国土交通省は14日、東日本大震災の大津波被害を受けて、堤防整備だけで津波を防ぐこれまでの方針を転換し、高台への避難路や避難ビルを整備して津波に備える「多重防御」によるまちづくりを進める方針を決めた。土地利用・建築規制などの新法制定も検討しているという。
国交省などによると、従来の津波対策は、堤防などのハード整備に主眼が置かれていた。ところが、今回の大津波では岩手、宮城、福島3県の海岸堤防約300キロのうち6割超にあたる約190キロが全半壊し、河川でも東北と関東地方で国が管理する10水系計2115カ所の堤防などが決壊、崩落した。このため、大津波は「従来の堤防など『一つの線』では守りきれない」と判断。方針を転換し、津波が堤防を壊し、浸水した後の対策も含めたまちづくりを進めることにした。
具体的には、浸水の恐れがある区域を自治体が指定し、高台への避難路を整備することや避難ビルの建設など、十分な対策を講じないと住宅や商業施設を建てられないようにする土地利用・建築規制の新法制定を検討する。
国交省幹部は「大津波で第一線が突破されても、次で守るという考え方だ」と説明。別の幹部は「住宅は4階以上に居室を造る、水産加工場には避難ルートを必ず設けるなど、詳細な基準を設けたい」と話す。
また、盛り土構造の仙台東部道路が津波を食い止め、住民の避難場所としても役立った事例から、幹線道路や鉄道をかさ上げして堤防の役割を持たせることも検討する。
三井辨雄副国交相は14日会見し「地域ごとの特性を踏まえたハード、ソフト面の施策を組み合わせ、『多重防御』による津波防災まちづくりを推進する」と述べた。【樋岡徹也】
毎日新聞 2011年6月15日 東京朝刊