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東日本大震災:福島第1原発事故 賠償審、外国絡みの風評被害検討

 ◇「観光客」半減/「食品輸出額」2割減

 福島第1、第2原発事故に伴う損害賠償の範囲について決める原子力損害賠償紛争審査会(会長・能見善久学習院大教授)は1日、7月中にまとめる予定の中間指針に向けて、外国が絡む場合の農林水産物や観光業の風評被害について協議していくことを決めた。3~5月の訪日旅客数は前年比5~6割減、今年4月の食用農林水産物の輸出額は、前年比22・9%減少している。しかし、原発事故との関係は断定できず、審査会は今後、賠償対象とする基準を話し合う。

 この日、審査会に示された日本政府観光局の資料によると、訪日外国人数は、3月が35万2800人で前年同月比50・3%減、4月は29万5800人で同62・5%減、5月は35万8000人で同50・4%減だった。各国政府が訪日渡航注意勧告を出しており、その影響が考えられるが、原発事故との因果関係は分析が必要とした。

 食用の農林水産物についても、「放射性物質による汚染への不安が関係した輸入規制ならば、賠償の対象としても良いのではないか」「(イラクやクウェートなど日本全国のすべての食品に輸入規制するといった)過剰反応もあり、そこまでの賠償責任は東京電力にはないのではないか」などの意見が交わされた。

 また、審査会は、内部被ばくを含め、微量でも被ばくをした人の精神的損害を、賠償対象とするかどうかも議論していくことを決めた。ただし、明らかな健康被害は出ておらず、被ばく線量をどこで線引きするかは難しいことから、賠償の対象とするには慎重な意見も多い。【藤野基文】

毎日新聞 2011年7月2日 東京朝刊

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