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[28551] NARUTO 時を戻りし者達
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/25 20:26
【序章】

ゼェゼェ…

ハァハァ…

息も絶え絶えの音と共に悲鳴にも似た声が木霊する。

「主!主!!しっかりせい、なぜ妾のチャクラを、妖力を使わなんだ!?」

麗しい美女が血だらけの青年に縋りつき叫んでいる。その向こうに膝をつき肩で息をしている者がいるが美女はそんなものには目もくれず青年に自身のチャクラを送り込んでいる。

だが、青年の傷は一向に直らない。

「ハァハァ…玉藻…、もう…いい…どの道俺は助からん…」

青年は自分にチャクラを送ってくれる美女の手を握り返しながら答える。

玉藻と呼ばれた美女はその声に耳を傾けずにひたすら自分のチャクラを送り続ける。

「黙れ、妾の力を持ってすればこのくらいの傷、容易く治してみせる!!」

絶叫にも似た声を張り上げながらも次第にその目から涙があふれてくる。治せるはずの傷が治せないのである。送り込むチャクラを更に増やそうとした時

「無駄だ、その傷は我がつけたもの、如何な妖力甚大な九尾殿であってもその傷は治せぬ」

肩で息をしていた者が近づき青年と玉藻へと話しかける。

「主と主が護るあの里を襲っておいてよくもぬけぬけとモノが言えるな!!」

話しかけてきた者に対し殺気隠しもせずに言い放つ。が、青年へチャクラを送り続ける玉藻。

玉藻とてこの傷が治せないのではないかと思い始めているが、この青年を待っている者がいることを知っている玉藻は無駄だと頭の中では思い始めているにも関わらずチャクラを送る力を緩めることが出来ない。

それは玉藻自身も、この青年を待つ者の代表として青年の制止を振り払い共に戦ったから。青年と共に必ず戻ると皆に伝えてきたから。

「……我も先ほどの術でようやく正気に戻ったのだ、言い訳の仕様がない……」

「な…に…」

その言葉に放っていた殺気を弱めつつつぶやく玉藻。

「…やはり…な」

「主にはこの者が操られていたのが分かっていたのか?」

やはりとつぶやいた青年に問いただす玉藻。その間もチャクラを送る力を止めていない。

だが、その行為は死出の旅への時間を遅らせているだけであるということを、この場にいる者は感づき始めている。

「…考えてもみろ…、地獄の鬼がそう簡単に…現世に現れるはずがない…」

「ではなぜ妾の妖力を使わなんだ。妖力はまだしもチャクラまで…」

「…それは…」

「先の攻防で九尾殿を巻き込みたくなかったから、ではないのか」

青年の言葉を地獄の鬼と称された者が繋ぐ。

「…ッ、主!?今の話は真か!」

「・・・」

「そうなのじゃな…」

沈黙を肯定と受け取った玉藻はみるみる顔を赤めらせ

「このたわけ、妾を巻き込みたくなかったじゃと!妾は九尾ぞ!!主は妾の力を侮っておらぬか!?いくら妾を大泣きさせるからといって、そこ等の女子と一緒にするでない」

殺伐とした空気を一掃するとんでもない言葉が出たが、玉藻は気にせず自ら主と仰ぐ者を見据える。その目は…顔以上に真っ赤に染まっている。

「なんでこんなときにそんな話が出る!?」

青年の返答は妥当なのだがそんな正論、正気を失いかけている玉藻にとって火に油を注ぐようなものである。

「いやまて、話せば分かる!だから死に掛けてるものに対して術を放とうとするな」

血だらけで倒れていたにも拘らず、立ち上がり後ずさりを始める青年。その青年に対し印を組む玉藻。

「問答無用!火遁 狐火の術!!」

「本気で放つな~~~~!」

さっきまで死に掛けていた青年は助けようとしていた玉藻の十八番である狐火の術に追いかけられ走り回っていた。先ほどの殺伐とした雰囲気から一転、その光景を見ていた鬼は…

「なんなんだ、この二人は…我はこんな者達に助けられたのか…」

等と呟いていたとかいなかったとか。

--- 十分後 ---

「死に掛けておった癖によく動けたのう…主よ」

「…死に物狂いで動けば出来ないことは何もないと改めて思ったよ…」

「…(ギン)」

「すみませんでした。自分チョーシ乗ってました m(_ _)m 」

口と態度で怒ってはいても、自身がつけた傷をしっかり治している玉藻と土下座している青年。この場面だけ見るとこの青年が本当に死に掛けているのか疑問である。

「…すまんが話を戻してよいか…」

「ああ(ええ)」

咳払いをして自分の存在を思い出させる鬼と、すぐに真面目な顔となり返事をする青年と玉藻。どうやらこの下りは日常茶飯事なのだなと鬼は思いつつ言葉を繋ぐ。

「ともかく助けてもらった礼をしたいのだが…」

「主の傷を癒せぬのか」

鬼の言葉にすぐ反応した玉藻だが、

「残念だが不可能だ…普段であればその程度の傷、我の力をもって癒せるが…」

「なぜじゃ!なぜ癒せぬのじゃ!!」

尚も追いすがる玉藻だが

「それは俺の生命力が原因ではないのか」

九尾:玉藻の力をもってしても癒せぬ傷の原因を青年がつぶやく。

「分かっておったか・・・」

「まあな、最後の一撃は玉藻の力ではなく俺自身のチャクラを使ったからな…足りない分は無意識の内に自分の生命力で補ったんだろう」

こともなげに言い放つ青年に対し、

「…やはり主は大馬鹿者じゃ…」

「昔から馬鹿ばっかりしてきたのを見てたろ」

「…まあな、その度何度狐火で焼いてきたか…」

「…その話はもういいだろう」

何か思い出したのか頬を膨らませつつ赤くなる玉藻と脱力する青年。その目には涙が滲んでいるのは気のせいではないだろう。

「話の腰を折らんでもらえんか」

もう一度咳払いをしつつ鬼が話す。

「すまん(すまぬ)、続けてくれ」

「…その傷は癒せぬが傷を受ける前に戻すことは出来るぞ」

「なに!?」

「それは真か!?」

鬼の言葉に青年、玉藻は驚きつつ聞き返す。それもその筈、傷は癒せぬが傷つく前に戻せると言ったのだ。

「傷…つまり生命力は失ってしまえば戻すことは叶わぬ。だが、時を戻すことは可能だ。時を戻れば生命力を失う以前に戻れるからな」

こともなげにいう鬼であるが青年と玉藻は言葉を失っている。だっだら生命力だけを戻した方が楽なんじゃないのかという目を向けるが鬼は気にしない。

というよりそんなことをしたらこの話も進まないので、作者的にも鬼に賛同する。

「まあ、どこまで戻るか実際にやってみなければ分からんからこのまま死ぬよりはマシかもしれんが…どうする?」

「受けるに決まってる(おろう)」

時を戻るという意味を飲み込んだ二人は即答する。

(即答か。どこまで戻るか分からんと言っておるのに…)

と鬼が考えつつ言葉を繋ぐ。

「但し、この術を受けられるものは一人だけぞ。九尾殿は…」

つれて行けないと話そうとした鬼だが、

「それには及ばぬ。主よ」

「ああ。禁術 八卦封印式!!」

青年が叫ぶや否や玉藻の体が光に包まれそのまま青年の体、臍のあたりに集まり消えた。

「いったい何をした。九尾殿はどこへ」

突然いなくなった玉藻を探す鬼。そこへ

≪ここじゃ、主の体内じゃ≫

玉藻の声が聞こえ青年に視線を移す鬼。

「俺は玉藻の人柱力…要は入れ物だからな。本来、玉藻は俺の臍に封印しているんだが、ふとした事がきっかけで玉藻と話が出来た。そのときに玉藻と和解した後、修行してこの封印を解いたんだ。その後、玉藻と契約し口寄せの術で呼び出せるようになったんだが、まぁその話は置いとくとして、この状態なら俺が時を戻っても玉藻を置いていく事は無いだろう」

≪まぁ、実際にやってみなければ分からぬがな≫

「誰に何と言われようとも玉藻、お前だけは死んでも離さん!」

≪…主よ≫

自らの臍に手を当て真顔で殺し文句を言う青年と、青年の体内でその言葉に頬を真っ赤に染めているであろう玉藻を想像しつつ鬼は思った。

(…本当にこの男は…九尾殿をとても大切にされておるのだな。そして九尾殿もこの青年を慕っておる)

「では準備は良いな?」

「ああ」

≪良いぞ≫

鬼が青年へ手をかざし術式を口ずさむ。青年はおろか玉藻も何と言っているか分からないが鬼が片手を天にかざすと青年の体が光に包まれていく。そして青年の上空に穴が開き青年を包んだ光がその穴に吸い込まれていく。

「ではお別れだ。我を助けし者達よ、時を戻りし先で幸在らんことを祈る」

青年と玉藻はその言葉を最後に意識が無くなった。




「では、我も元いた場所へ戻るか…」

青年を包む光が穴に半分以上吸い込まれ、鬼がそう呟きつつ振り返ったときであった。

「「「ナルト!!」」」

背後から声がし鬼が振り返った先で、三つの影が青年を包む光に突っ込んでいた。

「何!?」

鬼が静止する間もなく三つの影も青年を包む光に包まれ穴に吸い込まれた。

(いつの間に…しかも何の躊躇無く飛び込むとは。もしや、九尾殿が言っていたあの青年の帰りを待つ者達か?)

鬼がそう考えている間に光を吸い込んだ穴が小さくなりやがて消えた。

(あの青年と九尾殿には一人と言っていたが、本当は何人でも一緒に連れて行けた。だが、そんなことを言ったら一緒に戻る者達を集めに戻る事は明白であったし、何より青年の命が持たなかったであろう)

そう鬼が思いながら地面に手をかざすと、かざした地面に穴が開く。

(この時代に生きる者達にとってあの青年がいないということは辛いだろうが・・・耐えてもらうほかあるまい。その原因をつくりし我が言うことではないかも知れぬが)

そう思うと鬼は、人の気配がする方向を見て

「青年が護りし里に幸在らんことを・・・」

そういい残し地面の穴へ入っていった。

そして地面の穴も消えこの場には破壊しつくされた大地だけが残った。




------------

初めまして。他のSSに感化され想像した作品です。

上記内容を見ていただければ分かる通り、登場人物の他に第三者(作者)からの意見及び突っ込み等があります。

また、シリアスと言うよりはパロディーに重心を傾けて話を展開していくと思いますので、見苦しい内容になるかもしれません。

それでも頑張って想像しながら(調べながら)コツコツ投稿できたらと思っています。

よろしくお願いします。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第1話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/26 11:01
【第1話 過去へ---青年と玉藻】

俺は…どうなったんだ…

(…ッ……よ…)

確か木の葉の里近辺に突如現れた禍々しい気配を感じて里全体に厳戒令を発し、その気配を確かめに行って…

(…よッ………せい!…)

そうだ…その場所にいた者と戦った…何とかその者の正気を取り戻せたが…最後の一撃を放つ際に自分の生命力を使って死に掛けて…

(…ええぃ、主よいい加減目を覚ませい!!)

