政治

文字サイズ変更

原子力協定:国会承認が暗礁 原発輸出厳しく

 民主党政権が進めてきた原発の海外輸出に必要な原子力協定の国会承認が暗礁に乗り上げている。国会にはヨルダン、ロシア、韓国、ベトナムの計4カ国との原子力協定が提出されているが、東京電力福島第1原発事故で原発の安全性への信頼は崩れ、原発輸出への視線は厳しい。政府・与党内の推進力にも陰りが出ていることに加え、与野党対立の激化もあり審議は見通せない状況だ。

 民主党政権は09年末にアラブ首長国連邦(UAE)の原発入札で韓国に敗れたことを教訓に、昨年6月の新成長戦略で原発輸出を推進する方針を決定。同年9月にヨルダン、12月に韓国、今年1月にベトナムと矢継ぎ早に原子力協定を署名した。ロシアとは自公政権時代の09年5月に署名しており、今国会で承認、発効させる方針だった。

 特にヨルダンは三菱重工が仏アレバ社と合弁で参加する予定の入札締め切りが6月末だったため、政府・与党は承認を急いだが、福島第1原発事故の深刻度が4月に「レベル7」になったことで衆院外務委員会の審議入りは先送り。その後も自民党参院議員の政務官への引き抜きなどで国会は空転し、同委は5月25日以来開かれていない。

 ヨルダンは6月9日にハッサン計画・国際協力相が来日し、「日本の技術を引き続き高く評価している」と表明。ただ、入札ではロシアとカナダが競っており、経済産業省幹部は「協定承認のメドが立たないことは審査のマイナス要因」と焦る。

 事故後、政府・与党は原発輸出を含めた原子力政策の再検証に着手したが、枝野幸男官房長官は6月29日の会見で「原発(輸出)の位置付けは、事故を踏まえたエネルギー政策見直しの中で方向性が出る」と述べるにとどめた。

 民主党内では、原発輸出を推進してきた議員からも「事故を起こした日本が原発を売り込む状況ではない」と慎重論が出ている。【大貫智子】

 ◇原子力協定◇

 2国間で原子力関連の資機材や技術を移転するのに際し、平和目的への限定や国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ、第三国への移転規制などを定めた取り決め。日本は唯一の被爆国として核不拡散を重視しており、軍事転用を防ぐのが目的で、米英仏中など7カ国・1国際機関と協定を締結している。日本企業が原発を輸出するのに必要となる。

毎日新聞 2011年7月1日 23時26分

PR情報

スポンサーサイト検索

政治 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

毎日jp共同企画