~)

「あっ、そうだ。ユーノ君怪我してるんだし、此処じゃ落ち着かないよね? とりあえず私の家にいきましょ? あとはそれから」

 なのはの提案に、ユーノは頷く。

「ねぇ……、高町さん。私も高町さんの家にお邪魔していい? 色々説明して欲しいんだけど……」

「あっ、そうだよね……。ユーノ君いい?」

「はい……。彼女も巻き込んでしまいましたから」

 時間も遅いので、とりあえずなのはの家に向かう事になのはとユーノに、今回の出来事を説明してもらうために、アリアも付いて行く事になった。





あとがき

 以上で、4話をお届けいたします。アニメ2話のAパートとなります。

 アリアはよくがんばった。家からなのはがいる場所まで、“まあまあ”離れていますが「どんな速度を出せば間に合うねん」、作者は突っ込みたいです。

 とらハでは、夜の一族ってのが出るみたいですが、彼女は違いますよ? 月村家がその一族らしいですが。

 こうハイペースで更新していると、内容が薄い・面白味がない・誤字脱字が多いという負の連鎖がががが。
 
 てか、アニメにちょろっとオリキャラが入ったという現状にどうなんかな~と思っていたりしてます。次からもっとオリジナリティを出していきます。では~。



[27707] 無印 第5話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/05/20 16:28



 ベージュを基調とした部屋に携帯電話のアラームが鳴り響いている。アラームは2種類鳴っており、音源はベッドと下に敷いている布団からであった。
 まずはじめにアラームが止まってのは、布団で鳴っているアラームであった。

「ん~?」

 掛布団が捲れ、灰色の髪を持つ少女が上半身を起こした。顔を見るとまだ覚醒していないのか、目を擦ったり欠伸をしたりしている。

「ふぁ~」

 彼女の気配で目が覚めたのか、この部屋の主である栗色の髪を持つ少女も起床した。

「おはよう。アリアちゃん」

「おはよう。高町さん」

 2人はお互いの笑みを浮かべて『おはよう』と挨拶を交わす。

「ユーノ君もおはよう」

「あっ、その……。おはよう。なのは、アリア」

「ははは、おはよう……」

 すっかり打ち解けたのかユーノに笑いかけるなのはに対して、まだユーノに慣れないのか苦笑いを浮かべて挨拶をするアリア。

(喋るフェレットって……。流石異世界……。色々すごいんだな~)

 あれから、高町家にやって来たアリアは、なのはの家族に嘘と事実を織り混ぜながら事情を説明した。彼女の家族は微笑みながら話を聴いていた。話が終わった時、だいぶ遅い時間だったので、そのまま1泊したのだった。
 その後、アリアはなのはの部屋で、ユーノと先程の獣やその核となるジュエルシードについて、彼の故郷や魔法についての軽い説明を受けて就寝。詳しい話は翌日の放課後にという話になった。

「アリアちゃん。早く着替えないと学校に遅刻するよ」

「あっ、そうだね。高町さん」

 起床した時間は午前6時だが、アリアが高町家から帰宅し学校の準備する時間を考えれば、余裕のある時間ではない。2人は慌てて着替え始めた。
 アリアは昨夜着ていた紺のジャージに、なのはは聖祥大附属小学校の制服に着替え、高町家のリビングに向かった。2人が着替えている時、何故かユーノはバスケットで丸くなっていた。

「お父さん、お母さん、おはよう~」

「おはようございます。士郎さん。桃子さん」

 2人がリビングに現れると、テーブルにはなのはの父親である高町士郎が、キッチンには母親である高町桃子がいた。士郎は新聞を読み、桃子は朝食を作っていた。

「桃子さん、恭也さんと美由希さんは何処に居られるのでしょうか?」

 アリアは、朝食の配膳を手伝いの中姿の見えないなのはの兄と姉の行方を桃子に訊ねた。

「2人は今、道場で鍛錬をしているのよ?」

「鍛錬……ですか?」

「ああ、家の裏に剣道の道場があるんだよ」

 桃子の言葉に何か引っかかるアリア。
 そんなアリアに、士郎が御神流という流派の道場を開いていると説明した。

「なのは、アリアちゃんと一緒に恭也と美由希を呼んで来てくれ」

「は~い。アリアちゃん、道場はこっちだよ」

 士郎の頼みになのはは元気な声で応え、アリアを連れて離れの道場に兄と姉を呼びに家を出た。

    ●

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おはよう~。朝ごはんだよ~」

「恭也さん、美由希さん、おはようございます」

 家の裏にある高町家の剣道場に入室したなのはとアリアは、中で木刀を素振りしている美由希とそれを見守っている恭也に朝食の準備が出来た事を知らせる。

「おはよう」

「ああ。なのは、アリアちゃん。おはよう」

 挨拶を済ませたなのはとアリアは、美由希にタオルとスポーツドリンクを手渡す。

「2人ともありがとう」

「じゃあ、今日の所はここまで。続きは学校から帰ってから」

「はい」

 タオルとスポーツドリンクを受け取った美由希を見て、彼女の師範である恭也は、早朝練習の終了を告げる。
 美由希は恭也の鍛錬終了の宣言を聞き、受け取ったタオルで汗をスポーツドリンクで水分補給をして頷いた。

    ●

「バニングスさん、月村さん、高町さん。おはよう」

「おはよう。アリア」

「アリアちゃん。おはよう」

「おはよう~」

 高町家から自宅に戻ったアリアは、学校の準備をして登校した。教室に入ったアリアは、アリサ・すずか・なのはに挨拶を交わした。

「ねぇ、アリアき――――」

 アリサがアリアに話し掛けたと同時に、朝のSHRが始まるチャイムが鳴る。

「ごめんね、バニングスさん。また後で……」

「あっ、うん」

「ほら、アリサちゃん。先生来るよ」

 皆が着席したところで、担任の女性教師が入室する。未知の世界に足を踏み入れた生活が始まった。



あとがき

 5話をお届けします。主人公であるアリアをどこで活躍させようか悩んでいたら、遅くなりました。

 日常が続くとモチベーションが長続きしないので、早めに活躍させようと考えているんですが、アリアの能力の調整が難航しています。いっそのこと、無印だけ主人公チートを行おうかな~っと。

 次は神社でのジュエルシード封印の場面を予定しています。ジュエルシードで強化された犬に、なのははともかくアリアは対処できるのかな?