ドゴッ!!

「ッ!?痛っってえなぁ、いきなり何すんだってばよッ!!」

≪…ようやく起きたか。主よ≫

「おかげで最悪な目覚めだってばよ。玉藻、もう少しやさしく起こしてくれってばよ!」

臍の辺りを擦りながら叫んでいる少年がむくりと上半身をあげる。

この部屋には少年一人しかいないはずなのにどこからともなく女の声がする。

≪どうあっても起きぬ主が悪い。…ところでそのしゃべり方はどうした。心なしか声も高い感じがするが≫

「…あれ、言われてみればそうだってばよ。このしゃべり方下忍時代の後半頃からやめたってのに」

そう言いながらふと自分の手を見やる。

「…え」

≪…な≫

「なんじゃこりゃ~~~」
≪なんじゃこりゃ~~~≫

少年と少年から玉藻と呼ばれた女の声が見事にハモる。

どうやら玉藻は少年と同じ物を見ているようである。それもその筈、玉藻は少年の臍に封印されている身なのだから。

ただ、封印されているにも関わらず声を出せるのは理由がある。

玉藻はこの木の葉の里を見守る九尾の一人であった。だが、自分の息子同然に可愛がっていた子狐を木の葉の里の忍びらしき者に殺され、悲しみのあまり自我を失った玉藻は木の葉の里を襲ったのだ。自らが見守るべき里の者達を…

その時里を護る為、自我を失った玉藻と戦った男女によって、ようやく自分を取り戻した玉藻だが、時既に遅く里に甚大な被害を出しまっていた。

玉藻は如何な償いも辞さないと自分を止めてくれた二人に対して申し出る。

その申し出を受けた二人は玉藻によって既に鬼籍に入りかけていたが、自分達には生まれたばかりの息子がいることを玉藻に話す。

なんと女のほうは産後にも関わらず夫である男を護る為、そして未来を生きる息子の為に戦っていたという。

その事実を知り驚愕する玉藻だが、さらにその夫婦は自分達の代わりに息子『うずまきナルト』を見守って欲しいと言ってきた。

二人の決意を受け取った玉藻は、生涯を賭けて二人の息子を護ると誓いを立てその息子の臍に封印されたのだ。

封印の際の影響で亡くなった者こそ木の葉の里四代目火影 波風ミナトとその妻 うずまきクシナであった。

四代目火影夫妻の命を賭けた封印により九尾を抑えることが出来た木の葉の里であったが、その九尾が封印されたナルトに対して里の者が行ったことは、殺意に満ちた行動であった。

九尾によって大切な者・家族等を奪われた者達により何度も殺されかけたナルトだが、三代目火影をはじめ九尾の起こした行動を知っている者達により護られつつ育った。

そしてナルトが三歳の誕生日の日の夜、ナルトの夢の中に九尾 玉藻が現れる。

「…お姉さん…誰?」

目の前に現れたきれいな女の人にナルトは声を掛けた。

「妾は玉藻。里の者達がなぜそなたにひどい仕打ちをするのか…知りたくはないか?」

「え…お姉さん、知ってるの!?教えて、どうしてみんな僕のことをいじめるの」

玉藻の問いに即答するナルト。ナルトはいじめと解釈しているだろうが、実際のところいじめという名の拷問である。それだけの仕打ちを受けても尚、ナルトの心が荒んでいない事に安堵すると同時にこれから話す内容がどれだけナルトの心を抉る結果になるか想像できず一瞬躊躇する玉藻。

だが、玉藻の心とは裏腹に目を輝かせて話を待つ少年を見て、玉藻は全てを話そうと改めて思い直す。

「全ての原因は妾のせいじゃ」

それから、玉藻は全てを話した。自分の正体を、自分が里の者達に何をしたのか、その結果ナルトの両親が死んだこと、死の間際自分にナルトを頼むと言われたことを…

「…そうだったんだ…」

話を聞き終えた少年は一言そう言った。

「…すまぬ…妾のせいでそなたの両親を奪ったばかりか、里の者達からひどい仕打ちを受けさせて…」

言いながら崩れ落ちた玉藻の目から涙が零れる。自分がしでかした愚かな行為を悔やみながら…

だが、少年が玉藻に近づきその涙を拭う。その手に気がつき顔を上げる玉藻に少年は

「別にお姉さんのせいじゃないよ。悪いのはお姉さんの子供に手を出した人間だもん。それに今まで一人だと思ったこともなかったし」

少年が何を言いたいのか分からない玉藻はその言葉の続きを促す。

「だって僕が傷ついて泣きそうになった時に誰かが優しく声を掛けてくれてたもん。今だからはっきり分かるけどその声、お姉さんにそっくりだったから」

その言葉にハッとする玉藻。確かに傷つき俯くナルトに自身のチャクラを与えて自然治癒力を大幅に向上させつつ声を掛けていたことがあったからだ。玉藻はその声がナルトへは届かぬと思っていたが、少年から声が聞こえていたと言われ驚いていた。

「父さん、母さんの変わりにずっと見守ってくれてたんでしょ。…ありがとう」

少年は玉藻に無邪気な笑顔を返す。

罵られるならまだしもお礼を言われ困惑する玉藻に、今まで見たことがないナルトの笑顔が玉藻に注がれる。

その笑顔を見た途端、心に矢が刺さるのを玉藻は感じた。

---九尾 玉藻がナルトに心を奪われた瞬間だった。---

「ナルト…そなたは妾が命を掛けて護る!それがミナト、そしてクシナの思いだから!!」

少年を抱きしめながら言葉を繋ぐ玉藻だが

「うん。でも僕もお姉さんを護れるような力が欲しい。お姉さんだけじゃない僕を助けてくれる火影のじぃちゃんや大切な人達を護れる力が欲しい!」

その言葉に玉藻は驚く。

(血は争えぬか…やはりあの二人の子供だな)

そう思いつつ玉藻は少年を見据え

「では妾が稽古をつけてやろう。里の者達に虐げ…いじめられておった分体力はあるじゃろうが、より強くなればいじめられても耐えられるじゃろうしな」

本当ならナルトがもっと成長してから修行をしたほうが良いのではと思っていた玉藻だが、ナルトの本心に触れどうせやるなら早いに越したことはないと思い直す。

「うん。お願いします、お姉さん」

ぺこっと頭を下げるナルトに玉藻は

「…お姉さんではなく玉藻と呼んでくりゃれ」

頬を膨らませながら言う玉藻。やや声が上ずっているのは気のせいであろう。

「え…でも…」

「呼んでくりゃれ」

言いよどむ少年にダメ押しの一言を放つ玉藻。しかもやや上目遣いに。一応記すが相手は三歳になったばかりの少年である。

「…うん、分かった。玉藻、これからよろしくね」

先程と同じ笑顔で答えるナルト。

「………ハッ!うむ。こちらこそよろしくな」

その笑顔に頬を染めつつ眺めていた玉藻は、だがすぐにもとの威厳を取り戻して答える。が、…やはりその声は上ずっていた。

…九尾をも落とすナルトの笑顔、恐るべしである…


この日を境に少年の力は爆発的に上昇し、若干五歳にして三代目火影直属の「暗殺戦術特殊部隊」通称 暗部として活躍を始めることになる。もちろん玉藻もナルトと共に暗部として活躍している。

封印されているはずの玉藻が暗部としてナルトと共に行動できるその理由は、暗部として活躍する少し前、封印を解き玉藻を口寄せの術で呼び出せるようになったからである。

その日を境に玉藻はナルトの事を「主」と呼ぶようになる。一方のナルトは初めは嫌がっていたが玉藻が「主」としか自分のことを言わなくなったので渋々了解したようである。

≪なにやらある事ない事書かれておるような気がしないでもないが≫

「実際ほとんど変わってないってばよ」

どうやら思考停止していた二人が戻ってきたようである。

「とにかくまずは状況把握をしないと」

≪そうじゃな≫

「でもその前に…」

≪…じゃな≫

周囲に人がいないことを確認した二人は

「あの鬼どこまで時を戻すんだ!!」
≪今度見かけたら問答無用で焼き尽くしてくれようぞ≫

「覚悟しとけ!」
≪覚悟せい!!≫

どす黒い殺気を隠しもせずに言い放つ二人…確か鬼はどこまで戻るか分からないと言っていたのに…

そんなことはすっかり忘れている二人である。なんだかんだで似たもの同士である。

言いたいことを言ってすっきりしたのかあたりを見渡すナルト。どうやらここは少年時代過ごしていたボロアパートのようだ。

次に体の調子を確認するナルト。流石に身体能力は当時のままだがチャクラは青年の時と変わらないことが分かった。(身体能力が当時のままといっても上忍以上に動けるが)

