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陸山会事件:却下調書に「小沢元代表関与」 東京地裁「任意性に疑い」--公判

 小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた元私設秘書の衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の公判で、東京地裁(登石郁朗裁判長)が証拠採用を却下した供述調書の中に、元代表の関与を認めた調書も含まれていることが分かった。秋にも予定される3人の判決への影響は必至で、強制起訴された小沢元代表の公判にも波及する可能性がある。【鈴木一生、野口由紀】

 関係者によると、検察側が証拠請求した3人の供述調書計38通のうち十数通が採用されず、残る調書の多くも部分的に却下された。

 地裁はこの決定で、石川被告と元公設第1秘書の大久保隆規被告(50)、元私設秘書の池田光智被告(33)に対する検事の取り調べにおいて、石川被告らが自身の関与を認めた供述を維持すれば、小沢元代表の逮捕や強制起訴に及ばないと示唆するなどの利益誘導があったと指摘。それ以外にも、他の被告が自白したとの虚偽情報を告げて供述を得ようとする「切り違え尋問」や、目前でメモを破り捨てて威迫するなど供述の任意性に疑いがある調べがあったとして証拠採用しなかった。

 石川被告は保釈後の再聴取でICレコーダーを使ってひそかに録音しここでも任意性に疑いがある調べが記録されていたことが決定の根拠の一つになったとみられる。石川被告は1日、取材に「小沢先生への報告・了承の調書が採用されないのは当然の判断で主張が認められた」と話した。

 大久保被告が捜査段階で虚偽記載への関与を認めたとされる調書は、大阪地検特捜部の前田恒彦元検事(43)=証拠改ざん事件で実刑確定=によって作成され、検察側が初公判直前に請求を撤回。それ以外に関与を示す直接証拠は石川、池田両被告の調書しかなく、無罪を主張する大久保被告に極めて有利な決定となった。

 小沢元代表を強制起訴した検察官役の指定弁護士は石川、池田両被告の調書を共謀の証拠として公判前整理手続きで証拠請求し、元代表側は採用に同意しない意向。元代表の公判は登石裁判長とは別の裁判官が担当し、早ければ秋にも初公判が開かれる。

 ◇論告内容の再検討示唆--検察幹部

 証拠調べをすべて終え、論告求刑を約3週間後に控えた時期の調書不採用に、検察幹部の一人は「あそこまで(却下される)とは。判決への影響は確実だろう」と懸念した。20日に予定されている論告の内容についても再検討する必要性を示唆した。別の検察幹部は「客観的には収支報告書への虚偽記載はあるし、元秘書の公判での証言はめちゃくちゃ。無罪はあり得ず、(調書を抜きにして)犯罪の構成を認めるのではないか」との見方を示した。一方、小沢元代表の裁判で検察官役を務める指定弁護士の一人は「公判で改めて(石川議員らから)話を聞かせてもらうことになる」としつつ、「却下理由を精査したい」と語った。【山本将克】

毎日新聞 2011年7月1日 東京夕刊

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