[27707] 無印 第6話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/05/24 12:08

 放課後、昨晩の出来事の詳しい説明をユーノから受けるため、アリアは再び高町家へやって来た。

「じゃあ、昨日の詳しい説明をするね」

「あっ、うん」

「…………」

 なのはの部屋でユーノ・なのは・アリアの3人が円の形に座っていた。
 ユーノの台詞に、なのはとアリアは真剣な表情で頷く。

「まず、今回の出来事の原因となっているジュエルシードなんだけど……、あれは僕らの世界の古代遺産なんだ。本来は手にした者の願いを叶える魔法の石なんだけど、力の発現が不安定で……昨夜みたいに単体で暴走して使用者を求めて周囲に危害を与える場合もあるし……」

 アリアとなのはは、『周囲に危害を与える』という言葉に昨夜の黒い獣を思い出す。

「たまたま見つけた人や動物が間違って使用してしまって、それを取り込んで暴走してしまうこともある」

 説明を聞いていた2人は、ジュエルシードの危険性を認識し、早期に集めないとだめだと決意する。

「ユーノ君。なんでジュエルシードがこの世界に散らばっちゃったの?」

 アリアの疑問に、ユーノはしょんぼりと頭を垂れる。
 そんな様子に、なのはは心配そうに彼を見つめた。

「……僕のせいなんだ。僕は故郷で遺跡発掘を仕事にしているんだ……。そしてある日、古い遺跡の中であれを発見して、調査団に依頼して保管してもらったんだけど……」

 ユーノが遺跡発掘に携わっていりことに関心するアリアとなのは。アリアは興味津々という目で、なのはは単純に凄いという表情でユーノの説明を聴く。

「運んでいた時空艦船が事故か人為的災害にあってしまって……。21個のジュエルシードがこの世界に散らばってしまった……。いままで見つけられたのはたった2つ……」

「あと19個かー」

 なのはの呟きが部屋に響き、なんとも言えない沈黙が辺りを支配する。

「あれっ? ちょっと待って……。話しを聞く限りではジュエルシードを散らばっちゃったのって、別に全然ユーノ君のせいじゃないんじゃ……?」

「だけど……。あれを見つけてしまったのは僕だから……。全部見つけて……、ちゃんと在るべき所に返さないと駄目だから……」

 なのはの指摘に、ユーノはジュエルシードを見つけたのを悔いているのか、覇気のない罪悪感に満ちた声を洩らす。

「え~と……その、ジュエルシードを見つけたときは、昨日高町さんが行なった封印?をすれば大丈夫なんだよね?」

 再び訪れた静寂に、アリアは昨日のなのはの様子を思い出し、ユーノに疑問を口にする。

「うん……。ちゃんと封印されれば暴走の危険はないよ」

 それを聞いたアリアとなのはは安心する。
 それからは、魔法についてやユーノの世界についての説明が行われた。

    ●

 空が夕焼けに染まる頃。ようやくアリアは高町家を出た。
 ジュエルシードの回収は、なのはとユーノが行う事になった。アリアは参加すると主張したが、『魔法の才能はあるが、使えない状態で捜索に加わるのは危険』とユーノに強く反論され、渋々引き下がるしかなかった。

「魔法かー」

 アリアは、自分が魔法を使う姿を思い浮かべながら自宅に足を向けていた。火や水を自在に扱う自分の姿に彼女の頬は弛みっぱなしだった。

「――っ!?」

 次の角を曲がれば家に着くという所で、また金属音が聴こえた。アリアはジュエルシードが発動したと感じ、勘を頼りに行き先を自宅から発動場所へと変更した。

    ●

「なのは!! レイジングハートを起動して!!」

「起動ってなんだっけ?」

「“我、使命を受けし者なり”から始まる起動パスワードを――」

「えぇ? あんな長いの覚えてないよ!?」

「もう一度言うから、繰り返して!!」

「う、うん!!」

 アリアは勘を頼りに神社に駆けつけると、なのはとユーノが漫才をしていた。4つ目の犬の化け物が襲いかかる状況で。
 どうやら、なのははレイジングハートを起動せずに犬と対峙したようだった。

(高町さん……。いくらなんでも無茶苦茶……)

 アリアはその状況に呆れ、言葉が出なかった。

「きゃっ!!」

(高町さん!!)

 犬の化け物は、もたもたしているなのはとユーノに襲いかかる。
 アリアは、彼女に襲いかかる化け物に対して、鞄から取り出したある物を投げつけた。

「――――!!」

 投げつけた物は見事になのはの横を抜け、化け物の額に当たる。
 化け物は標的をなのはからアリアに変え、襲いかかった。

「高町さん、あとはよろしくーー!!」

 アリアは一目散に参道脇の森林に逃げ、化け物も追いかけるように入っていった。

『…………えっ!?』

 境内には気絶した女性と状況に思考が追いついていないなのはとユーノ、化け物を引き付けたアリアの筆箱。

「アリアちゃんっ!?」

「アリアっ!?」

 思考がやっと状況に追いついた2人。なのはは急いでレイジングハートを起動して、バリアジャケットと杖を装備、ユーノは彼女の肩に乗って森の中に入った。



あとがき

 第6話をお届けします。ジュエルシードの説明と神社での回収の序章となります。駆け足気味なので、内容がぺらぺらですが……。さて、アニメ2話を見ていて、第3者を介入させたらこうなるだろうと夢想した結果が終盤のお話です。ややこしくなった。




 アリア魔法デビューをずっと考えているのですが、どの場面がいいかな~と。SS01のプールか巨大化ネコ、温泉か……。第3勢力として活躍させるか……(えっ 能力というかどういった魔法を使うかによって、チートになりそうです。チート気味になったら、制限と制約をかけてバランス取るしかないですよね~。

