虚なる闇が、流れて移ろう。
神剣宇宙の静かな流転。
そんな紺碧の静寂に漂う、虹綺の輝き。
闇の中、星に見紛わんばかりの煌めきを放つそれらは、しかし星ではない。
それは『樹』
全ての世界の根幹を成す、大いなる存在……名を『時間樹』と言う。
世界(えだ)の剪定(しゅうせい)、新たな世界(は)の創造、枯れた世界(くちば)の吸収…全ての作業を己で成し遂げ、時間樹を維持し続ける。
一つの『永遠』を手にした時間樹の目的は自身の維持以外には無く、その無欲もまた、永遠を助長させる要因となっている。
その永遠を内包する時間樹の光は星の如き輝きをもって、虚無の空間を煌々と照らし続ける…。
その輝ける虚空の中を流れる様に進む一つの集団があった。
集団と呼べる程に数は多くない。精々が3、4人といった所だろうか。
闇と煌めきだけが辺りを包む中、その集団は酷く浮いていた。
集団が浮いている事は勿論ながら、その集団にも浮いた存在がいた。
男である。
4人連れでありながら、そこに男が1人しかいないのだ。
男女比1:3ならまあ有り得るが、その比率がそのまま数に繋がるなら話は違って来る。痴情の縺れとかそらもうイロイロと…。
だがその集団は騒ぐでもなくはしゃぐでもなく、粛々と空間を進んでいた。
そんな中、一人の少女が不意に静寂を破りその口を開いた。
「飽きた」