窓から射す光が、美しく伸びている。
少女はゆっくりと青の絨毯を踏み、彼女が訪れることを知る奉公人が活けてくれたのだろう、眠るこの部屋を行くその頬を柔らかに芳香が過ぎていく。
母親と弟と、会合のために彼女はここへ来た。
この会合は重要で、大切なことを話し合わなければならないことを知っていたが、机の向こうに座るであろう、その人たちと顔を合わせることに少女は気が引けた。
席に着くことはしなかった。
母を残して、彼らと顔を合わせることもなく、ここへ着くなり少女は幼い弟を連れてこの広い屋敷を歩き回り、疲れたのだろう、母のもとへ戻るという弟を人に預け、一人になった彼女は、逃げ込むようにこの部屋にやってきた。
部屋の中心、彼女が足を止めた先に、一枚の肖像画が掛けてある。
それは変わらぬ姿で、温かく彼女を向かい入れ、足はまた一歩、彼へ向かう。彼、――少女の父親は、ここではない静かな丘で眠りの中にいる。
写真がないわけではない。しかし彼女は、この画を好んだ。穏やかな陽に照らされ、今このとき、彼はこの画のように彼女に微笑みかけているようで、心に酷く染み入るのだ。
窓の外で、明るい声がする。
母と弟のものであるそれに、逸れることのなかった視線がふと光の方へと向かう。つられるように楽しげに、足は自然と窓に向かい、外を覗く頬は小さく緩む。
そして平穏の陽のもと、一つの銃声が鳴った。
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基本見切り発車にも関わらず修正も追いつかず、古いものは特に読みにくい文になっております。
それでも読んでくださった方には心から感謝を、また、新たに読み始めようとしてくださっている方はご注意ください。
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初投稿です。
お見苦しい点も多々あるとは思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。