さらに、覚えていた術もそのまま知識として残っているが口寄せの術で呼び出せるのは玉藻だけのようだ。

≪当時契約しておったのは妾だけであったしな≫

「そういう玉藻はチャクラとかはどうなんだってばよ」

≪…聞いて驚け、何と当時の二倍じゃ≫

「…は…」

≪冗談ではないぞ、どうやら時を戻った際にこの時代の妾と同化した様じゃな≫

「つまり玉藻二人分の力をもってるってこと?」

≪そのようじゃな。まぁ、心配せずとも主との修行でチャクラ・妖力を抑える方法は覚えたから大丈夫じゃろう≫

とんでもないことを聞いたナルトだが、ふとカレンダーを見て

「って今日ヒナタがミズキの野郎に誘拐される日だってばよ!?」

≪何!?…そうじゃな確かにこの日じゃったな≫

「もし、本当に時を戻ったんなら、これから起こる事は全て経験している事柄が起こるはず…」

ピー

言うや否や暗部を呼び出す笛の音が響く。

「こうししゃいられないってばよ!口寄せの術!!」

素早く印を結び玉藻を呼び出す。白煙の中から麗しい女性が現れた。この女性が人の姿を取ったときの玉藻である。

「さて、可愛い姫を助けに行くってばよ」

「…任務が終わったら覚えておれよ…」

「…いやだなぁ玉藻、ヒナタのことは同意済みだろ…」

「……」

そっぽ向いているが、玉藻が盛大に頬を膨らませていることが想像できたナルトは

「分かったから、拗ねるなってばよ」

「…別に拗ねておらぬ…」

「またまた…」

「…今すぐ燃やされたいか…(ギロ)」

「すみませんでした。自分チョーシ乗ってました m(_ _)m 」

どこかで同じようなことをしていたような…夫婦漫才はいいから早く任務に行ってあげて。

「夫婦漫才ではない!!」

という玉藻だが声が上ずっている。夫婦と呼ばれて満更でもないようだ。

…ナルトのことが好きなのがバレバレである。母親代わりとしてなのか、それとも異性としてなのか。恐らく後者だろう。

「じゃ、行くかな」

玉藻の言葉をスルーしつつ、印を組み瞬身の術を発動させその場からいなくなるナルト。その顔には狐の面があった。

「あ、コラ待たぬか!」

玉藻も印を結び瞬身の術でナルトの後を追う。

二人が向かう先は三代目火影の執務室だ。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第2話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/25 22:16
【第2話 過去へ---影使い】

俺は…どうなったんだ…

(…ッ……よ…)

確か木の葉の里近辺に突如現れた禍々しい気配を感じたあいつが里全体に厳戒令を発して、その気配を確かめに行って…

(…よッ………せよ!…)

そうだ…あいつと玉藻さんが一つになって光に包まれて…

(…ええぃ、いい加減目を覚ませ!!)

ドゴッ!!

「ッ!?痛っってえなぁ、いきなり何すんだっ!!」

利き腕である右手に鈍痛を感じながら目を覚ます。

≪ふん。とんでもないことが起きたというのに寝ているシカマル殿が悪い≫

≪そうよ。もう少し起きるのが遅かったら私がシバキ倒してたわよ≫

「起こすのにシバキ倒してどうすんだ」

この部屋にいるのは一人なのだが、三種類の声が聞こえる。

「ったく、めんどくせぇな」

この声の主がこの部屋の主のようだ。

この者の名は 奈良 シカマル。

木の葉の里『影縛りの術』を伝える奈良家の嫡男である。因みに本人の口癖は上記のとおり「めんどくさい」である。

しかし、IQ 200という軍略の天才で本気になったシカマルを相手取れるものはごくわずかである。

≪ずいぶんとのんきだな、とんでもないことが起きたと先ほど言った筈だが≫

「ああ、なんとなく分かっちゃいるんだが頭ん中整理しれねぇ」

≪さすがのシカマルもこんな状況想像すら出来ないでしょう。私達も驚いてるんだから≫

どうやら残り二つの声はシカマルの手から聞こえるようである。正確には手に記されている印から。

男のような声の主は 霊獣「黒金(くろがね)」、シカマルにとっては状況を理解する上でこの上ない相談役であり戦闘においても頼りになる黒い狼である。もちろん人の姿にもなれる。

対する女のような声の主は 霊獣「白金(しろがね)」、黒金と共に木の葉の里近辺に住まう白き狼である。こちらも人の姿になれる。ただ、性格が一途でシカマルを見かけた瞬間恋に落ちたといい、シカマルの目の前で狼の姿から人の姿へ変わり迫っていたところを見かけた黒金が激怒、シカマルに戦いを仕掛けてきた。

白金を慕う黒金にとってシカマルは何処の馬の骨か分からん存在、しかも人間である。自分より弱いやつに白金を任せられぬと一方的に突っ込んできた黒金を、自身の影業と忍具と知恵を総動員し、どうにか押さえ込んだ。

そのシカマルの実力を見て二人して口寄せの契約をしたという経緯がある。

二人との契約を果たし、本人の実力も相成って木の葉の里随一の忍びとして狐の面をした暗部の背中を任される存在となる。

その背中を任せる者が突如光に包まれて消えそうになっているのだ。飛び出さないわけがない。一緒に偵察に来ていた他の二人と共に光に突っ込んで、その後意識を失って現在の状況至る。

「んじゃ、原因はあいつ等と戦っていた奴ってわけだ」

≪だろうな、シカマル殿の姿が幼くなっているからここは過去の世界なのだろう≫

≪…私はシカマルの今の姿のほうが可愛らしくて好きだなぁ…あぁもちろん青年のシカマルもかっこよくて好きよ≫

「…そいつはどうも…」

冷静に分析するシカマルと黒金に茶々を入れる白金。顔をやや朱に染めつつもしっかり答えてるあたりシカマルも満更ではないようであるが、某少年と九尾のように暴走しないあたり流石IQ 200の男は違う。

≪…もうちょっといいようが無いの?折角ほめてるのに≫

…どうやらここに暴走しそうな気配があるが…

≪ところで今日は何か起こるのでは?先ほど暗部を集結させる音色が聞こえたが≫

さらりと無視した黒金。白金と長い間やり取りしていた黒金は白金の扱いを心得ているのだ。

そのとばっちりを後々受けるのはシカマルなのだが状況が状況なので心のうちで黒金に感謝しつつ

「あぁ、聞こえてる。確か今日はミズキっていう駄目中忍がヒナタを攫ってナルトにお仕置きされる日だったな…ん、ナルト…そうだ!ナルトだ」

≪どうしたシカマル殿≫

≪あの子がどうしたの≫

いきなり大声を出したシカマルに黒金、白金の順に問う。

「ナルトはこの時代じゃ三代目直属の暗部として働いてる。あいつに聞けば今の現状がもっと分かるかもしれない」

≪なるほど、一理あるわ。流石シカマルね≫

ナルトのことは上忍であるシカマルの父 奈良家当主 奈良シカクを介して知っており、父は裏からナルトを、表 主にアカデミー内ではシカマルがナルトの相棒兼相談役として支えている。

もっとも、暗部として活躍を始めたナルトの傍には玉藻がいるので、玉藻が暗部として他の任務についている時等、ナルトの傍に居れない時以外は結構暇だと言っていた。

「それに、他の二人もナルトを目指して動いている可能性もある。こうしちゃいられねぇ。俺らも急ぐぞ」

≪気をつけて、シカマル殿のチャクラはこちらに来る前と変わらないようですが、体力は当時のままのようです。以前と同じように飛ばしすぎるとすぐバテますぞ≫

「あぁ、ありがとよ黒金」

≪礼には及びません≫

さらりとだが的確に情報をもたらしてくれる黒金に礼をしつつ印を結び瞬身の術を発動させるシカマル。

目指す先はナルトとミズキが戦うであろう森だ。

≪私には何もないの~~~。・・・でも放置されるのも結構好きかも…≫

あえて誰も突っ込まないので悪しからず。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第3話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/26 20:18
【第3話 過去へ---狐を思う少女】

私は…どうなったの…

(…ッ……よ…)

確か木の葉の里近辺に突如現れた禍々しい気配を感じたあいつが里全体に厳戒令を発して、その気配を確かめに行って…

(…よッ………せよ!…)

そうだ…あいつと玉藻さんが一つになって光に包まれて…

(…もう、いい加減目を覚ませ!!)

ドゴッ!!

「ッ!?痛っったい、いきなり何すんのっ!!」

利き腕である右手を擦りながら起きる少女。

≪いつまでもまどろんでいるからじゃ、このたわけが!≫

「もうちょっと起こし方考えてよ」

この部屋には少女一人だけしかいないはずだが、二つの声が聞こえる。

≪姉様のように臍をどついて起こして欲しいの?≫

「…それはごめんだわ…」

(あいつから聞いた話だけど結構痛いらしいし…あいつ?)

「あ~~~~ッ!ナルト!!玉尾さん、ナルトと玉藻さんの気配分かります!?」

(忘れてた。ナルトと玉藻さんが一つになった瞬間光に包まれるのを見て他の二人と飛び出したんだ)

この少女の名は 山中いの。

木の葉の里の『身転身・身乱心の術』を伝える山中家の一人娘である。因みに忍者育成アカデミーにてNo.1くの一と称された才女である。

そのアカデミー時代に偶然にも暗部として活躍していたナルトを見かけ、詰め寄った結果ナルトの生い立ちを知り、ナルトを支えたい・共に在りたいという恋心にも似た思いをバネに修行した結果、共に正体を知るシカマル等と共に狐の面をした暗部の背中を護る一人にまで実力をつけた。

その護るべき者がいなくなると思った時には玉尾の静止を聞かずに光へ突っ込みその結果が現在の状況である。

≪…ナルトと姉様の気配が動いているわ。いの、今日は何が起きたの≫

この声の主は玉尾。正体は玉藻と同じく九尾の狐である。玉藻とは双子の妹でありナルトの正体を知ったいのに対し、他の里の者と同じような偏見を持たず尚且つナルトに好意を寄せ接してくれる事をうれしく思った玉藻が、自分の妹である玉尾と契約をしないかと持ちかけたのが二人の出会いである。

玉尾とて玉藻がどうして木の葉の里を襲ったのか知っていたし、妹としてこの里に何か出来ないか悩んでいた矢先に玉藻からの契約の話を聞き、詳しく聞かずにいのと口寄せの契約を結んだ。

もともと誰とも気兼ねなく話せるいのとは、一時もしないうちに仲良しとなり、修行の合間に里内で姿を目撃されているとか。

因みに玉藻と比べて話し方がやや砕けているのは、いのと気兼ねなく話していたからである。

「今日?どうしてそんな事を聞くの?」

≪自分の体を見てみよ。幼くなっているぞ≫

「え?な…うそでしょ!?」

玉尾に指摘されやっと現状を把握したいの。

≪…どうやらナルトと姉様が戦っていた者の術か何かで時を戻されたようじゃな≫

「ってことは、過去に戻ったてこと!?だからさっき玉尾さん、今日は何があったって聞いたんだ」

ようやく玉尾の言わんとすることを理解したいの。

≪そのとおりじゃ。わたしがいのと契約したのはまだ先のこと。そっくり過去に戻ったのなら、まだわたしと契約していないからここにわたしが居ないはずなんだけど…とりあえずそのことは置いといて、今日は何があったの≫

