July 2nd, 7:33pm 0 comments

FBでホットペッパーがスポット情報を登録しまくっている件

豚組しゃぶ庵の店長から「今日、突然、ランチでお客様がFacebookでチェックインしたからクーポンのドリンクをくださいって言われて驚いたんですけど、ウチの店ってFBでチェックインのクーポンとかやり始めたんですか?」と聞かれました。

確かに僕は昨晩、FBクーポンを申請したのですが、それは今朝方「規約に違反しているので却下されました」という連絡をもらったばかり。そんなはずはないだろうと、店舗でチェックインを試したら、驚くべきものを見つけました。

 

僕らの作った公式ファンページにひも付いたスポット情報とは別に、身に覚えのない「豚組しゃぶ庵」のスポット情報がある・・・

しかもそれにチェックインしたら、こんな画面が表示されました。

Checkin

 

Coupon

ほ、ホットペッパー!?

そうなんです。つまり、ウチが掲載しているホットペッパーのクーポンが、なぜか急にFBでチェックインをすると利用できるようになっていたのです。しかも、事前に加盟店であるウチには何も連絡せず、まるで豚組の公式スポット情報と競合するかのように。

うんうん、リクルートさん、攻めてますね。とかそういう呑気なことを言ってる場合ではなく、これは実はかなり大きな問題だと思ったので、ここで急ぎブログとして僕の見解と懸念をまとめておくことにしました。

 

 

1)お客様(ユーザー)にとっての問題

一つの店に対して複数のスポット情報が存在してしまうのは、foursquareをはじめとするあらゆるジオ系サービスの宿命だと思うのですが、これはユーザーにとっては常に「迷い」や「混乱」の原因となっています。

果たして、自分はどのスポットにチェックインしたらいいのか。少しでもジオ系サービスを使ったことのある方なら、そう迷ったことのある方は少なくないでしょう。

特に、豚組のように、ネット系ユーザーの来店が多いお店では、チェックインは「今、このお店に誰が来ているのか」を知るための重要な手段にもなっています。そのチェックイン情報を通じてユーザー同士が知り合い、交流につながることも少なくないわけですから、スポットがいくつも同時に存在することは非常に問題です。

 

2)お店にとっての問題

店舗からしても、複数のスポットが存在するのは、非常にやっかいな問題となりかねません。

たとえば豚組では、公式のFBページを設けており、そこにスポット情報をひも付かせています。これによって、僕らのFBページには常に「誰が来店したか」の履歴が残せるようになっているし、このページを通じてお客様とコミュニケーションを取ることも可能になります。お客様の問い合わせがあったら対応することだって簡単です。

しかし、そのスポット情報が、他にも存在していたらどうなるでしょう。当然、そちらにチェックインしてくれたユーザーを把握することもできないし、お礼を言うことだってできません。せっかくユーザーが「いいね!」を押してくれても、その「いいね!」は全く無駄になってしまいます。もちろん、お店としてはそこにお知らせを出すこともできませんから、勢い、こんな感じの「全然FBに取り組んでませんよ」という寂しいスポット情報となってしまいます。お店にどのくらいのチェックインがあるかは、お店の評判やクチコミにも影響があるので、お店としてはとても重要なデータです。しかしこれが複数のスポットに分散してしまうのは、つまりお店にとっての貴重な財産が無駄になっていると言っても過言ではないでしょう。

こういう問題があるからこそ、FBではこれまで「公式スポット」とでも言うべき仕組みを用意してきました。僕はそれをすごく美しいと感動したのですが、つまり、いくつか重複するスポット情報が登録されていたとしても、その中のどれか一つを選び、お店自身が「このスポット情報が公式ですよ」と定めることができたのですね。公式スポットとして登録されると、それはFBページにも統合でき、営業時間やメニューも登録できるようになり、「チェックインの可能なFBページ」という、ローカルビジネスならではの機能を持ったユニークなページが作れたわけです。(重複がある場合は、名寄せして一つにまとめられるという情報も聞いたことがありますが、試したことがないので分かりません)

しかし、せっかくこうしてスポット情報を整理して運用しようとしていても、その横でホットペッパーが「クーポン付き」のスポット情報を作ってしまったら、その全てが台無しになります。ユーザーだって、同じチェックインなら「クーポンがもらえるチェックイン」の方が良いに決まっています。だとすると、それなりの割合で、ユーザーは店舗の公式スポットではなく、ホットペッパーのスポットにチェックインするであろうと推測できます。こうなると、僕らFBページを運用している店舗側としては、そのお客様とつながる大切な機会を失うことになるのです。

念のため付記しておくと「FBに慣れていないお店にとっては、ページを無料で作ってくれるんだから、悪い話じゃないんじゃない?」というご意見もありましょうが、僕はこれには懐疑的です。そもそも、一昔前のホームページならともかく、FBページの運営には、ユーザーとのコミュニケーションが不可欠です。ページを作っただけで何かが得られることはなくて、そこでのコミュニケーションを積み重ねることで、初めて結果の出てくるものですから、ページができただけでは意味がないのです。ページを作ることができない人が、どれほどの運営ができるのか。お客様からの問い合わせに気づかずにスルーしてしまって逆効果になることもあるのだ、ということは意識しておくべきでしょう。

