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黒い猫
作者:茶和
猫好きは猫が知る。
猫とは心が通います。
 今、我が家には三匹の猫が住んでいる。最年長は十七歳の三毛猫。そして八才の黒っぽい兄妹猫だ。その他にもかつてやはり黒い猫がいたのだが、一年の短い命で死んでしまった。
 モンタというその子は知人宅の物置小屋の裏で生まれた。生まれたてはうっすらとグレーの縞模様が出ていたのだが、成長するにつれ消えて、真っ黒になった。先住猫の三毛のおばさんに嫌われつつも大きな図体になったモンタは、何かにつけおばさんの後を付いて回った。私が外出から帰ってくると、玄関の前でおばさん猫がまず私を迎え、その2mくらい後ろで大きなモンタがチョコンと座って、やはり私を出迎えた。
 ところがある時、モンタは後ろ足を骨折した。
病院で腿まで覆う大袈裟なギプスで固定されてしまった。逆に歩くこともままならなくなった彼はトイレで用を足せなくなってしまった。ソファにトイレシートを敷いて、「ここでオシッコしていいよ」と言うと、横たわったまま情けない顔で、丸一日ぶりに大量の尿を出したのだった。こんな切ない瞬間に心と心は通じ合うのだ。野性を失った飼い猫は飼い主にすべてを委ね、その意思を理解しようとじっと見つめてくる。飼い主もただひたすら瞳を見つめ、その奥にある心の中に思いを届けようとする。しかしその答が返ってきた時、哀れさが込み上げて涙が止まらない。すでに遅かった。尿路結石が出来てしまい、ギプスを外してトイレに行けるようにしてやっても、もう尿が出ないのだった。水が飲みたくて器の前に行っても飲むことができず、いつまでも水を見つめて座っていた。入院して手術をして一度は快方に向かったかに見えたが、体力の衰えていた彼は餌をもどし、それが気道に詰まって死んでしまった。病院から電話で呼び出され、彼の治療費と入院費を窓口で支払い、大きな目を見開いたままの彼をバスタオルに包んで抱いて帰った。そして泣いた。
 死に別れが辛いからもう猫は飼わない、と決めたはずなのに、黒い子猫が生まれたと友人から聞いた時、やはり見に行ってしまった。そして真っ黒の子と、黒に白いソックスを履いた子と、どちらかに決めきれずに結局二匹とも貰って来てしまった。ソックスを履いたメスの子は私のお気に入りで、真っ黒は娘のお気に入りの彼氏だ。しかし、この彼氏は実は私と浮気をしている。


闇の床に忍び寄る黒い魂
そこはわたしの
指 首すじ
そして 唇
かすかな息の気配を遣わして
黒い魂よ
もっと近くにおいで
左手のひとさし指から小指まで
そして戻りながら
指と指の間も
気持ちよい痛みをもらいながら
わたしは
あなたの小さな舌を想像する
なめらかな被毛の下の
弾力のある肉の層を
撫で 擦り
ゆっくりと揉みほぐしてあげよう
あなたは何も考えず
薄く目を開け
舌を動かしていればいい
今夜もまた熱帯夜
おいで
近くにもっと
この闇を分かち合おうよ
やがて
闇に溶けいる ふたつの魂
闇に溶けいる ふたつの魂
暑い夜も、寒い夜も三匹の猫と一緒に寝ます。
はぁ~っ。猫が好き。
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