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2011年6月26日 (日)

米国データが示す低線量内部被ばくの影響/東京新聞「こちら特報部」 (2011年6月23日)

米国データが示す低線量内部被ばくの影響

東京新聞「こちら特報部」 (2011年6月23日)

原発施設周辺で事故なくても健康被害  放射性物質の放出が止まらない福島第一原発の事故。放射線量の影響について、福島全県民を対象とした健康調査が先行して始まるが、最近、低線量の内部被ばくの懸念が高まっている。そんな中、米国の原子炉や核実験場の周辺住民の乳がん発生率などの増加を示した著書が注目されている。その疫学調査が明かす内部被ばくの恐ろしさと、福島への教訓とは何か。 (出田阿生、小国智宏)

 「先日テレビで、福島県に住む八歳の女の子が『放射能を吸い込んじゃうから、お外では遊ばないの』と話していた。いまや子どもでさえ、内部被ばくを言葉にするようになった」。長崎大学の戸田清教授(環境社会学)は、長崎市内でこう話し始めた。
 呼吸や飲み水、食事を通じていったん放射性物質が人体に取り入れられると、慢性的に体内で放射線を出し続けて細胞を傷つけ、がんなどの原因となる。原発事故による健康被害は、体外の被ばくのほか、こうした「低線量内部被ばく」で引き起こされる。

 チェルノブイリ原発事故は大爆発だったが、ほぼ十日以内に事故自体は収束した。ところが福島は百日を過ぎても収束せず、海洋汚染も続いている。こうした状況下の被ばくは過去に例がない。
 低線量内部被ばくはどんな影響をもたらすのか。戸田氏ら研究者が福島の原発事故前から注目してきたのは、百四基の商業原発がある世界一の原発大国・米国の低線量内部被ばくについての、民間疫学調査だった。
 「実は原発は、事故がなくても健康被害をもたらす。平常運転で放出される放射能で周辺住民が内部被ばくするからです」

 衝撃的な数字がある。

米国の公衆衛生学者ジョセフ・マンガーノ氏の疫学調査によると、米国内で一九八九年から九八年にかけて閉鎖された原発六基の周辺四十マイル(六十四キロ)で、ゼロ歳から四歳までの小児がん発生率が、原発の閉鎖後に平均で23・9%も急減した。

 同時期、米国全体での発生率は微増していた。
 どの原発も、小さなトラブル以外、過去に事故を起こしていない。「基準値以下の放射性物質が原発運転中に大気や土壌に長年放出され続け、周辺住民が低線量内部被ばくして、がんの発生率を押し上げたと推測できる」と戸田氏は解説する。
 戸田氏らが共訳し、偶然、福島の事故後の四月に出版された「低線量内部被曝(ひばく)の脅威」(緑風出版)も、同様の事実を明らかにしている。

 著者は米国の統計専門家ジェイ・マーティン・グールド氏。行政の公式資料をもとに統計をとり、米国の原子炉や核実験場周辺の百六十キロ圏内で、乳がんの発生率が急増していたことを突き止めた。
 米国は四十八州あり、古い原発七基がある十四の郡では、五〇~五四年の時期から八五~八九年の時期までの間、白人女性の十万人当たりの死亡率が37%上昇した。同時期の米国全体の上昇率は1%で、大差があった。
 さらに、このうち放射能の影響を受けやすいとされる乳がんによる同時期の死亡率の上昇は、全米で二倍だったのに対して、十四郡では五倍に達していた。

 同様に、グールド氏らは国のデータから、戦後の大気圏内核実験の開始と、六三年の中止後で、新生児死亡率や低体重児の増減率が疫学的な異常を示すことも証明した。
 「米国立がん研究所の調査は『原発周辺の住民の健康に影響がみられない』としていたが、汚染が及ぶ地域を対象に入れないなど統計学的な手法に問題があった」(戸田氏)。放射性ヨウ素131のほか、半減期の長いストロンチウム90とセシウム137などが雨で落ち、都市部の飲料用上水や農村部の井戸水を汚染していたという。
 福島県は県民約二百三万人を対象に、三十年間の健康影響調査を行う。

 戸田氏は「広島・長崎の被爆者は、戦後六十年以上たったいまでも、放射能の影響と思われる病気を新たに発症している。今後六十年以上、つまり一生涯にわたる調査が必要」と提言する。

 さらに「行政区分と汚染の広がりは別のもの。福島県民に限定せず、隣接県・地域の住民にも広げる必要がある」。事故直後に原発周辺地域にいて、県外に避難している人たちもきちんと調査するよう求める。
 それでも課題は多い。どれだけ内部被ばくをしたのか、どれほどの健康被害につながるのか、現時点では不明なことばかり。線量計は外部被ばくしか計測できず、ホールボディーカウンターで内部被ばくを調べられるのは一部の放射線に限られる。そもそも放射性物質の体内への影響の度合いは、個人差が大きい。

 将来、福島第一原発の周辺住民ががんを発症したとして、事故が原因と立証するにはどうすればいいのか。過去の原爆症や水俣病などの認定訴訟で常に争点となってきたのは「因果関係」だ。
 戸田氏はこう訴える。「疫学調査は集団が対象で、個人についての因果関係は証明できない。それならば、国や電力会社が『原発事故と発病は無縁』と完璧に立証できない限り、被ばくの事実と発病の事実さえあれば『因果関係は推定できる』として認定すべきだ」

 <デスクメモ>「おれたちゃ、人間モルモットか」。福島市内で娘が二人いる父親は憤った。「みんな最低一時間は放射能の話だよ」と居酒屋に入ると、会話から「セシウム」「内部被ばく」が飛び交う。父親は県民調査の重要性は理解している。だがデータは住民救済のためであって、国のものではないと力説した。 (呂)

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