「今日は確か…そうだ、ヒナタがミズキって言う馬鹿に攫われちゃってナルトが助けたのよ。その時に初めてナルトが暗部として活躍しているのを知ったんだし」

≪では、急いで向かったほうが良いな。ナルトと姉様とは別の強い力が動いているぞ≫

「別の強い力?もし、私達と同じ状況になっているとして動くとしたら…シカマルね」

≪うむ。彼のもので間違いなかろう。いの、急いで支度をせねば≫

「ええ、でもパパに見つからないようにしないと…」

≪…わたしも居るから平気だと思うけど。でも、もしバレたら大変ね…ナルトが≫

山中家当主 山中いのいち 木の葉の里上忍。一人娘に手を出す輩には制裁を加える事に何の躊躇もない親バカ。但し、ナルトのことは父親であり同僚でもあった波風ミナトの忘れ形見なので、娘と一緒になってくれれば良いなと思っている。

周りに細心の注意を払いながら、すぐ支度に取り掛かるいのだが…

「…やっぱもう少しおめかしした方が…」

≪良いからはよ向かわぬか!≫

「ナルトに会うのよ!それに、この時代じゃヒナタのあの体型に敵わないし…」

≪…あの小娘、昔からあんな体型をしてたのか…≫

「そうよ!どうすればそうなるのか聞きまくったんだから!!」

結局支度を終え、瞬身の術を使って移動したのはナルトとミズキが会う10分前であった。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第4話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/25 22:41
【第5話 過去へ---柔拳使い】

あれ…私…どうなったんだっけ…

(…ッ……さん…)

確か木の葉の里近辺に突如現れた禍々しい気配を感じたあの人が里全体に厳戒令を発して、その気配を確かめに行って…

(…さんッ………きて!…)

そうだ…あの人と玉藻さんが一つになって光に包まれて…

(…もぉ…いい加減起きてよ~)

フゥ~

「ひゃッ!?、何!?」

いきなり耳元に息を吹きかけられた少女は、耳を押さえながら文字通り飛び起きる。

≪ふぅ。ヒナちゃんやっと起きた~~≫

「あ、瑠璃ちゃんおはよ~」

この部屋の主であろう少女が目の前にいる…実際には目の前で浮いている者に対して挨拶を交わしている。

≪うん。おはよ~~≫

浮いている者も少女に対して笑顔で挨拶を交わす。

この少女の名は 日向 ヒナタ。

木の葉の里において自他共に認める最強の戦闘力と血継限界『白眼』を伝える日向家の跡取り娘である。ただ、人見知りが激しく心を開いた者以外に対してうまく話しをすることが出来きずどもってしまう。

が、一度心を開くと今までのおどおどした態度から一転、自分の思ったことをはっきりと主張するようになる。…まあその矛先は主に自分の想いの相手に関わる者達なのだが…

≪ヒナちゃん、なんだかものすごく恥ずかしいこと暴露されてるよ~≫

「うん。でも、ホントのことだから気にしないよ。みんなと言い合ったりするの楽しいし」

≪でも、言い合いから流血沙汰になる事の方が多いよ~≫

「…まぁ、否定は出来ないかな…」

二人共、のほほんと話してはいるが、話している内容が洒落になっていない…

≪でも、ヒナちゃんと私で治せるしね≫

ヒナタの周りを飛びながら話すこの者、先程から名が出ているが瑠璃という。

初めて見た瞬間から好きになった者=ナルトを遠くから見ていたヒナタは、里のみんながナルトの事を明らかな敵意・憎悪を持って見ていることに気がつき、ある時勇気を出してナルトに直接聞いてみた。

初めはとぼけていたナルトだが、ヒナタの真剣な眼とテコでも動かない意志を感じ自分のこと、両親のこと、そして自分の中にいる玉藻のことを話す。

ナルトから話された内容に衝撃を受けるヒナタ。

自分の父からもナルト君と仲良くしてやってくれと言われていたことを思い出したヒナタは、今までナルトと接していなかった分を取り戻すかのように、ナルトと共に行動することが多くなった。

ヒナタの突然の行動に周りの者は疑問の顔を浮かべるが、日向家の長でもある父から了承済みであるということが知られてからは、ナルトとヒナタが共に行動する事に意見する者は少なかった。

もちろん、自分の父が何を了承しているかヒナタとナルトは知る由もなかった。

…が、その了承している内容を知り、且つナルトへ好意を抱いている者達との間で一悶着があり、そのお陰で父の思いを知ったヒナタはそれまで以上にナルトと共に行動するようになる。

因みに日向家当主 日向 ヒアシも某少女の父親と同じく娘であるヒナタを溺愛しており、ナルトと恋仲になればと上記のような了承をしていた。そのことで、某父親と口論の末、本気のケンカに発展したとかいないとか…

その口論の原因となったと思われるナルトや、ナルトの事情を知る者達との修行中にヒナタ達は偶然瑠璃と出会う。

木の葉の里の近くにある大木から生まれたという瑠璃は、何かの気配を感じて好奇心から生まれた大木から離れてヒナタ達が修行している方へ飛んできたという。

修行を見ていた玉藻から、瑠璃が妖精と呼ばれる存在だと説明を受けていたヒナタだが、どうしても瑠璃から目が放せないでいた。

その瑠璃も他の者達には目もくれずヒナタの事を見ていた。

二人の様子を説明しながら見ていた玉藻は二人に契約をしないか持ちかけたのだ。

突然の事で戸惑う二人だが玉藻は

「二人を観察しておったら、ヒナタと瑠璃のチャクラの質が似ておる。波長が合っておるとも言えるのじゃろうが、どうやら瑠璃はヒナタに惹かれてこの場に来たようじゃな」

と続けた。

二人とも思い当たる感覚があったようで、少し考えた後お互いを見て

「≪契約しよ≫」

と同時に言っていた。

玉藻はもとよりこの場にいた者達が一斉に笑い、その後二人は契約を交わした。

一応、口寄せの術で呼び出したり引っ込めたりする事は出来るが、玉藻のような妖魔や他の霊獣と違い、体が小さく一緒に行動していても気づかれにくいのと、修行の成果でナルトの次にチャクラの総量が高くなったヒナタの力もあり常に一緒に行動するようになったヒナタと瑠璃。

お互いを「ヒナちゃん」「瑠璃ちゃん」とすぐに呼び合っていた。

また、瑠璃は戦闘を行う力はないが、自身のチャクラを相手に与える事で傷を治す事が出来ると言い、先程修行していて傷ついていたヒナタ達にチャクラを与えて怪我を治して見せた。

今まで修行等で怪我をした際、ヒナタが「白眼」を用い点穴と呼ばれるチャクラ穴を突き、チャクラを流す事で治癒力を向上させていたので、治療用にある程度のチャクラを残さなければならない分ヒナタは思った以上の修行が出来ないでいたのだ。

瑠璃が自分と同じ事が出来ると知りヒナタは

「これからは目一杯修行に打ち込めるよ、私と契約してくれてありがとう瑠璃ちゃん」

と瑠璃に笑顔で言い、

≪瑠璃もヒナちゃんの役に立ててうれしい。これからよろしくね≫

とヒナタに笑顔で返す。

その様子をナルト達は微笑ましく見ていた。

「でも一体どうなったんだろう。たしか、シカマルさんといのと二人でナルトと玉藻さんが戦っている所へ偵察に行って…」

≪その後血だらけのナルトさんと玉藻さんが一つになって光に包まれて、空に開いた穴に吸い込まれそうになったからヒナちゃん血相変えて突っ込んでたもんね。追いかけるのに苦労したよ≫

「ナルトがいなくなると思ったら体が勝手に動いちゃって…心配かけてごめんね」

≪謝らなくても良いよ~、ヒナちゃんの性格分かってるし。でもその服って…≫

「うん。アカデミー時代に着てた服。と言う事はここって過去!?」

≪うーん。瑠璃その頃のヒナちゃんよく知らないよ~≫

それもその筈、ヒナタと瑠璃が契約したのはアカデミーの卒業式を間近に控えた日だったのだ。

「そうなんだよね。かといって父様やネジ兄さんに話しても信じてもらえないだろうし、ハナビとはこの頃あまり話す機会がないのよね」

今更ながら自分のいた境遇にげんなりする。

(もっと活発に話していればハナビぐらいには信じてもらえたのかな)

因みに、ハナビとはヒナタの妹で、ネジ兄さんとは父 ヒアシの双子の弟である日向ヒザシの息子の事で血は繋がっていないが兄妹のように育っていた。

≪ってここって何処だっけ?≫

「えっ?」

どうやらいろいろと考えながら歩いていたようで、日向家の屋敷を出ているにも気づかず歩き回っていたらしい。

「えっと…あぁ、家とアカデミーとの間の森だよ」

≪あっ、そうか。あの時と森の様子が違うから分からなかったよ…っ!?ヒナちゃん!>

手を叩いた瑠璃が唐突に叫ぶ。

「…瑠璃ちゃんも気づいた?」

≪うん。ヒナちゃんと一緒にいたもん。気配の感じ方はヒナちゃんにも負けないよ≫

長い間ヒナタと一緒に過ごしてきた瑠璃は、ヒナタの持つ「白眼」には敵わないまでもかなり広範囲まで気配を感じる事が出来るようになっていた。

「真っ直ぐこの場所を目指してる。狙いは私かな?」

≪…そうかもね。ヒナちゃんこの場所で何か思い出せる事ない?もしこの世界が過去だとしたらこの後何が起こるかヒナちゃん知ってるでしょ≫

さすが、妖精の名は伊達ではなく、現在の状況を正確に把握しようとしている。

「うん。私が攫われるの」

≪え~~~~!!≫

「瑠璃ちゃん、声大きい!」

どこからそんな声が出るのか、耳を押さえながらヒナタは瑠璃を注意する。

≪ごめんごめん。でも、攫われるって?≫

「アカデミーのミズキっていう先生が、私ごと白眼を他の里へ売ろうとするの。でも…」

≪でも?≫

「ナルトが私を助けてくれるの。」

手を頬に当て体をもじもじしながら答えるヒナタ。傍から見たら痛い人だ…

「でも、当時はナルトが暗部で働いてるの知らなかったから、助けてもらったって知ったのは瑠璃ちゃんと契約する少し前だけど」

しかし、すぐに元の緊迫した顔に戻るヒナタ。…多重人格でないかと思えるほどの変わりようである。

≪そうなんだ≫

対する瑠璃もヒナタの変わりように突っ込まずに答える。…瑠璃も馴れたようだ。

≪じゃあ、このままつかまればこの時代のナルトさんと玉藻さんに会えるね≫

「あっそうだよ。瑠璃ちゃん頭いい~」

≪えへへ、もっと褒めて褒めて≫

…緊迫した状況が台無しである…

≪一応、体調とか確認しとかないと。いざって時に動けないと困るよ~≫

さらりと状況把握をするように話を進めた瑠璃。やはり、妖精の名は伊達ではないようである。

「そうだね、えっと…身体能力は当時のままだけど、チャクラはこっちに来る前と同じみたい」

≪じゃあ、白馬の王子様が助けに来るまで待ってよ≫

「もぉ、瑠璃ちゃんてばぁ」

茶々を入れる瑠璃と満更でもない顔のヒナタ。この状況を見たらミズキはどう思うだろう。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第5話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/25 23:26
【第5話 集いし者達】