 

3)Facebookにとっての問題

ここまでFBがビジネスプラットフォームとして伸びてきた大きな要因の一つが「FBページ」の存在であることは、誰も異論はないでしょう。FBは、FBページの仕組みをマーケティングに活用できるように進化させることで、多くの企業ユーザーや個人ユーザーを惹きつけてきました。

そのFBページの最大のメリットは、「顧客と企業/店舗がFBページを介してつながること」にあったはずです。しかし、今回の「重複スポットの大量登録」は、まさにそれを自ら破壊することつながりかねないと思うのです。

こと飲食店に代表されるローカルビジネスにとっては、スポット情報やチェックイン情報は何よりも大事なデータです。これを散逸させ、さらにその店舗のFBページにユーザーを誘引させない方向に作用する「ホットペッパースポット」は、お店の商売を損なうことにしかならないのではないでしょうか。

そして、そうなってしまえば、FB自身にとってもゆゆしき事態になることは火を見るより明らかです。このような活動は、FBページの価値を落とすことにしかなりません。それは、つまりFBがこれまで築き上げてきたFBページの価値を、自らで破壊することを意味しているのではないでしょうか。

(以上は、リクルートとFBが握って展開しているはずだという仮説に基づいて書いております)

 

4)ホットペッパーにとっての問題

僕ら飲食店は、なぜホットペッパーに出稿し、クーポンを発行しているのでしょうか。それはひとえに「一人でも多くのお客様にお店の存在を知ってもらうこと」そして「一人でも多く集客してもらうこと」に尽きます。逆に言えば、ホットペッパーは、自らの紙媒体やウェブページを通じて加盟店をより多くの人に知ってもらうように努力し、さらに集客に結びつけることによって、加盟料を得ているわけですね。

その中でクーポンの存在は、「実際にホットペッパーが集客した証拠」として重要な役割を果たしていました。

つまり、僕らは「ホットペッパーが集客してくれる」ことに対して、その集客コストとしてクーポンを発行し、無料でドリンクをサービスしたり、割引をしたりしているわけです。

しかし、FB上でスポット情報とひも付いたクーポンを提供するというのは、それとは全く異なります。例えばこんなケースが考えられます。

 

 

食べログを見て、評判がよいので予約をした

お店に行ったので、記念にチェックインしておこうと思った

そしたら、ホットペッパーのクーポンが表示された

ラッキーー!と、お店の人に見せてドリンクをサービスしてもらった

 

 

さて、こういうケースだったら、僕らは何のためにクーポンを出していることになるのでしょうか。

そもそも、ホットペッパーは、集客には全く寄与していません。単に、最後の最後に「クーポン」を出すときに突然登場するだけで、営業的には何も貢献していないのですね。

ホットペッパーのウェブを見て、豚組に興味を持ち、そこに掲載されている電話番号やメールアドレス宛に予約を入れ、その際に「ホットペッパーを見て予約しているのですが、クーポンを使いたいので宜しくお願いします」というのとは、意味が全く異なるわけです。

 

なぜホットペッパーがFB上でこんなことをやったかは、なんとなく想像は付きます。これまでは、「クーポンの発行数」が、イコールホットペッパーの集客実績としてカウントされてきたからです。もっと言ってしまえば「ぐるなびは先月10組のクーポン利用があったけど、ホットペッパーさんは3組しかなかったよ。だから、ホットペッパーさんはやめようと思う」みたいな話だって、加盟店との間では日常的に数え切れないほどあるに違いありません。

だから、いかにしてクーポンの利用数を増やすかを考えたのでしょうね。

FB上でどんどん加盟店のスポットを増やして、片っ端からクーポンを付ければ、クーポンの発行数はどんどん増えていくはずです。つまり、「集客を増やす」ことを目指したのではなく、安易に「クーポン発行数」を増やそうと考え、その結果としてこのような施策に打って出たのだろうということは想像に難くありません。

 

しかし、このようなことをやって、これが長い目でみてホットペッパーにとってプラスになるとは思えません。事実、僕は週明けにでもすぐにリクルートに連絡をして、掲載をやめようかと思っているくらいですから。チェックインに連動してクーポンを出したいなら、FBクーポンで面白いことをやった方が、よっぽど僕らもお客様も幸せになれます。

 

 

そういうわけで、ユーザーにとっても混乱の種となり、飲食店にとっては営業妨害になり、FBにとってはFBページやPlacesの価値を下げ、ホットペッパーにとっても得るところのない、今回のような取り組みは、是非とも早急に見直しをお願いしたいところです。

事実を知ったのが16:00、これを書いたのが18:30と、極めて短時間でまとめてアップしているので、考察の甘いところがあるかもしれません。ご意見などがあれば、ぜひFBもしくはTwitterで僕宛にお寄せ頂ければ幸せです。

 

 

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