阪神のチーフスコアラーで6月27日に心筋梗塞(こうそく)のため亡くなった渡辺長助さん(享年54)の通夜が6月30日、西宮市内の斎場でしめやかに営まれ、球団関係者を中心に320人が参列した。倉敷への遠征前に駆けつけた真弓明信監督(57)は、タイガースの勝利と優勝のために働いた長さんの意をくみ、今オフに優勝の報告ができるようチーム一丸の戦いをすると霊前に誓った。
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長さん、見ていてくれ。必ず優勝するから‐。
焼香を終えた真弓監督は声を絞り出すように話した。
「タイガースが勝つように、優勝するように、一生懸命仕事をしてくれた長さんの意をくんで、チーム全員の力を合わせ、オフはいい報告ができるよう頑張りたい」
逆転Vを、チームの誰一人としてあきらめてはいない。その思いをあらためて口にした。
真弓監督と渡辺さんは、事実上の“同期入団”。指揮官が阪神にトレードされた年のドラフト3位が長さん。翌年から一緒にプレーし「しかも熊本出身で同じ九州。非常に仲良くさせてもらいました」。遺影の両脇には渡辺さんの現役時代の背番号36、コーチ時代の『89』のユニホームが飾られた。入り口には、83年の巨人戦で放った現役時代唯一のホームランボールも。脳裏に浮かぶ思い出が、指揮官の瞳を潤ませた。
「体は大きいし、非常に健康で。それがいきなり逝って…。まだ受け止められない。顔を見たら一緒に酒を飲んだ長さんとは違ったが、今日帰ったらまた一緒に飲めるような気持ち」
通夜の後は倉敷へ向かわねばならない。だから、長さんに会えるのはこの日が最後。そう頭では理解していても、心が受け入れてくれない。
「お別れに来るところなのに、別れるという気持ちになれないですね…」。声を震わせながら話すと、しばし絶句。だが、悲しみにくれてばかりはいられない。
この日の練習前、和田打撃コーチは「次の横浜3連戦に限らず、ずっと積み重ねてこられたものがあるからね」と話した。チームにはリーグ再開へ向けて渡辺さんが整理した、各チームのデータが残されているという。
そんな長さんの仕事ぶりを、真弓監督は「とにかく野球が好きで、タイガースを愛してる。球場にいる時間が長く、チーフスコアラーとして熱心にデータを集め、チームのために働いてくれた」と振り返る。選手が迷うことなく次の1球に集中できるよう、労を惜しまなかった長さんの思いを受け継ぐことが、残された者の使命だ。
真弓監督は約束した。「とにかく長さんの意をくんで、喜んでくれるような試合をどんどんしていきたい」。祭壇の脇には、亡くなった翌日28日・広島戦(富山)のウイニングボールも供えられた。そんな勝利を一つでも多く積み重ね、栄冠をつかみ取る。それこそが、志半ばで逝った長さんへの何よりの供養だ。
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