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もろ式: 読書日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-04-26

[][]Emojiに対するアイルランドドイツからの修正案

携帯電話の絵文字のUnicodeへの登録に関する議論は、一時沈静化したが、最近また活発化している。4月に入って、アイルランドドイツのナショナルボディが、N3607 Towards an encoding of symbol characters used as emoji (PDF)という文書を出してきた。Googleからの提案に対する大幅な修正案である。この文書の最初の部分だけ超訳してみた。

UnicodeコンソーシアムによるN3582 “Proposal for Encoding Emoji Symbols” と N3583 “Emoji Symbols Proposed for New Encoding”では、NTT DoCoMo、KDDI、Softbankという日本の携帯電話キャリア三社が個別に符号化したcharacter集合を根本的な典拠とする674文字の追加を提案している。我々はUnicodeコンソーシアムが提起したインターオペラビリティの問題については認識しているし、彼らがUCSにcharacterを追加する際にはインターオペラビリティが第一の関心事になることも理解している。

それと同時に、我々は“emoji symbols”の符号化の提案に対して数多くの批判が寄せられたことも承知している。その原因は、提案されたcharacterの一部に、いささか奇妙な性質を持つものが含まれているからである。アイルランドドイツは、UCS中にsymbolが符号化されることは正当であり、拒否されるべきではないと考えている。しかし、その場合には、characterのセマンティクスに基づいたsymbolの符号化がなされなければならない、とも考えている。N3583において提案されたcharacterの場合、UCSの中で「意味をなす=意義がある」ために符号化文字が満たすべきギャップをまだ満たしていないと、我々は認識している。

我々の考えでは、日本の携帯電話の中で使われている符号化文字集合を典拠としていたとしても、これらのcharacterは“emoji symbols”ではない。“emoji”とは利用環境のことであって、〔動物のシンボルとか麻雀牌などの〕意味領域を表わす言葉ではない。したがって、いったんこれらのcharacterがUCSで符号化されると、あらゆる環境で利用されるただの“symbols”になってしまう。

この文書では、〔N3582とN3583でなされた〕提案に対する修正案を提案している。この提案によって、次のような変更が加えられる。

  • characterのグリフが変更される。N3583で示されている代表グリフは総じて「絵のよう」であり、ものによっては過剰に「かわいい」ので、汎用的な標準にはふさわしくない。PIGやBEARという〔一般的な〕名前のついたcharacterは、日本の携帯電話においては微笑んだ顔だけで表現されているとしても、UCSでは可能な限り汎用的な表現にすべきだと、我々は確信している。日本のアニメ調の絵も一部の環境においては適切であろうが、〔PIGのような〕汎用的な名前がついたcharacterには特殊すぎるのではないだろうか。(後略)
  • 文字名が変更になる。我々は、より適切な名前があればそれに変更する努力をしてきた。(後略)
  • characterの配列を、より理にかなったサブセクションに再編した。(後略)
  • characterを新たに追加した。N3583で提案されている674文字のうち、深刻な問題があると考えているのは14文字だけである。しかしながら、下記の通りこの問題を緩和する方法、すなわち20パーセント程度の追加を我々は提案したい。

これに対する反論は、N3614 Response to Concerns Raised in N3607 About Encoding Emoji Characters (PDF)(日本語訳はN3620)としてあがっている。

Emojiは意味領域を表わす語ではない、という指摘と、日本のアニメ調の絵 (Japanese animedrawings) はふさわしくない、という指摘は興味深い。後者について、PIGの絵で比較すると:

うーむ、文字の汎用性(文字はコンテクストを越えて使用することができる)については理解できるが、(N3614=N3620でも言われているように)一方で文字が一定のコンテクストを背負っていることも間違いないわけで、この辺のバランスは難しいところだよなぁ。あと、「アニメ調」というのは、従来の文字論の用語を使えば、字体差ではなくて、デザインとか書体の差だったりするのではないだろうか、などとも思ったり。いずれにせよ、一考の余地あり。

例えばこんな劇画風(だと思ってくれ。下手なのはわかってる)な絵で提案したら、どんな反応だったんだろうか (^_^;;

f:id:moroshigeki:20090426113100j:image

nomurahidetonomurahideto 2009/04/26 11:53 汎用的なデザインを漢字にはほどこさなかったんだし(GTみたく明朝体ならぬユニ体)、グリフ差じゃあだめなのか。
ジブリに依頼してたら、と考えてしまった。十分世界規模のデファクトスタンダードじゃないかと。

moroshigekimoroshigeki 2009/04/26 12:01 ジブリだと、豚は『紅の豚』とか『千と千尋』みたいなのになると思うぞ。

ogwataogwata 2009/04/26 15:36 このアイルランドとドイツ提案は、Unicode-MLでのお祭りの第2ラウンドと考えられます。アイルランドはマイケル・エバーソン、ドイツはたぶんカール・ペンズリン。エバーソン氏はMLでも終始反対論をぶっていましたが、最後の方は一転して静かになったと思ったら、こんなものを用意していたのですね。エバーソン氏については英語版ウィキペディアに項目があります。どうやら大昔アップルでマーク・ディビスの部下であった模様。退職後アイルランド語に引かれて帰化し。アイルランドNBメンバーになったという人です(ちなみに、仏教徒だとか)。

ひときわ目を引くのが国旗について。Google案ではauとSBのレパートリ10ヵ国分を提案しただけなのに対し、なんとAA〜ZZの組合せ総てを用意していることで、これはUnicode=MLでペンズリン氏が主張していた案そのものです。しかしまあ、あれだけ感情的な議論をしていた割りには、生産的に議論が推移していると評価できるのではないでしょうか。

非常に待たれるのがWG2ダブリン会議における絵文字アドホックグループの議事レポートN3636で、これはUnicodeコンソーシアムのテクニカルディレクター、ピーター・コンスタブル(マイクロソフト)が書くことになっていますが、まだ文書名だけで保留中です。この人、もろさんが以前書いていた「文字とはなにか?」のオーサーです。
……今、確認していたら公開されている! 昨日までペンディングだったのに。急いで読まなくちゃ。
http://www.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3636.pdf

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