 次回はアリアが活躍します。たぶん。



[27707] 無印 第7話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/05/24 12:17
きょうかいせん

「ひっ!?」

 可愛らしい顔立ちに恐怖の色を浮かべているアリアは現在、犬の化け物に追いかけられている。内心では、なのはとユーノを助けるためとはいえ、筆箱を投げつけるんじゃないと後悔していた。
 化け物は、跳躍を使って前肢の鋭い爪と強靭な顎による噛み付き攻撃を繰り返していた。
 アリアは、それらの攻撃を速度を利用した前転と跳躍で凌いでいる。しかし、本来の姿であろう犬という動物とスポーツをしていない小学3年生では、筋肉の使い方や体力面で大きな違いがある。徐々にだが、化け物の攻撃が当たる様になり始める。それにより、あちこちに土が付いた聖祥大附属小学校の制服が、爪による薙ぎ払いや噛み付きで背中や腕を中心に破れ、色白の肌が晒される。

(高町さん、早く来て!!)

 アリアは、追いつかれるのは時間の問題と感じ、追いかけられている化け物に唯一対抗できる少女の一刻も早い到着を祈る。

「あっ――」

 緊迫した状況で他の事を考えるのは命取りとなる。
 アリアは、地面に顔を覗かしていた木の根に足を取られ、バランスを崩す。そこに化け物の爪による攻撃が加わり、彼女は吹き飛ばされる。

「――っ!!」

 アリアは地面に腕や足など全身をぶつけながら転がる。そして、木の幹に背中を打ち付けることで回転は止まった。しかし衝撃止まらず、彼女の肺の空気が殆ど抜けた。

「かはっ――」

 アリアは、全身を打ったことによる痛みと肺の空気を一時的に失ったことによる朦朧とする意識の中、自分の人生が終わることを悟った。

(ああ、終わりなんだ……。高町さん、月村さん、バニングスさん……。さようなら。お母さん、ごめんなさい)

 化け物がとどめとばかりに跳躍から全身を使った攻撃を、アリアは意識を手放す事で受け入れた。

    ●





「あらっ? 諦めるのかしら? 起きなさい。リヒテンシュタインの名を継ぐ子よ」

「えっ――」

 尊大な女性の声に、アリアは覚醒する。目を開くと彼女の前に黒猫が座っており、犬の化け物を見据えていた。

「貴女はここで死ぬ運命じゃないわ」

 アリアも猫の見据える先を見ると、円形に二つの四角形が回転する白銀の魔法陣が、犬の化け物を阻んでいた。その様子にアリアは呆然となる。

「呆けてないで手伝いなさい。アリア・リヒテンシュタイン。封印は貴女しか出来ないのだから……」

「封印?」

 猫の台詞にアリアは驚く。自分にも、なのはがやっていた事が出来るのだという事を。

「で、でも無理よ! 封印にはデバイスが必要だし、私は魔法なんて使えない!!」

 アリアの叫びに、黒猫はふんと笑い飛ばす。魔法の才能があるという、フェレットもどきの言葉を思い出せと。
 アリアは確かにそんな事をユーノが言っていたと、思い出す。

「邪魔よ! この駄犬!!」

 説明に邪魔な犬の化け物に対して、黒猫は白銀の魔法陣を爆発させることで距離を稼ぎ、動きを鈍らせた。

「さて、話しの続きよ。アリア・リヒテンシュタイン」

 黒猫は振り返り、アリアと視線を交わす。

「デバイスはこれ。あとはこれを起動させれば、貴女は立派な魔導師」

 黒猫は、小さい魔法陣を出現させ、カバーが鉄色の分厚い本が召喚される。

「受け取りなさい。アリア・リヒテンシュタイン。古代の英知が詰まった禁書を……」

 アリアは恐る恐る、黒猫が禁書と呼んだ本を手に取る。
 その様子に黒猫は満足した笑みを浮かべた。

「さあ、心に浮かべなさい! 今、この状況を切り抜ける力を! 敵を打ち倒す武器を!!」

 アリアは全身の痛みを我慢して想う、この状況を切り抜ける力を……武器を……。

「来れ!! 禁書に眠りし魔法よ! グレイプニル!」

 アリアの叫びに応じ、犬の化け物の足元で黒猫と同じ魔法陣が展開される。そこから、黒く細長い鎖が犬の化け物を捕らえる。
 化け物は、抵抗する様に身を捩るが抵抗すればするだけ、拘束する力は強くなる。

「封印は弱らせてからよ。アリア・リヒテンシュタイン。そして、封印するための武器をイメージしなさい」

「は、はい!!」

 黒猫の助言に従い、弱らせる武器をイメージするアリア。

「来れ!! ――――」

「アリアちゃん!!」

 アリアが化け物を弱らせるための武器を召喚しようとした時、ようやくなのはが追いついた。

「高町さん、ユーノ君!?」

「アリア、これはいったい!?」

 ボロボロの制服を纏い、分厚い本を持っているアリアと彼女の足元に座っている黒猫の姿を見たユーノは戸惑い、犬の化け物が細長く黒い鎖で拘束されている光景に驚くなのは。

「時間切れ?」

 対して、黒猫は残念そうな声を上げる。
 なのはとユーノは得体の知れない黒猫に警戒し、杖を向ける。

「ジュエルシードの封印は無理だったようね……。まぁ、色々と分かった事があったから良かったけど……」

「君は何者なんだ!!」

「秘密よ。知りたかったら誠意を見せなさい。高く付くわよ」

 ユーノの言葉をぞんざいな態度であしらう黒猫。

「さて……。邪魔が入ったから帰らせてもらうわ。あと、ジュエルシードの封印はそっちに任せるから」

「待てっ!! どうしてジュエルシードの事を!」

 黒猫は、ユーノの言葉を無視。アリアに意味深な言伝を残し、背中を見せて歩き出す。

「アリア・リヒテンシュタイン、今日は楽しかったわ。お礼に怪我を治しといてあげる。また会いましょう?」

 黒猫はそう言うと足元に魔法陣を展開し、転移する。アリアに治療魔法を、拘束した犬の化け物を残して。




あとがき

 第7話をお送りします。アリアのある意味デビュー戦となる今回。色々と自重できませんでした。

 どこかで見たようなネタが混じっているかもしれませんが、そこは御愛嬌でお願いします。主人公は転生者ではないので、見たことのあるネタは完全に作者の暴走です。

 アリアの魔法を登場させたはいいんですが、リリなのの世界観と合っているか心配だったり、しています。どこかおかしかったら、修正します。前書きを。いっそのこと、微クロスと入れたほうがいいのかな~と。



