生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された開業医、堀内利信容疑者(55)に最初にドナー(臓器提供者)候補を紹介した指定暴力団住吉会系組員、滝野和久容疑者(50)が、後に新たなドナーを紹介した別の住吉会系組幹部に対し、「臓器売買を公にするぞ」などと圧力をかけていたことが関係者の話で分かった。警視庁組織犯罪対策4課は、滝野容疑者が堀内容疑者に口止め料を出させるために、堀内容疑者の背後にいる組幹部に揺さぶりをかけていたとみている。
堀内容疑者は当初、滝野容疑者に紹介された元暴力団組員、坂上文彦容疑者(50)から腎臓の提供を受けようとした。しかし、手術直前の昨年5月、滝野容疑者が報酬の上乗せを要求してトラブルに発展。別の住吉会系組幹部に仲裁を頼むとともに、新たにドナーの男性(21)の紹介を受け、同7月に宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で移植手術を受けたとされる。
関係者によると、仲裁の際、滝野容疑者と組幹部は「互いに堀内容疑者の件から手を引く」ことで合意したとされる。しかしその後、組幹部がドナーを紹介し移植手術が行われたことを知った滝野容疑者が「約束が違う」と激怒。「臓器売買が公になると医師を続けられなくなるぞ」などと堀内容疑者を脅して口止め料を要求するとともに、組幹部にも圧力をかけ始めたという。
今年1月には、組幹部側に手紙を送り、「一連の問題に蓋(ふた)をするなら、しかるべき形で終えんさせる」と警察への通報をにおわせる一方、「(堀内容疑者も)あなた(組幹部)の話なら聞くだろうし、出すもの出して解決すると思います」などと口止め料の支払いを拒んでいた堀内容疑者への説得を求めた。しかし、組幹部側は要求を黙殺し、滝野容疑者は口止め料を得られなかったという。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年6月29日 2時30分