シリーズ 岡山の防災力

第3回 「液状化対策」 (2011年5月20日(金)放送)

東日本大震災では津波以外に液状化でも甚大な被害が出ましたね。

【記者:浅川 雄喜】
はい、千葉県を中心に関東の沿岸部で大きな被害が出ました。
このように電柱は軒並み傾き、道路は激しく変形しています。ライフラインも寸断されました。地盤沈下に伴い住宅も傾いています。

液状化とはどんなものなんでしょうか。簡単に実験できるので、スタジオで再現してみたいと思います。

【記者:浅川 雄喜】
こちらの水槽の中の煉瓦が住宅、埋まっているのがマンホール、ボールペンは電信柱だと思って下さい。 土には水を含ませていますが、今はこのように押しても土は硬く締まっているので、どれもしっかりしています。では、揺れが起こるとどうなるのでしょうか。実際に揺らしてみたいと思います。

これが液状化です。地震の揺れによって土の中の水分が浮かび上がります。土の中の水分が減ったことで、地盤が沈下します。大きな地震が起こると、埋め立て地などでこのような現象が起こるのです。

この液状化、岡山でも起こるのでしょうか。

【記者:浅川 雄喜】
液状化は水分の多い土地で起こりやすいので、埋め立て地や河川の多い岡山県は液状化になりやすいと言えます。対策方法を取材しました。

VTR

これは、岡山県が作製した県内の液状化の危険地域を示した地図です。
赤い部分は震度5強の地震で液状化する恐れがあります。液状化の恐れがある地域は備前市から笠岡市まで沿岸部全体に広がり、岡山市は中心部まで広い範囲で液状化すると見られます。

東日本大震災で、千葉県や茨城県などの沿岸部で甚大な被害をもたらした液状化。
岡山市でも多くの地域が液状化の恐れがあるとされていますが、市では液状化は事前の対策が難しく、今のところ具体的な対策は考えていないとしています。本当に有効な対策はないのでしょうか。

岡山大学の名誉教授、竹宮宏和さん(68)です。竹宮さんは地震工学の第一人者として40年にわたって液状化を研究してきました。
「岡山の特に県南地域の地盤は埋め立て地。構成している土砂を見ますと、砂質土が多い液状化しやすい、(全国の)他の平野と比べても液状化しやすいトップクラスになっていると思います」。
難しいと言われる液状化対策ですが、竹宮さんは個人でも行える液状化対策を開発しました。それがこのWIB工法です。
コンクリートなどの柱を地中に並べて埋めていき、建物の下に蜂の巣状の頑丈な仕切りを作るのです。


【説明:竹宮教授】
「まずこの1本の柱をいれて、そして次に隣り合わせで2本目の柱を入れます、そうゆうふうに順次柱を作っていきますと、こうゆうふうな壁面が出来るわけです、壁面を平面で見ますと、こうゆう形で壁面が出来上がっていく。結果としてこのような六角形の強固なものができる」

蜂の巣状の仕切りの中に土を入れることで地震が起こっても土地の動きが制限されて液状化を防ぐのです。
この工法は国の研究機関のシミュレーションでも効果が認められました。
上は対策をとっていない土地、下はWIB工法を取り入れた土地で赤い部分は地震が起こった時に液状化する可能性が高い地盤を表しています。上の対策をとっていない土地は全体が真っ赤になっていますが、WIB工法を取り入れた下は真ん中だけ青いままで、液状化していないことがわかります。

この工法は、すでに建っている家にも応用がきくといいます。
家が建っている場合は、その家を囲むように、柱を埋めていくのです。100平方メートル程度までの住宅は、これだけでも効果があると言います。

【説明:竹宮教授】
「液状化を抑えることで連鎖的な被害を防げる。みなさん家屋という個人財産を守るためにも投資というかたちで液状化対策をしてほしい」

南海・東南海・東海と3つの地震の連動する大地震の可能性が指摘される中、岡山発の技術が個人でも行える液状化の有効な対策として注目されています。

【記者:浅川 雄喜】
紹介した工法は実用化されていて、液状化をはじめ、トラックや列車の振動対策として全国で施工されていて個人の住宅はもちろん病院や警察署などのほか、東京電力の変電所でも採用されています。
竹宮教授によりますと、新築の住宅の場合は建物の工事費の1割程度、今ある家を囲む工事では、100万円から200万円程度で行えるということです。

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