森の中を駆ける影が月明かりに照らされて見える。

よく見なければすぐ見失うような速さで先を急ぐ影は二つ。

片方の影は紺のマントを羽織っている。

もう片方の影は黒いマントを羽織り面をつけている。その面は狐。

「もうそろそろじゃな。黄弧、あやつは任せる。妾は周りを警戒する」

「ああ。頼む」

紺のマントを羽織った者が跳躍し闇に消え、その場には黄弧と呼ばれた者だけが残った。

「さて、どうしてくれようか…」




『火影執務室』

コンコン

「おぉ、開いておるぞ」

声を確認し、部屋に入る二人。

「急に呼び出してすまなんだ」

部屋の主である者から労いの言葉を聞きつつ次の言葉を待つ二人。

火影執務室の主であるその者の名を猿飛…現火影その三代目である。

「今日呼び出したのは他でもない。どうやらアカデミーの教師がそのアカデミーの生徒を攫い逃走しておる様なのじゃ。その教師の名をミズキという。ナルトお前なら知っておろう」

「あぁ。アカデミー内ではイルカ先生以外で声をかけてくる先生の一人だからな」

淡々と答えるナルトと呼ばれた狐の面をした人物。その立ち振る舞いは先程と同じ少年とは思えない。

「攫われた生徒の名はヒナタ。日向家の跡取り…と言わなくとも二人は知っておるか」

三代目に言われ首を縦に振る二人。

「では、妾達の任務はその者の救助及び下手人の束縛又は討伐…という事でよろしいでしょうか」

面をしていない者が告げる。その者には人には無いはずの狐耳がある。

「そのとおりじゃ、玉藻殿。ミズキ一人であれば他の暗部でも構わんのだが、手際が良過ぎるのでな、もしかしたら手を貸している者がいるやも知れぬ。二人には申し訳ないが…」

