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エンドレスリピート
作者:茶和
原風景はおそらく、こんな形で広がり出した。自分を知りたくて、こころのそこかしこをほじくっている。昭和30年代、写真を見ればまだ戦後の臭いがする。
「家に女はふたりはいらない。」祖母は母にこう言った。私が物心ついた時には 母は働きに出ていて家にはおらず、日中はいつも祖母とふたりで過ごした。たまに縁側越しに「ボロ屋」が来て古着を目方で買っていった。春先には花売りが来た。祖母はサイゼリアやデージーを買った。私はなぜかアザリヤが気に入って、一度だけねだって買ってもらったことがある。
 祖母は日だまりに座っていた。和服を縫っていたこともあったし、布団を打ち直していることもあった。私は、斜めに射し込む光の帯を身に受けた祖母を見ながら、八畳の和室の隅で独り遊びをした。気に入っていたのは、表にひらがな、裏にその文字で始まる物の絵が描いてある、正方形の木のブロックだった。ブロックの中から花の絵だけを選び出し、並べてお花畑や花壇を思い浮かべた。野菜の絵だけを選び出し、畑を作った。動物の絵だけを選び出し、草原やジャングルを想像した。積み重ねるとピラミッドやタワーや家が出来た。
 夏の暑い日には、近所の店でアイスキャンディを買ってくれた。祖母はあずき味で私はミルク味だった。食べている途中て来客があり、咄嗟に祖母は食べかけのアイスキャンディをそのままテーブルの上に置いて立って行ってしまった。直方体の固まりが徐々に丸みを帯びて、やがて真ん中の棒があらわになってゆく。トロトロとけてゆくアイスキャンディを私はじっと見ていた。
 近所に同じくらいの年頃の子どももいたのだが、その子らと遊ぶのはあまり喜ばれなかった。もっとも私は、そのような遊びには没頭できず、遊ぶ自分を少し離れた所から別の自分が見ているような、冷え冷えとした感覚をもてあましてしまうのだった。父か祖父が庭にブランコを作ってくれた。時々はひとりでそれに乗ったりした。
 お昼になると祖母は簡単な食事を作ってくれ、私は祖母とふたりで食べたのだろうが、ほとんど覚えていない。


深い水の底から 上を見たことがある
滅び失せることが
いつでも悲しいことではない と
濁流にもまれながら
わずかな明るさを感じ
うずまきながら沈む時
ふと
ほほえんでしまうのだ
そのように
厚く厚く重なった音の隙間から
思いついたように息をつぐ
ベースを拾い
リードギターにすがり
ドラムスに巻きつかれ
もまれ 沈んでゆく
どうなんでしょう。大人ばかりの中で、想像力を頼りに内省的に育ちました。ここまでなんとか生きています。
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