[27707] 無印 第8話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/05/29 17:11


「えっと……、どこ?」

 アリアは、状況を把握しようと辺りを見渡していた。しかし辺りは薄暗く、現在いる場所が部屋であることぐらいしか、判らなかった。

「落ち着かないと……。たしか、ジュエルシードを封印して?」

 彼女は冷静になろうと、自分がどうして薄暗い部屋にいるかを思い出す。
 拘束を解いた犬の化け物をなのはが再び捕らえ、無事にジュエルシードを封印した事により化け物は消滅。ジュエルシードを確保したなのはとユーノが、黒猫がどうしてジュエルシードの事を知っているか聞くため、自分に近寄った事で白銀の魔法陣が発動。ユーノが何か叫んでいたが気がつくと、この部屋に立っていた。

「うん! 絶対にあの黒猫だよね!?」

 状況整理が終了し、知らない部屋にいるのは、白銀の魔法陣から黒猫の仕業だと再認識し、黒猫が姿を見せたら自分の家に帰してもらおうと説得の内容を考えていると、コツコツという足音が聴こえた。

「誰……?」

 灯りの高さや足音から、人であることが分かる。しかし、アリアにはここにやって来る人物に心当たりがない。やって来るはずの黒猫は、猫なのまず足音はしない。
 やってくる人物について、誘拐した方法から色々と理由を考えていると、アリアは最悪の考えに辿り着いてしまう。

「わ、私……」

 それは、奴隷として男性に買われ、屋敷で一生働かされた挙げ句、玩具にされるといった考えであった。
 しかし、現代の日本――魔法世界は不明だが――でそのような事例があるはずもなく、捕まる確率が高い犯罪に手を出そうといった輩はあまりいない。
 アリアは恐怖から、部屋の隅に置いてあるベッドの毛布に潜り込む。足音は別の何かのもので、自分には無関係であると思い込む。

「――いや……」

 しかし、足音はアリアがいる部屋の前で止み、鍵を解除する音が部屋に響く。
 彼女は毛布を頭まで被り、耳を塞いで全ての音を拒否しようとした。

【そんなに怯えなくても大丈夫よ? アリア・リヒテンシュタイン】

 そんな小さな抵抗を嘲笑うかの様に、相手は念話でコンタクトをとってきた。その声は、聞き覚えのある声であった。

    ●

「えっ……?」

 尊大な態度を思わせる雰囲気を持つ声に、アリアは被っていた毛布から頭だけを出し、驚いた。
 そこには、漆黒の髪をポニーテールに纏め、警戒を解くためかニコニコと微笑み、蒼のチャイナ服を纏う美しい女性が椅子に座っている。
 傍の机には、ランタンと軽食――サンドイッチとオレンジジュース――が置いてあった。
 アリアはしばらく見知らぬ女性を驚いた顔で見ていると、彼女は笑みから困った表情になり、溜め息を吐いた。

「はぁ……。やっぱり、声だけで誰だか判別するのは無理ね」

 女性はそう呟くと座ったまま、足元に魔法陣を展開させる。ランタンの橙色と魔法陣の白銀の光が部屋を照らす。

「助けてくれた猫――?」

 白銀の光が消えると女性の座っていた椅子に、体長20cmの黒猫が座っていた。
 アリアは飛び起き、先程の変化や神社の森での出来事など、疑問に思っていた様々な事を黒猫に訊ねた。

「質問に答えてあげるから、落ち着きなさい。アリア・リヒテンシュタイン」

 黒猫は再び女性の姿に変身し、アリアに落ち着くよう宥めた。

「冷静になったわね? まずは服を着替えなさい。ボロボロの服だと風邪をひくわ」

 女性はそういうと、白銀の円と二重の正四角形を持つ魔法陣を展開させ、服を召喚した。
 女性の指摘に、改めて自分の服装を見たアリアは慌てた。聖祥小学校の制服は背中と腕を中心に破け、スカートは足首まであった丈が膝まで短くなっていた。

「――――――」

 彼女は声にならない叫び声を上げ、女性が召喚した服をかっさらい、毛布を頭から被って着替えた。

「ううっ」

 着替え終わったのか、アリアは頭だけを毛布から出し、目尻に涙を溜めて女性を睨み付ける。

「ふふふ。よく確認しないのが悪いわよ?」

 そんな様子が楽しいのか、女性はクスクスと笑っていた。

「さて、お遊びはこれぐらいにして……。貴女の質問に答えるわ? 何故ここに呼んだのか、神社の出来事はなんだったのか……をね」

 女性は淡々と話し始めた。アリアを転送してまで呼んだ理由、犬の化け物を拘束した魔法、その時に使用した本の事を。




あとがき

 以上で8話をお届けします。しばらくオリジナル路線となりますので、なのはとユーノは少しお休みしてます。

 アリアは今後、どのように介入させようか悩んでいます。アニメを見ながらイメージを膨らましているんですが、なぜかアリアBAD ENDしか見えないのはどういうことでしょうか? A'SとSTSに介入できないなんでどんだけ~。