「皆まで言わなくていい。この里の現状を見れば迅速に行動でき、且つあらゆる状況に対応できる者で処理したほうが効率がいい」

先の戦いで木の葉の里の力は格段に低下している事を知るナルトは、三代目の言葉を押さえる。その言葉を聞く玉藻は心なしか苦渋の顔をしている。

「すまぬ。では向かってくれ」

「「は!!」」

そういい残し部屋を後にするナルトと玉藻。

部屋に残った三代目は腰掛にもたれつつ

「孫同然の者に諭されるとはな…」

と言い、ため息を吐いていた。

だが、二人の様子を思い出し、少し考える素振りを見せたが

「…まぁ、気のせいじゃろう」

頭を振り目の前に広げている報告書の処理を行いはじめた。




所変わって先程の森。

「ここまで来れば早々追い付けまい」

そういい、速度を落として動く男。その腕には少女を抱えている。そこへ

「あれ、ミズキ先生こんなところでどうしたんだってばよ」

いきなり話しかけられ一瞬戸惑うが、声の主がアカデミーのドベであることに気がついた男…ミズキは

「いや、ナルトこそこんな時間に何してるんだ」

とアカデミー内と同じ口調で声をかけられた方に答える。

案の定、そこに居たのはアカデミー至上最低な忍びであるナルトであった。

「俺ってばここで修行してたんだってばよ。もう少しでみんなをあっと言わせる術が出来そうなんだってばよ」

ナルトの言葉を聞きながら近づくミズキ。少女を抱えていない方の手にはクナイが握られている。

「へえー、感心だな」

更に近づくミズキ。

「だが、残念だな。そのお披露目は出来そうにない」

「?なに言ってるんだってばよ。それに、先生が抱えてるのって…」

ナルトが腕に抱える少女に気づきミズキから目線を離した瞬間

「お前はここで死ぬんだからな!」

持っていたクナイをナルトの心臓めがけ突き刺す。

「なっ…」

そのままうつぶせに倒れるナルト。周りには血が流れている。

「フン。こいつ一人居なくなっても気づかんだろうし、さっさとこれを雲隠れのやつらに渡して換金しないとな…」

「…お前の取引相手は雲隠れの忍びか」

「っ…」

いきなり声をかけられナルトが倒れている場所を見る。しかし、ナルトは倒れたままである。

では、一体何処から声がしたのかと辺りを見渡すミズキ。

「俺を探しているのか?」

背後から声をかけられ咄嗟に前方に飛び間合いをあけ、振り返えるミズキ。その眼に映ったのは

「ナ…ナルト!?お前は死んだはず」

「そいつの事か」

先程心臓を刺したはずのナルトが立っており、そのナルトが指差したほうにもナルトが倒れている。だが、

ボンッ

白煙に包まれ倒れていたナルトが消えたのを見たミズキは

「これは…影分身!?だが、それは禁術のはず」

「なに、俺にとっては朝飯前だ。まあ、未熟者が使えばたちまち死ぬだろうが」

影分身の術は強い打撃・損傷を受けると消えるが、チャクラの量を上げればある程度耐える事ができる。

チャクラの量が多いナルトが使えば、影分身に死んだフリをさせる事は造作もない事である。

その言葉を聞き、もう一度ナルトの方を見たミズキの顔が驚愕に染まる。

目の前に立っていた筈のナルトの代わりに、黒のマントを羽織った者が立っていた。その顔には狐の面をつけていた。

狐の面をしている暗部は現在一人だけ。その暗部が三代目火影直属であることを、里の中忍として生活していたミズキは思い出していた。

「まさかお前が暗部だったとはな」

「それはこっちの台詞だ。雲隠れのスパイってところか?ただの使い捨てのようだが」

「…言ってくれるじゃねーか、化け狐が!」

ミズキがナルトに向かってクナイを放つ。が、最小限の動きで避け、ナルトが反撃を行おうと身構えたときに

「おっと、動くなよ。こっちには人質がいるんだ」

クナイを抱えている者に向けて威嚇するミズキ。

「…何処に人質がいるって」

「何言ってんだ、ここに抱えているだろうが…」

「もしかして俺の隣に寝ているこの子の事か」

と言いつつ、指で示した先に寝ている少女。慌てて腕を見るとそこには大木しかなかった。

「変わり身の術!?いつの間に」

「お前が俺の影分身にクナイを刺した時だ。あぁ、気にするな。中忍程度のお前には見えなくても恥ではない」

「~~~ッ!このガキが…」

度重なる挑発に耐え切れず突っ込んでこようとするミズキだが、

「もういい。黙れ」

一瞬で間合いを詰めたナルトがミズキの鳩尾に強烈な掌底を当てた。

「がはっ」

盛大に血を吐きながらその場に崩れ落ちるミズキ。

「…力は抑えたつもりだが、やはり柔拳は扱いが難しいな」

ことも無く言い放ちミズキを見るナルト。動けないと思うが、一応手を縛っておこうと近づいたが、この場に近づいてくる気配に気づき動きを止める。

その後すぐに現れた暗部が

「ご苦労様です。後はこちらで引き継ぎます」

と言いミズキを背負う。

「頼む。どうやら雲隠れが絡んでいるらしい」

「分かりました。では」

そういい残しミズキを背負った暗部達は消えた。

残されたナルトは辺りを見渡しながら

「さてと、お前等いい加減出てきたらどうだ」

と声をかける。

「あらら、やっぱばれてたか」

≪さすが、ナルト殿≫

≪でも、シカマルもうまく気配消してたわよ≫

ナルトの左手から少年 奈良シカマル・黒金・白金の声が

「まぁ、ナルト相手にかくれんぼが通用するとは思ってないし」

≪しかし、いのもうまくかくれていたが≫

ナルトの右手から少女 山中いの・玉尾の声が

「安心せい、主と妾以外じゃまず分かぬ」

二人を慰めつつ、ナルトの後方から女性 玉藻の声が

「後はっと、ヒ~ナ~タ~、いつまで寝た振りしてんだ~」

「痛い痛い!ナルトやめてよ~」

寝ている少女のこめかみに拳でグリグリ…

「ったく。何してんだか」

「自分は寝た振りして運んでもらったんだからそれくらいは当然でしょ」

「そのとおり、ってわけでもう少しグリグリと」

「痛い痛い!もぉ~二人とも見てないで助けてよ~~」

≪ヒナちゃん、怪我したら瑠璃が治してあげる≫

「…主よ、いい加減に止めたらどうじゃ。話が進まぬ」

上からシカマル・いの・ナルト・瑠璃(ヒナタの服の中に隠れていた)・玉藻。この面子で話を戻そうとしているのが玉藻だけなのが悲しい。

「とまぁ、冗談はこのあたりまでにして」

「うぅ…ナルトのバカ…」

どこかすっきりした顔のナルトと涙目になっているヒナタ。

「で、ぬしらは妾達の知る者達かや?」

そのナルトを冷たい眼で一瞥し、シカマル・いの・ヒナタ・瑠璃に問いかける玉藻。ナルトの背中に冷たいものが流れたのは言うまでもない。

「あぁ、音が静まったんで偵察がてら様子を見に出たら…」

「ナルトが血だらけで突っ立てるんだもん。玉藻さんはその後すぐにナルトと一緒になっちゃうし…」

「そのあとナルトが光に包まれて空に開いた穴に吸い込まれそうになったから…」

≪三人してその光に突っ込んだんだよ。瑠璃はヒナちゃんに追い付くので精一杯だったけど黒金さんや玉尾さんはシカマルさんといのさんを止めてたよ≫

順番に答える面々。このチームワークには熟練の業が見える。

≪まぁ、あの状況で動くなといっても聞くシカマル殿ではないし≫

≪ナルトとシカマルの状況が反対だったら私も突っ込んでたし≫

≪いのを止めはしたけど、わたしも姉様とナルトが心配だったし強く止められなかったわ≫

黒金・白金・玉尾も声を出す。自分達も居る事を皆に伝えようとしているようだ。

「フム。黒金、白金、玉尾まで居るのか。…では、今度は妾達の番かや。のう、主よ」

「そうだな」

話を聞いていた玉藻とナルト。今度は二人が皆に戦いの結末を話す。




「はぁ~~、このバカ。カッコつけんのは勝手だがもっと他のみんなの気持ち考えて行動しろよな」

≪まこと、猪突猛進であるな≫

≪私だったら思いっきりぶっ飛ばしてるわ≫

「私だってぶっ飛ばしてるわ!それに自分が犠牲になってそれで丸く収まる訳ないでしょ」

≪姉様から聞いていたけど、これほどとは…≫

「もぉ~~、昔から後先考えずに動く~。本当にバカなんだから」

≪玉藻さんにとってはありがた迷惑に変わりないですよ、ナルトさん≫

「ほれ見ろ。やはり主は大馬鹿者じゃ!」

「うっ、ごめんだってばよ」

この場にいる全ての者に罵られ、さらに玉藻からもダメ押しされ謝るしかないナルト。口調もドベを演じている時のままである。

自業自得とはこのことか…

「しかし、この状況…マジめんどくせ~」

「そうよ。これからどうするの」

「誰かに話しても多分信じてくれない…よね」

頭を掻きながら本当にめんどくさそうに呟くシカマルと、今の現状をどうするか考えようとするいのとヒナタ。

「…一応ヒナタを助けた報告をじぃちゃんに報告するか」

「…そうじゃな、下手人を捕らえたのに報告が遅くなってはいかぬ」

ナルトの意見に同意する玉藻。

「それと…俺達の事、じぃちゃんに伝えようと思うんだが」

皆の表情が一瞬固まり、

「はぁ!?」

「ちょっと、それ本気!?」

≪ヒナちゃん、しっかりして~≫

シカマル、いのがすぐ抗議の声をあげる。ヒナタはナルトの顔を見ながら固まったままで、そのヒナタの頬を突っつきつつ瑠璃が声をかける。

「しかし主よ、如何な三代目とはいえ妾達のことをすぐ信じるとは思えぬが…」

≪私も姉様と同意見です≫

冷静に話す玉藻とその言葉に同意する玉尾。だが、ナルトは

「じぃちゃん、俺と玉藻の雰囲気がいつもと違うの感づいてるよ」

ほぼ確信に近い物言いだったため次の言葉を飲み込む玉藻と玉尾。

双子だけあって思考回路が似ている事が伺える。

「まぁ、信じてくれっかは分かんないけど大事な話があるって伝えて皆で話せば分かってくれるよ」

皆に向かって笑顔で話すナルト。

その笑顔を見て

「そうかもな」

≪ですな≫

≪ええ≫

「そうね」

≪かもしれんな≫

「うん」

≪きっとそうだよ≫

「そうじゃな」

ナルトの笑顔を見ていると何でも出来そうな気分になる皆であった。

「じゃ玉藻、そろそろ戻るか」

「うむ、そうじゃな」

狐の面をしつつ話すナルトと玉藻。

「んじゃ、俺達も戻るとするか。親父にも一応話しつけとかねーと」

「そうね、一旦戻って状況を把握しないと」

「あの…わたしは一人で帰っちゃいけないよね」

シカマル・いの・ヒナタが順に答える。

「ヒナタは妾達が家まで送ろう」

「シカマル、いの、気をつけてな」

「わーってるよ」

「パパにバレたらナルトに会ってたって言うから大丈夫よ」

「…それだけは勘弁してくれ…いのいちさん怖いんだから…(命とは別の意味で)」

「フフッ、冗談よ」

顔は笑っているが目の奥が笑っていない…

どうやら、ヒナタは家まで送ってくれるのに、いのを家まで送ってくれない事が不満なようだ。

「いいから戻っぞ!」

「ちょっと、シカマル離してよ~」

このままだと余計こじれると判断したシカマルは、文字通りいのの首根っこを掴まえて引きずりながら帰っていった。

一瞬振り向き「貸一つな」とナルトに対してアイコンタクトを交わしながら。

「…シカマル、本当に頼りになるってばよ…」

後日何かしらの礼をしなければと考えつつ二人を見送ったナルト。

「…主よ、そろそろ妾達も出発せねば」

「あぁ」

「えっと、よろしくお願いします」

残された三人も移動を開始した。

≪あ~~~ん。待ってよ≫

…置いてかれた瑠璃が急いで三人の後を追って飛んでいった。



------------

一応、少しずつ書いていた1話から5話分まで内容を整理しながら一気に投稿しました。

ナルト・玉藻とヒナタ・瑠璃は細かく書いてますが、シカマル・いのはあまり細かく描けていません。どう追加するか、今後の課題です。

なるべく早く投稿できるよう頑張りますので気長に待っていただければありがたいです。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第6話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/26 15:03
【第6話 報告---弧と火影】

一旦皆と別れたナルトと玉藻は、ヒナタと瑠璃を日向家に送った後、ヒナタ救出及びミズキ束縛の報告を行うため火影執務室へ赴いていた。

「あら、黄弧に紺弧じゃない」

「お前達も任務の報告か?お疲れさん」

「全く、火影様も二人をこき使い過ぎじゃないですか?」

「言えてるな」

執務室に入るなり顔を合わせた四人が四者四様の言葉をかける。どうやらこの者達も何かしらの任務の報告に来ていたようである。

「まぁ、言い訳は出来ぬな。黄弧に紺弧、任務御苦労であった」

皮肉を言われた三代目火影は苦笑いを浮かべながら後から入ってきた二人に声をかける。

「別に妾達は疲れておらぬ。それに、里の長であれば効率的な人事を考えるのは当たり前であろう。あまり火影殿を責めるでない」

紺弧と呼ばれた者が言葉を返す。話し方で判るとおり正体は玉藻である。

「でも、アンコが言うのも事実よ」

「紅もそう思うでしょ。もっと言ってやってよ」

玉藻…紺弧の言葉に反論する二人。上から名を 夕日 紅、みたらし アンコといい、紅は上忍、アンコは特別上忍である。ただ、紅はここ最近上忍となったため総合的な実力ではアンコの方が上である。

因みにこの里の忍びの位は、下から 下忍・中忍・特別上忍・上忍 となり、その中から選りすぐりの忍びを暗部として起用している。

尚、紺弧は特別上忍として三代目より任命されている。

「黄弧、怪我は…するわけないか」

「おいカカシ、よく見ないで確信するなよ」

黄弧に話しかけた者に突っ込む者。上から名を はたけカカシ、猿飛アスマという。二人とも共に上忍であり、実力は上忍でもトップクラスである。また、カカシは以前暗部として働いていた経緯もあるので実力は折り紙つきである。

「あのなアスマ、黄弧が怪我してたらあの紺弧が黙ってる訳ないでしょ」

「…まぁ、確かにそうだな…」

カカシの言葉に対し僅かに言いよどむアスマ。その顔は変わらないが何か思い出しているようだ。

「…二人ともどういう理屈でそう思うか分からんが、怪我はない」

黄弧は二人の疑問に対して答える。紺弧が玉藻であることから想像できるように黄弧の正体はナルトである。

ナルトとしては、現在アカデミーに通っているので完全に忍びとは言えないが、黄弧として活動する際は暗部名の登録と共に忍びの位も登録しなければならないので、紺弧と同じく特別上忍として三代目より任命されている。

もちろん、この場にいる全ての者が黄弧=ナルト、紺弧=玉藻であることは知っているが、あえて暗部名で名を呼んでいる。

ナルト、玉藻としてはどちらでも構わないのだが、暗部として行動している時は暗部名でお互いを呼び合っている。

「三代目、任務終了の報告書です」

黄弧がカカシ、アスマから回避しつつ巻物を三代目に渡す。その隣にはいつの間に近づいたのか、黄弧の横顔をうっとりとした顔で見ているアンコの姿がある。

今にも飛び掛りそうな気配であるが、そんな狼藉を許す紺弧ではなくアンコの襟元を引きそれ以上黄弧に近づけないようにしている。

因みに、アンコはナルトと玉藻の本当の正体を知る者の一人である。

(里でバカを演じてるときのナルトも可愛らしいけど、そのギャップもあって黄弧としてのナルトの顔って余計カッコいいわ~。)

「うむ。すまぬな、いらぬ手間をかけさせて」

報告を受けた三代目は、その立ち位置上アンコのその表情が丸見えなのだが、あえて放置して二人に労いの言葉をかける。

アンコの性格を知る三代目は、今のアンコに何を言っても無駄だと言う事を熟知しているようだ。まあ、そうでなければ曲者揃いの忍び達をまとめる事は出来ないのだろう。

「それで、そなた等は何の用事で火影殿と話しておったのじゃ。妾達と同じく任務の報告かや?」

「いいえ、そうじゃないのよね」

「俺達は火影様に呼ばれたんだよ」

「もちろん私達もね」

「ああ、ちょうどさっき話し終わった所だ」

紺弧の問いに答える四人。

「その件に関してはわしが答えよう。四人とも、急に呼び立ててすまなかったな。下がってよいぞ」

「「「「は!」」」」

一斉に返事を返し部屋を後にする四人。

ただ、アンコだけは部屋から出る時、黄弧対してウインクを放つが紺弧によって阻まれる。

「……」

「……」

無言で見つめ合う二人。二人の間に火花が散っているのは見間違いではないだろう。その場にいる三代目・黄弧は居心地が悪い事この上ない。

「何遊んでんだアンコ、サッサと出ろ」

「あん、ちょっとカカシ離してよ」

この状態は、すぐに戻ってきたカカシによって部屋から引っ張り出されるまで続いていた。

「ナルト、玉藻殿、少し良いかな」

いち早く現実に戻ってきた三代目の言葉を聞き振り返る二人。二人の名を本名で呼んでいるが二人は気にしていない。そんな事より、玉藻としてはアンコとの応酬がこの程度で終えたことにどこかホッとしていた。

