東北の農林水産業に大きなダメージを与えた東日本大震災と福島第1原発事故。逆風の中で福島産の農産物が健闘する一方、宮城県名物の養殖ホヤは、苦闘が続いている。
福島産の野菜は風評被害で市場での取引が落ち込んでいるが、インターネットの通信販売で売り上げを伸ばしている。4〜5月には「野菜を買って福島を応援したい」という人が目立ったが、最近は利用者の間で「おいしい」との評判が広まっているという。
キュウリ、トマト、シイタケ、サクランボ…。ネット上で福島産農作物などを扱う「里山ガーデンファーム」は、昨年1年間で約10万円にすぎなかった売り上げが4〜5月だけで約2000万円になったという。
JA全農福島が運営するネットショップも原発事故後、売り上げを伸ばしたサイトの一つ。昨年4〜5月に約73万円だった売り上げが、今年の同時期は約680万円に急増。人気はアスパラガスで、注文は37件から264件にはね上がった。
苦境が続くのは宮城県の養殖ホヤ。全国の水揚げの8割を占める名物だが、津波で養殖場はほぼ全滅し、船は沖合に流されたり、沈んだりしたまま回収できていない。幼生から育てて出荷まで3、4年。再出発を目指す人がいる一方、大震災を機に、養殖から手を引く業者は少なくない。後継者不足や高齢化が進んでいる上、昨年2月のチリ大地震の津波被害で設備投資した業者は、二重債務に陥る恐れもある。現金収入を得るまで少なくとも3年を要するため、持ちこたえられないという。