 みんなに幸せが訪れるお話を考えます。はい。



[27707] 無印 第9話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/06/03 00:13



「貴女をここに招いた理由は、私の“マスター”になってもらうため……」

 女性の台詞に警戒の眼差しに変わるアリア。

「マスター……?」

 彼女がそう呼ばれる事を考えている間、女性の説明は続く。

「『マスター』ってのは、この本の持ち主になる人の事を言うわ」

 女性はどこから取り出したのか1冊のカバーが鉄色の分厚い本を、アリアに差し出す。

「えっと……。これって、あの時の?」

 アリアの質問に頷く女性。
 その本は、神社の森でアリアの命を救い、初めて魔法を使った媒体となった物であった。

「この本は『白夜の魔導書』。遥か昔に作られた様々な次元世界の武具や防具を記録する魔導書よ」

 アリアは、恐る恐るその魔導書を手に取り、パラパラとページを捲る。ページには、武器や防具の名前と持ち主、蒐集した時代や能力について記されていた。その内容に彼女は悪寒が走る。

「話しに戻るわ。簡単に言うと貴女にこれを管理してもらいたいの」

「ええっ!?」

 突拍子のない話にアリアは驚愕する。彼女は物騒な物を管理できないと、慌てて魔導書を女性の手に突き返す。
 魔導書を残念そうな表情で受け取った女性は溜め息を吐き、魔導書の使い方や魔法について詳しく説明する。

「この魔導書はさっきも言った通り、様々な武具や防具を記録しているわ。貴女はその力を行使することができる。記録されている武具を召喚する、魔法という形に変換する、デバイスとして使うなど様々な形があるわ。それで、魔法は――――」

    ●

 説明が一段落した所で、再びマスターの件を話すが、アリアはまだ渋っていた。

「『管理する』と言っても、ただ持ってるだけでいいのよ? 実質的な部分は私が担当する。それに……、この力をどう使うのかは貴女の自由」


「あのっ……断る事はできませんか? “持ってるだけ”って言われても、なんだか怖いし……」

 女性は諭すような口調でアリアに話しかける。
 しかし、アリアは本の内容に怯え、女性の頼みをおずおずと断った。

「…………そう、残念だわ」

 彼女の返答を聞いた女性は、悲しそうに眉を下げて言葉を紡いだ。

「今日は遅いから泊まっていきなさい。明日の朝に送り届けてあげるから。あと、軽食だけど夕飯を用意したから食べなさい」

 相当な時間が経っていたらしく、女性はそのまま留まる事を勧める。
 窓が見当たらず、時計のない部屋にいるアリアとしては、彼女の言葉を信じるしかない。

「あ、ありがとうございます……」

「おやすみ。アリア・リヒテンシュタイン」

 アリアの言葉を聞き流す様に、女性は就寝の挨拶をして部屋を退出した。

「あっ、私……この恰好で寝るの?」

 女性が退出してしばらくして、アリアは自分の恰好を思い出した。黒のゴスロリ服を着込んだ姿を。

    ●

 コツコツと薄暗い廊下に足音が響いている。音源は、何かを考えている女性である。
 彼女は部屋を出てから、アリアをどうやってマスターとして契約させるか考えていた。

「あらっ? その表情は駄目だったみたいね」

「ベアト――」

 女性の前に現れたのは、ベアトと呼ばれた20代後半の白衣を着た女性であった。
 ベアトの姿を見た女性は、思案する表情から嫌なものを見る表情へと変わる。

「駄目よ? 現“マスター”をそんな表情で見ちゃ」

「…………」

 女性は、ベアトの注意を無視して彼女の脇を通る。
 その姿を一瞥したベアトは、通り過ぎた女性に語りかけた。

「マスターであるベアトリクス・リヒテンシュタインが命ずる。今夜、アリア・リヒテンシュタインと契約を結び、新たなマスターにせよ。そして、私に見せなさいな。我が娘の才能の片鱗を……」

 ベアトの命令に、女性は足を止めて臣下の礼をとる。苦々しい想いを内に秘めて。

    ●




 深夜、寝静まった部屋に白銀の頂点に円を持つ正三角形の魔法陣が展開し、漆黒の髪を持つ女性が現れた。
 女性は、この部屋に置いてあるベッドまで歩み寄り、ベッドを覗く。そこには、毛布を纏って眠る9歳ほでの少女がいた。彼女は相当疲れているのか、身じろきせず深い眠りの中にいるようであった。ベッドの脇には、黒のゴスロリ服が綺麗に畳まれている。
 女性は蒼い瞳で少女を見ると、彼女の上に跨がった。

「ん……」

 少女は体に掛かる重さに対し、身をよじることで抵抗するが、目を覚ますことはなかった。
 女性は目覚める気配がないとわかると、先程と同じ魔法陣を展開する。

「現マスター、ベアトリクス・リヒテンシュタインとの契約を破棄し、アリア・リヒテンシュタインを新たなマスターとして契約します」

 女性の機械的な言葉に反応するように、魔法陣の輝きが増す。彼女の言葉は続く。

「契約に伴い、アリア・リヒテンシュタインのリンカーコア露出。白夜の書によるリンカーコア蒐集。白夜の書のマスター契約を開始します」

 女性の手元に鉄色の魔導書が現れ、少女――アリア・リヒテンシュタインの胸から淡い灰色のリンカーコアが浮かび上がる。
 女性は彼女のリンカーコアの前に、白紙のページを開いた白夜の魔導書をかざす。

「蒐集開始」

 女性の呟きを合図に、白紙のページがどんどん文字で埋め尽くされていく。ページが埋まるに従って、アリアのリンカーコアは次第に小さくなった。

「くっ……あぅっ……!」

 リンカーコアの蒐集には痛みが伴うのか、呻き声をあげるアリア。
 ページがある程度埋まると、女性はアリアのリンカーコアの蒐集をやめる。小さくなったリンカーコアはアリアのもとへと戻った。

「仮契約完了。維持システムならびに防御プログラムが使用できます」

 女性はそう告げると、黒猫に変化して変移魔法によって退出した。部屋にはリンカーコアの蒐集により気絶したアリアだけが残された。




あとがき

 以上で第9話をお送りします。今回はアリアのオリジナルデバイスについてです。なんか陰謀臭いですが、キャラが勝手に動く~。再構成どころじゃなくなってきてる~。だから執筆速度が遅い気がします。