その理由として、アンコが蛇の如くしつこい性格で(実際アンコは蛇を使って戦う)、あの状態が続けばキレたアンコが術を使ってくるかもしれなかったからだ。この火影執務室でそこまでしないとは思うが、相手はあのアンコである。何をしでかすか分かったもんではない。

玉藻がアンコに対して必要以上に突っ掛るのは、もちろん他にも理由はあるのだが…

「あー、玉藻殿?」

「ハッ、すまぬ火影殿」

玉藻に声をかける三代目とそれに答える玉藻。どうやら少し考えこんでいたようだ。

「では、単刀直入に聞こう。ナルト、玉藻殿、二人ともわしに何か隠している事はないか?」

「「…!」」

口調は相変わらずだがほぼ確信めいた事を聞く三代目に目を見開く二人。

「…やっぱりじぃちゃんには敵わないな」

「主!?…良いのか?」

面を外しながら年相応な声で話すナルトとそのナルトに振り向く玉藻。

「どうせ話さなきゃならないなら早い方がいい。だろ」

「主がそういうなら妾は構わぬが…」

そういって振り向いたナルトと玉藻は、三代目に自分達にどういったことが起きたのかを話した。自分達が未来から戻ってきた事、本人達の同意を得ていないので名前は伏せたが共に未来から戻ってきた者がいること、これから木の葉の里で何が起きるのかを…

「…う…む…、そのような…事が…」

二人から聞いた事が事だけに頭に手をやり、どうにかこの言葉を搾り出す三代目。

「信じるかどうかはじぃちゃん次第だし」

「確かに妾達も信じられぬが、現実にこの場に戻ってきておるし」

その様子を見て苦笑いをしながら話すナルトと玉藻。

「…いや、多分本当じゃろう…二人とも大変じゃったのう」

まさかこうも簡単に肯定されるとは思っていなかったナルトと玉藻は苦笑いを浮かべながら硬直する。

「いやいや、じぃちゃんそう簡単に納得してどうすんだってばよ!?普通ありえないだろこんなこと!」

すぐに現実に戻ったナルトが反論する。だが、ナルトの時の口調と黄弧の時の口調が混ざっているので混乱しているのだろう。一方の玉藻に至ってはまだ硬直したままである。

「では信じぬと言って欲しかったのか?」

「う…それはそれで嫌だな…」

三代目の問いに言葉を詰まらせつつ本心を口にするナルト。

「まぁ今の話を信用するのにはある理由がある」

「…といいますと?」

やっと現実に戻ってきた玉藻が今度は三代目に問う。

「うむ、先程の四人とは別に各名家の当主達にもここに来てもらい聞いたのじゃが」

一旦言葉を切り二人を見直す三代目。

「ここ最近ナルトと玉藻殿の様子に変化は無かったかとな」

何を言いたいのか分からず首をかしげるナルトと、手をあごに添えて何か考え込む玉藻。

「まぁ、答えはノーじゃったが。そこで重要なのが先程の四人じゃ。二人とも他の者と交流はあるがあの四人とは仕事柄よく顔を合わす。特に二人の正体を知るアンコはな」

そこまで言われハッとする玉藻。ナルトもだいたいの事が掴めてきたようである。

「よく顔を合わす四人、特にアンコは妾達に何か変化があったら力ずくでも聞きに来る。そのアンコも知らないとなると…」

「あー、だからじぃちゃん俺達の事こうも簡単に信じたんだ」

玉藻の言葉を聞き納得したナルトが続ける。各名家の当主達が自分のことを見守ってくれているのを知っているナルト。

その各名家の当主達からナルトに何も変化を感じていないなら、よく顔を合わせるカカシ・アスマ・紅・アンコにも同じ事を聞く。先程の玉藻も言っていたが二人の正体を知るアンコなら、何かしらの変化を感じたら自分も知りたいと力ずくで聞き出すだろうが、そのアンコも何も知らないというのだ。

このことから導き出される答えは、ここ最近…しかも1日足らずの間に二人に何かしらの異変があったがそれを知るものがいないという事。

「でも、それだけじゃ俺達がじぃちゃん達に何を隠しているか分かんないじゃ…」

ないかと続けようとするナルトを手で押さえ

「確かに、だが先程任務を依頼する時、二人に言いようのない違和感があったんじゃ」

「成程、主の言った通りであったっと言う事か」

「だろ」

玉藻とナルトが目を合わせつつ答える。今度は三代目が驚いていた。

(あのとき、態度には出さなかったと思っとったが、気づいておったか…しかもナルトがな)

ナルトの成長に目を細めつつ思う三代目。なんだかんだでナルトのことが大事な三代目であった。なのでこのあと聞こえてきた内容は頭の隅に追いやっていた。

「あとで褒めちぎってやろうぞ」

「わーい、楽しみだってばよ」

…もしもし、一体何を話しているの…

「…野暮な事を聞くでない…」

「はぁ・・・一体誰に話しておる」

頬を染めつつ誰かに答える玉藻とため息をつく三代目。

「ともかく、これから二人はどうするつもりじゃ」

強引に話を戻した三代目。…心中察します。

「これからって一応、今住んでる部屋に戻るってばよ」

「今の時代妾達の住む場所はあそこ以外ないしな」

さも当たり前のことを聞くなと言わんばかりに二人が答える。

「しかし、それでは玉藻殿が不便であろう。あの部屋は二人で住むには狭いじゃろうし」

一度、その部屋に行った事がある三代目は思ったとおりの感想を言う。

「でもなー、あの部屋から引っ越すまでずっと二人暮らしだったしなー」

「うむ、別に妾はかまわぬが」

言いよどむナルトと玉藻に三代目は少し考えてから

「ではナルト、お前に家を与えようかの」

「「…は?」」

いきなり家をくれるという三代目の言葉に文字通り固まる二人。言うタイミングといい、固まるタイミングといい本当に似たもの同志である。

「正確には、ナルト お前の両親の生家じゃ」

その反応を楽しみつつ追撃をかける三代目。

「…て、ことは父さん・母さんが住んでた家があるの?」

「ああ、もちろん」

「本当!!」

ナルトの言葉を肯定する三代目。ナルトの父 波風ミナトは木の葉の里 四代目火影。その家なのだからまだ自分が知らない術や研究が残っているかもしれないと思ったナルトは声を上げ喜んでいた。

「しかし主よ、妾達が元いた世界ではそのような家は無かったはずじゃが」

「あ…たしかに」

玉藻の言葉に冷静になるナルト。そう、元いた世界では父 波風ミナトと母 うずまきクシナの遺品らしきものは何一つ見つかっていなかったのだ。

「…おぬし達が元いた世界ではわしは死んでおるのか?」

「え…」

「な…なに言ってんだってばよ、じぃちゃんなら火影の座を降りて余生を楽しく過ごしてるってばよ」

唐突に言い放つ三代目に驚く玉藻と、何とか言葉を返すナルト。

「わしがその家を管理しておるのじゃ。それに火影の座を降りる時はナルト、お前にその家を渡そうと思っておったのじゃからな」

三代目の返事に「しまった」と小さく呟いたナルト。

「…やはりな」

その反応を見て確信する三代目。ナルトと玉藻はこれから先起こるであろう事を知っているが、三代目にとっては未来にあたる。先程説明した内容には、この後起こる大戦争で三代目が命を落とすと言う事は伏せていたのだが…

「言いたくないのは分かるが、おぬし達の世界ではわしはどうやって死ぬ?」

真っ直ぐナルトを見て問う三代目。その視線を受けてもう隠せないと判断したナルトは

「詳しくは話せないけど…里を護り、蛇の牙を抜いて…死んだ」

最後は声を震わせてながらもはっきりと伝えたナルト。傍らから玉藻が慈愛に満ちた顔でナルトの肩に手を置いている。

「そうか…蛇の牙を…」

それだけで大方の見当がついたのであろう。それ以上何も聞かない三代目。

「では尚更四代目の生家を、受け継ぐべき元の持ち主に返さねばならぬな。2,3日で準備できるじゃろうからその間は元の部屋で待っていてくれ…ナルト?」

「…火影殿…すまぬが…」

玉藻が返事を返す。一方のナルトはその言葉を聞いているが返事が出来ない。

三代目の死に目を思い出したのか涙を浮かべている。玉藻がナルトをやさしく抱くがそれによって崩れたように泣き出すナルト。

精神的には成長しているナルトだが、目の前には元いた世界では既に亡くなっている三代目がいるのだ。あれだけ慕っていた三代目の死の内容を話して平然としてられるほどナルトはまだ強くない。

火影執務室では暫く玉藻に泣きつくナルトの声が響いていた。




「ごめん、玉藻にじぃちゃん、取り乱したりして…」

「いや、わしこそつらい話をさせてすまなんだ」

落ち着いたナルトは玉藻・三代目に謝り、三代目もナルトに対して謝っていた。

「では、2,3日後にまた訪ねてくれ。預っておった荷物を運ばせる手はずを調えるゆえな」

「うん、じぃちゃん、本当にありがとう」

「では火影殿、妾達はこれで」

「うむ」

ナルトと玉藻を見送る三代目。

「…さて、これから忙しくなりそうじゃの…」

そう呟いて三代目も部屋を後にする。

孫同然の者へ最高のプレゼントをする為に。

だが…

「黄弧!紺弧!!私に何か隠してることあるでしょ!!!いいから白状なさい!!!!」

「落ち着けアンコ!時が来たら話すから!!」

「黄弧!こうなったアンコは力ずつでなければ止まらぬ。妾に任せて下がっておれ!」

「紺弧…いえ、玉藻ぉ!さっきはよくも邪魔してくれたわね!!今日と言う今日はぶっ飛ばしてやるわ!!!」

「フン、黄弧に余計な虫がつかぬようにしたまで。いや、おぬしの場合は駄蛇じゃったな」

「っ!玉藻それは言い過ぎ…!!」

「よくも言ってくれたわね、この老弧!いい加減年なんだから黄弧の隣を私に渡しなさい!!」

「言うに事欠いて、誰が年端女じゃと!?」

「いやいや玉藻、アンコはそんな事言ってないし…あーあ聞いちゃいない…どうしよ」

「もう許さぬ!死んで詫びよ!!蛇女ぁ!!!」

「それはこっちの台詞よ!速攻で返り討ちにしてやるわ!!年端駄狐ぇ!!!」




「…一体どうしたらあーなるんじゃ…」

三代目火影の呟きは轟音によって掻き消されていた。

「あははは…帰って寝よ」

と呟いた黄弧は自分の部屋に戻り二人が落ち着くまでケンカさせようと眠りについた。

その轟音は2時間以上も続いたとか。…ナルト、よく眠れたな…

「この程度日常茶飯事だし」

…左様で…




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今回シリアス寄りだったので最後の方でアンコさんに暴走していただきました。