 アリアのデバイスはチート臭いですが、そこは調整していけたらな~と。では次回で。



[27707] 無印 第10話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/06/06 21:15



 アリアが漆黒の髪を持つ女性と出会って数日たった週末。その間、アリアは無事に家に送り帰されていた。
 帰ったその日から、気持ちの整理をするために学校を休み、殆ど一緒にいるニアを相手に色々と語り掛けていた。おかげで、『魔法という異質な力がある』というものを受け入れる事が出来た。

「あっ……。高町さん達との約束の時間……」

 前日の土曜日、なのはから父親の士郎がオーナーを務めるサッカーチームの試合のお誘いをメールで受けていた。メールの追伸部分で、この間の神社の出来事についてユーノ君と3人でお話しがしたいと記されていた。
 アリアは、女性の話をなのは達がどう判断するか知りたかったのと、しばらく会えなかった友達と話しがしたかったので、その誘いを受けることにした。

「大人しくしててね。ニア」

「にゃう」

 準備ができたアリアは寄ってきたニアの頭を撫でる。ニアは気持ち良さそうに目を瞑り、されるがまま撫でられた。

「いってきます」

 ある程度満足したアリアは、ニアに手を振ってなのは達との待ち合わせ場所にむかった。

    ●



「頑張れ頑張れ~」

「頑張って~」

 高町士郎がオーナー兼コーチを務めるサッカーチーム『翠屋JFC』の試合が始まった。
 アリサとすずかは声を張り上げて必死に応援、なのはとアリアは静かに応援している。

【これって、こっちの世界のスポーツなんだよね】

【うん。そうだよ。サッカーっていうの】

 なのはとユーノは、念話で会話をしている。その内容がアリアに届いているので、特定の相手向けたものではないようである。
 翠屋JFC側のフォワードが得点を入れ、チームメイトとアリサ達は歓声を上げる。

【ボールを足で蹴って、相手のゴールに入れたら1点。手を使っていいのはゴールの前にいる人だけで……】

【へぇ~、面白そうだね】

(スクライア君、興味あるんた……)

 2人の念話を聞きながら、アリアは試合を観戦する。

「キーパーすごーい」

「ほんとほんと」

「かっこいいね」

 相手チームのフォワードが放ったボールが、翠屋JFCのディフェンスの頭を越えた。が、キーパーの好プレーに阻まれた。そのプレーに再び歓声が挙がる。

【ユーノ君の世界は、こういうスポーツとかあるの?】

【あるよ。僕は研究と発掘ばっかりで、あまりやってなかったけど……】

【にゃはは。私と一緒だ。スポーツはちょっと苦手……】

 2人の会話に思わず笑ってしまうアリア。その姿を見たすずかに、「どうしたの?」と訊ねられたがなんでもないと首を横に振り、視線をグラウンドに移した。


    ●

 試合は2-0で翠屋JFCが勝利した。お祝いに翠屋で祝勝会が行われる事となり、アリア達4人も翠屋で昼食を取ることとなった。

「それにしても、改めて見ると何か、この子フェレットとちょっと違わない?」

「そういえばそうかな。動物病院の医院長先生も『かわった子だね』って言ってたし……」

 食事が一段落し、デザートのケーキを楽しんでいた時、テーブルにいたユーノを見て、アリサがふとその姿に疑問を抱き、すずかも同じ事を思っていたのか、アリサに同意した。
 それを聞いたなのはとアリアは、喋るフェレットで魔法使いとは言えず、気まずい顔になる。

「あーええと……。まぁ、ちょっと変わったフェレットってことで……。ほらユーノ君、お手……」

「きゅっ」

 2人の疑問に苦しい言い訳を言うなのは。ユーノにお手をさせて注意をそらす。

「かわいい~」

「賢い賢い」

 なのはの差し出した右手に左手をのせたユーノの姿にアリサは感嘆の声を上げ、すずかは手を前に組み感激していた。
 撫で回されるユーノの姿に、なのはは念話で謝り、アリアは彼女らのやり取りを苦笑して見守っていた。

    ●

「はい!」

「じゃっ、みんな解散。気をつけ帰るんだぞ」

「ありがとうございました」

 祝勝会が終わったのか、翠屋JFCのみんなが店から出てきた。
 アリアはなんとなく彼らを眺めていると、キーパーの少年がボストンバックのポケットから何かを取り出し、ジャージのポケットに入れるのを目撃した。

「――――!」

 なのはは何かを感じたのか、その少年の様子をじっと見た。

「どうかしたの? 高町さん」

「あっ……うん。たぶん気のせいかな?」

 なのはは迷った表情で、アリアを見る。

「あの子なら、さっき――」

「はい、なのは」

「へっ?」

「き、きゅぅ~」

 アリアとなのはの会話に割り込む様に、アリサがなのはにユーノを返す。ユーノは散々もみくちゃにされたのか、目を回していた。

「さて、じゃあ私達も解散?」

「うん、そうだね」

「ごちそうさまです」

 ちょうどいい時間になったようで、アリサの提案でお開きとなった。
 この後、みんなはそれぞれ用事がある。アリサは父親のデビット・バニングスと買い物、すずかは姉の月村忍とお出かけするらしい。アリアは、なのはと彼女の家でお話しの予定である。

「おっ、みんなも解散か?」

「あっ、お父さん」

 席を立ち上がった時、子供達を見送った高町士郎が、なのは達の所にやって来た。

「今日はお誘い頂きまして、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

「試合かっこよかったです」

 士郎に対し、アリア達は今日のサッカーの試合や翠屋での食事のお礼を言った。彼は3人を送ろうかと聞くが、アリサとすずかはお迎えが来ることを告げた。

「アリアちゃんはどうするんだい?」

「た……なのはさんに聞きたい事があるので、大丈夫です」

「アリア、なのはに聞きたい事って?」

「理数系でちょっとわかんない事があって……」

「そっか。確かにアリアちゃん、ちょっと苦手だもんね」

「あははは……」

 アリアは、予め準備していた言葉で追及を逃れる。
 その答えに納得したのか、アリサとすずかは士郎に一礼して翠屋を後にし、なのはとアリアは士郎と一緒に高町家へ向かった。






あとがき

 以上で第10話をお届けします。アニメの3話です。てか、まだ3話なんだな~と思っていたりしています。無印完結まで道のりがががが……。

 フェイト登場まであと少しなので、とりあえずフェイトが登場すれば、モチベーションが上がるはず!

 ではでは~。



[27707] 無印 第11話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/06/23 15:14


 高町家へ到着したなのは・ユーノ・アリアだったが、なのはは自分のベッドに疲れた様子で倒れ込む。それに驚いたアリアだったが、ユーノの説明になんとか落ち着きを取り戻した。

「僕がもっとしっかりしていれば……」

「ユーノ君は必死にサポート頑張ってるんでしょ?」

 ユーノの自分を責める呟きに言葉が見つからないアリアは、彼を慰めることしかできなかった。

「重苦しい雰囲気にしちゃってごめんアリア。それより話ってなに?」

 ユーノは雰囲気を切り替えようと、アリアの相談内容を尋ねる。
 アリアはユーノの正面に座り、1週間前にあった神社での出来事を話したいと口を開いた。ジュエルシードで変化した犬に追いかけ回された事、自分が死ぬと確信した時に黒猫が助けてくれた事、黒猫から渡された鉄色の分厚い本で対抗できた事を話した。その間、ユーノは口を挟まずに話しを黙って聞いていた。

「アリアは黒猫の正体とか、その魔導書の正体とかわかる?」

「えっと……。後でその黒猫に説明されたけど、魔導書は“白夜の魔導書”っていうので、様々な武器を集める為に造られた魔導書であり、私の家系が管理してきたって。で、その黒猫は管制人格とかなんとか……」

 アリアは、女性――黒猫――に特に口止めをされていなかったので、ユーノに自分が知った情報を話した。
 ユーノは情報を整理しているようで、眉を寄せてアリアに続きを話すよう促
す。

「魔導書には、剣とか槍とかの武器の使い方が記されてて、魔導書を使うには“契約”が――」

 アリアは、またキィンという金属音を耳にした。そして、2度ほど感じた魔力反応に気づいた。

「ユーノ君、アリアちゃん!!」

 なのはも感じたのか、目覚めており、机に置いているレイジングハートを掴ん
だ。

「待って! 高町さん、ユーノ君……何も出来ないかもしれないけど、私も連れて行って!!」

「えっ……!?」

「危険だよアリア! 神社での時みたいな可能性がある!! それに、話しを聞いたような都合の良い事は何度も起こらないよ!?」

 部屋を出ようとしたなのはとユーノに対して、アリアは連れて行ってとお願いをした。
 彼女の提案になのはは驚き、ユーノは頑なに反対する。しかし、アリアはユーノに「大丈夫」と言い張り、必死に同行を求めた。

「アリアちゃん……。神社で追い掛けられたとき、怖くなかったの?」

「……うん。とても怖かった」

 アリアの様子を見かねたなのはは、彼女が同行を諦める様に説得する。しかし、アリアは意見を変える気配はなかった。

「なのは……アリアを連れていこう。これ以上封印の対応が遅れるのはは、流石にまずいよ」

「うん。アリアちゃん、無茶しちゃだめだよ?」

 ジュエルシードの反応があってから10分が経過していた。いち早く暴走を止めるため、ユーノはアリアの同行を許可せざるを得なかった。
 なのははそれに頷くと、アリアに無茶しない様に釘をさした。
 アリアは首を縦に振り、なのはとユーノの後に付いて行った。



あとがき

 更新が遅くなりすみません。以上で11話をお届けします。不自然さが目立たないように頑張っていたのですが、どうでしょうか? あまり自信がないです……。

 3話後半の前ふりでしたが、次回は後半のメインを上げます。連投ですので、よろしくお願いします。



[27707] 無印 第12話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/06/23 15:23



「レイジングハート、お願い!」

『Stand by Ready. set up』

 ジュエルシードの発動状況を確認するために、3人は近くのビルの屋上にやって来た。到着した時、なのははレイジングハートを発動し、バリアジャケットと杖状のレイジングハートを装備した。

「酷い……」

「えっ……」

 ビルの屋上から見える景色は、大きな木々の幹であった。その姿に、なのはとアリアは絶句する。

「たぶん、人間が発動させちゃったんだ……。強い想いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから……」

「えっ!?」

 ユーノの説明を聞いたアリアは、翠屋JFCゴールキーパーの少年がジュエルシードを持っていた事を思い出す。

(あの時、ちゃんと高町さんに伝えていれば……)

 少年が一緒にいた少女にジュエルシードを渡したと推測したアリアは、なのはとユーノにそれを伝えれなかった事を後悔した。
 ふと、隣にいるなのはを見ると、悲しそうにうつむいている姿があった。その姿から、なのはも少年がジュエルシードを持っていた事に気づいていた様であった。

「ユーノ君……、こんな時はどうしたらいいの?」

「なのは?」

「高町さん?」

 重苦しい沈黙の中、レイジングハートが淡い桜色に輝き、その変化にユーノとアリアは戸惑う。

「ユーノ君!」

 戸惑っているユーノに、なのははどうすればいいかを強い口調で訊ねた。

「うん……。封印するには接近しないと駄目だ……。まずは元となっている部分を見つけないと――」

「でも、範囲が広いから手がつけられない……」

 ユーノの助言に、アリアは悔しそうに呟いた。
 屋上から見える範囲では、あちらこちらに巨大な木が生えているため、捜索の難しさが簡単に予想できる。

「大丈夫だよ、アリアちゃん。私が見つけるから」

「高町さん……。歩いて探すの? 無茶だよ!」

「大丈夫!」

 アリアの言葉を否定する様にレイジングハートを力強く前に構えるなのは。

『Area Search』

「リリカルマジカル。探して、災悪の根源を」

 なのはが呪文を唱えると、彼女の足元に魔法陣が現れた。そこから、多数の小型スフィアが解き放たれてジュエルシードを探すため散開した。

「見つけた!」

 暫く目を瞑っていたなのはは、ジュエルシードを発見する。

「すぐ封印するから!」

「ここからじゃ無理だよ! 近づかなきゃ」

「できるよ! 大丈夫」

 早速封印しようとするなのはに、ユーノは遠距離からの封印は無理と言うが、自信に満ちた声で答えた。

「そうだよね? レイジングハート」

『Shooting Mode. Set up』

 なのはの想いに応える様に、レイジングハートは形を三日月の杖の先を『U』の字に変える。

「行って、捕まえて」

 なのはの掛け声とともに、環状魔法陣を纏ったレイジングハートは、スフィアをジュエルシードのある木に向けて発射した。

『Stand by Ready』

「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアル10、封印!」

 なのはは、ジュエルシードを封印する呪文を唱えた。再び、レイジングハートから砲撃が放たれ、ジュエルシードに命中する。

『Seeling』

 ジュエルシードが封印されると木々は消滅し、根による地面の隆起だけが残った。

『Receipt Nomber X』

 封印されたジュエルシードがレイジングハートの元に収められ、今回の出来事は終息した。

「色んな人に迷惑……掛けちゃったね」

 バリアジャケットを解除したなのはは、今回の出来事が悔しいのかその場に蹲る。

「私、気づいてたんだ……。あの子が持っているの。でも、気のせいだって思っちゃった」

「高町さんだけのせいじゃないよ……。私は、その子が鞄からジュエルシードを出したのを見ていたのに、2人に知らせる事ができなかったから……」

 なのはの罪悪感に満ちた告白に、アリアは胸が掻きむしられる思いだった。

「お願い。2人とも悲しい顔をしないで……。もともとは僕が原因なんだから……」

 なのはとアリアの2人は、今回の出来事に胸を痛めて帰宅の途に着いた。新たな決意をそれぞれの胸に秘めて。



あとがき

 以上で第12話をお送りします。ぶっちゃけ、アリアが空気です。まあ、魔法が使えないので、空気なのは仕方がありませんが……。

 次回から原作を離れていくかもです。アニメ第4話はフェイトが出てきますが、どういう風に絡めていけばいいか……。



[27707] 無印 第13話
Name: 葉月◆a0f9a01a ID:359a3cff
Date: 2011/07/01 22:26




 ジュエルシードが海鳴市に被害をもたらした日の夜。
 アリアは、布団の中で今日の出来事を考えていた。ジュエルシードを事前に見つけていたにも関わらず見逃した事、ジュエルシードが発動した時に何も出来ずにただ見ているだけだった事を。

(高町さんとユーノ君の役に立ちたい……。もしも、またあの女性に会えないかな? あの時、断ったのは駄目だったかな……)

 アリアは、白夜の魔導書を所持していた女性を思い浮かべていた。彼女からの提案を退けたのを後悔していた。魔導書の力で少しは負担を自分も背負えるのではないかと考えていた。

(でも、過ぎた事だよね……)

 過去には戻れないので、過ぎた事は忘れ明日に備えようと、アリアは目を瞑る。

【今日の事件は堪えたようね? アリア・リヒテンシュタイン】

「――――っ!!」

 聴こえたのは、先程会いたいと思っていた声であり、アリアは布団を跳ね上げて起きる。それから自分の部屋を見回すが、脇には眠っているニアしか居ない。

「ど、どこにいるんですか?」

【貴女の家の前よ。着替えて降りてらっしゃい。お話があるわ】

 アリアは言われた通りに、薄い桃色のパジャマから鼠色のワンピースに着替えて、玄関に向かった。


    ●


「久しぶりかしら。アリア・リヒテンシュタイン」

「あっ、はい。お久しぶりです……」

 玄関の扉を開けると、黒のスーツを着た女性がいた。白夜の魔導書の説明をした女性である。

「あの……、お話って?」

「貴女が断った“白夜の魔導書”について」

「えっ……」

 女性が訪れた理由を聞いたアリアは、目を見開いた。それは、自分が求めた高町なのはを手伝える力、白夜の魔導書についてだった。



    ●



「あの……どこに向かっているんですか?」

「…………」

「あの――」

「黙ってついてらっしゃい」

 アリアはあの後、転移魔法によって前回訪れた建物に招かれた。その建物は、紅い煉瓦造りの洋館で、蔦が所々に巻き付いており、妖しい雰囲気を醸し出していた。

(この洋館って確か、幽霊が出るって去年噂になった……)

 アリアは、洋館に入る時に見た町並みの景色から海鳴市郊外であると確認し、建物の外観を見た時に男子が幽霊が出ると噂にしていたのを思い出した。

(私、幽霊か何かに取りつかれるのかな……)

 アリアは背筋に悪寒が走り、湧いてきた恐怖を振り払おうと歩く速度を上げた。


「着いたわ」

「ふぎゅ――」

「…………」

「ずみばぜん」

 アリアが歩く速度を上げた時に、女性が重厚な扉の前で止まった為に彼女にぶつかる事になった。 女性はそんなアリアを呆れた目で見た。アリアは鼻をぶつけたのか、鼻を押さえてこもった声で女性に謝った。

「…………。貴女には今から会ってもらいたい人がいるわ」

「はい」

「失礼のないように」

 女性は、アリアに注意事項を述べると扉を3度叩く。そして「失礼します」と断って中に入る。

「アリア・リヒテンシュタインを連れてきました」

「ご苦労様。お茶の用意をお願い」

「かしこまりました。直ぐにご用意いたします」

 女性は部屋の主に報告を済ますと、お茶の用意のために下がる。入れ替わるように、アリアは部屋に入った。
 部屋には、本棚と机が置かれていた。本棚は机を中心に3方にあり、1つの本棚に様々な本が収められており、10段もの段数を構成している。机は扉の正面にあり、上等な木を素材にしているようである。机は紙束と本の山が形成されていて、部屋の主の姿は見えなかった。

(さっきの声は……お母さん?)

 しかし、アリアは先程の会話から、主が誰か予想できていた。あまり顔を見ない人の姿を。



あとがき

 おそくなりました。以上で第13話をお届けします。これから少しづつオリジナルの展開をしつつ、進めていこうと思います。
 まあ、アリアが魔法に目覚めないことには物語が進まないのですが……。



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