楽しんで頂ければ幸いです。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第7話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/26 18:40
【第7話 報告---奈良家】

ナルト達と別れ、いのを家まで送ったシカマルは今、自分の家の前に立っていた。

火影様に今自分達に起きていることを話すと言ったナルトに対し、「親父にも一応話しつけとかねーと」と言った手前事情を話さなければならないのだが、全くといってもいいほど妙案が浮かばない。

≪シカマル殿、一度部屋に戻られてはどうか≫

そんな様子を心配し黒金が声をかける。

「いや…一歩家に入りゃ親父かお袋のどっちかに必ず捕まる」

≪ヨシノさんてそんなに凄い忍びだったっけ?≫

対する白金は母親の実力に対し疑問を投げかける。父親である 奈良シカクは上忍なので見つかれば捕まるのは確実なのだが、母親の 奈良ヨシノは中忍。実力的には現在のシカマルとそう変わらないというのが白金の見解なのだが

「…お袋、妙なところで感が鋭いところがあるからな。ある意味、親父より見つかりたくねぇ」

シカマルの言葉に納得する黒金と白金。思い当たる節が多々あるようだ。

「…でいつまでだべってるつもりだ?」

「んだから、いい考えが浮かぶまでだっつてっだろうが」

≪?我は何も聞いておらぬが…≫

≪もちろん私もよ≫

「へ?」

と思った瞬間

「!?体が動くねえ!」

「動けるわけねぇだろうが、クソ餓鬼。俺が影縛りしてんだぞ」

背後から声をかけられて冷や汗が止まらないシカマル。

「…クソ親父…いつの間に…」

「さっきいのいちから連絡が来たんだよ。いのを送ってくれたありがとよってな」

奈良家秘伝の影縛りの術を解除しつつ答えるシカク。

「…本当は何て書いてあったんだ」

「…いのに手ぇ出したらお前の息子だろうと容赦しない」

「…だろうな…」

二人してため息を吐いた。お互い傍迷惑な仲間を持つと苦労するようである。

「この分じゃ中でお袋も待ってんだろ」

「そのとおり。『戦略が通用しない相手には直球勝負に賭けるべし』ってな。よく覚えとけ」

「…そうするよ。んじゃ腹くくるか」

そう言いつつ家に入るシカマルとシカク。

≪…出るタイミング、逃したかしら…≫

≪致し方あるまい≫

シカクに聞こえないように呟いた白金と黒金であった。




「するってと、今のお前はこれから起こる事を知ってるって事か」

「全く同じ内容であればの話しだけどな」

茶の間で話す声は二人分。湯飲みは三人分。シカマルの話に相槌を打つのはシカクだけでヨシノはその二人の様子を聞いているだけであった。

「でも、イマイチ信用できないんだよね。姿、形はそのままだし」

今まで黙っていたヨシノは疑問をそのままぶつける。

「母ちゃんの言うとおりだ。昨日までのお前とは違うっていう、何か証拠を出せねぇのか」

「親父とお袋の言うとおりだ。そうだな…」

何を出せば手っ取り早く状況を説明できるかシカマルが考えていると

≪シカマル殿、我らを呼び出してはどうか≫

≪そうよ、この時代のシカマルなら私達を呼び出すチャクラが足りないんだし≫

「あぁ、そうだな」

「なんだぁ、今の声は」

「どこから聞こえたんだい」

その場に立つシカマルと、いきなり聞こえた声の主を探す両親。

「おい、二人とも、よく見といてくれ。口寄せの術」

印を結び口寄せの術を発動させるシカマル。途端に出た白煙を見て驚く両親。それもその筈、本来シカマルは口寄せの術は使えないはずだし、もし両親に内緒で契約していても口寄せの術を行うチャクラをシカマルが有しているとは思っていなかったからだ。

白煙の中から現れたのは二人の姿。一人はシカクと同じくらいの背丈であるが見た目の年齢は二十代半ばと思える男性。もう一人はシカマルの背丈より少し高く見た目の年齢は男性と同じ二十代半ばぐらいと思える女性であった。

「この世界では初めてですね。我の名は黒金。縁あってシカマル殿と契約をさせて頂いている霊獣です」

「初めまして。義父さま、義母さま。私の名は白金。シカマルのお嫁さんとして契約してる黒金と同じ霊獣です」

「おい白金、お前何て挨拶してんだ」

「いいじゃない、元いた世界の義父さまと義母さまにはきちんと挨拶もして、了解貰ったんだし」

「それとこれとは話が別じゃねーか」

礼儀正しく挨拶を行う黒金と、初めて彼の家に遊びにいった先で会った両親に自己紹介をする感覚で挨拶をした白金に突っ込みを入れるシカマル。

一方のシカク・ヨシノは突然の事に思考回路がショート寸前で止まっていた。その原因は息子の嫁であると公言した白金であることは明白である。

「…っといかんいかん。頭ん中飛びそうになったぜ。…おい、母ちゃん、しっかりしろ」

「ハッ、あぁお前さん。私も頭の中真っ白になったよ」

「…まあお二方がそうなるのは分かります。いきなりあんな事を言われれば」

シカクとヨシノが現実に帰ってきた様なので声をかける黒金。一方その原因を作った白金とシカマルは言い合いを続けていた。

「黒金さんて言ったか。後ろの二人止めなくていいのかい」

「日常茶飯事ですので」

シカクの問いにさらりと受け流し笑顔な黒金。その様子から本当に日常的に行われている事が分かった両親であった。

「あの様子じゃ何も聞けねぇな。じゃあ黒金さんよ、あんたらの馴れ初めを聞いてもいいかい」

「そうだね。あの子にこんな娘がいるなんて知らなかったし」

「それは構いませんが…シカマル殿」

「あぁ、すまねぇが俺の代わりに話してくれねえか。俺はこいつを黙らせる」

「出来るもんならやってみなさいよ」

「…っ、頭キタ!おい白金、場所移すぞ!その減らず口二度と言えねえようにしてやる」

「いいわよ!返り討ちにしてあげる」

茶の間を後にする二人を見送りつつ

「ケンカからな外でしろよ。ったく…黒金さんよ…これももしかして」

「はい。日常茶飯事です」

シカクの言葉に笑顔で答える黒金。

(笑顔なんだけど目が笑ってないよね…)

そう思っているヨシノの感は当たっており黒金は内心ため息を吐いていた。





その後、一通りの説明を黒金から聞いたシカクとヨシノ。

「ほぉ、あの餓鬼影縛りの術をそこまで応用してたか」

「でも、影狼の術だっけ?自分の影を狼の姿に代えて戦わせるなんて…あの子が言うように影真似の術て名前が合ってんじゃない」

「そうかもな。だが、俺は影縛りと言い続けるがな」

「まぁ一方的に襲っておいては何ですが、シカマル殿の実力と応用力はかなりのものです。それと…ナルト殿のことはお二方とも…」

「あぁ、あいつの親父共々知ってるぞ」

「玉藻さんのこともね…」

「そうですか、ではお話しますが近い将来、ナルト殿が黄弧の姿の際に背中を預ける忍びがシカマル殿です」

「ほぉ…」

「すごいじゃないあの子」

「こりゃ、俺もうかうかしてられねーな。親父の威厳を保てねーなんてダサすぎだ」

等とシカク・ヨシノ・黒金が話していると

「えらく打ち解けたようだな、黒金」

「これはシカマル殿、白金はどちらに」

「俺の部屋で休んでるよ。ちょっと力入れすぎたみてーだ」

「おいおい、女性はもっと慎重に扱えよ」

「そうよ、いくらあなたを慕ってるていっても物には限度があるんだから」

「…へいへい、これからは気をつけるよ…」

傍から見たらケンカで怪我をした白金を部屋で休めていると言っているが、顔がやや赤いのに気がつき実際は違う事を理解した黒金。だが…

(…余計な事は言うな!聞くな!!)

自らの主と目が合った際アイコンタクトで念押しされ苦笑いを浮かべる黒金。

…シカマルさん、もしかして…

「余計な詮索はなしでいこう」

「?いきなり何言ってやがる」

誰かに話したシカマルとシカク。シカクとヨシノの頭の上には?マークが浮かんでいた。

「で、一通り説明できたのか」

「はい。今シカマル殿の 影狼の術について話していました」

何事も無いかのように話を進めるシカマルと、それに答える黒金。

「おーお、あの術か。あれ編み出したは良いんだけどチャクラをモノすげー使うし、結構しんどいんだよな…まぁ、その分強力なんだが」

「その術、何の術を応用したんだ?影縛りか何かか?」

「影擬人の術さ。前っつてもこの世界じゃまだ先なんだけど、親父がやってたのを見て思ったんだ。影を人に真似できるなら、他のものにも真似できないかってな」

「なるほどな」

「でも、よく考え付いたわね。そして術として完成させるなんて」

「褒めても何もでねぇっての」

「シカマル殿、素直に喜んではどうです」

「余計なお世話だ」



奈良家の話し合いは当分続きそうである。




一方シカマルの部屋では…

「…次は負けないから…すぅすぅ…」

と寝言をいいつつ白金が寝ていた。その顔は満足そうであった。

…本当にこの二人は…

「…野暮な事…聞かないの…すぅすぅ…」




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シカマルの事を少し描きたいと思って作成しました。

画力不足が否めませんが、楽しんで頂ければ幸いです。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第8話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/26 20:54
【第8話 報告---山中家】

ナルト達と別れ、シカマルに家まで送ってもらった いのは、自分の家の前に立っていた。

正確には家の前で仁王立ちで待っていた父の目の前に…

「…パパ、ただいま…」

「!?いの!何処行ってたんだ、心配したぞ」

「きゃっ、もぉパパ痛いってば」

いのの声に気づいた いの父 山中家当主 山中いのいちが可愛い娘に抱きついていた。

「…シカマル君に送ってもらってたんだね」

「うん。帰り道だったし一人じゃ危ないからって」

「そうか。あとでパパがシカクにお礼をしないとな」

「もぉ、これくらいいいってば」

と言いつつ家に入る二人。但し、いのいちはシカクにすぐ報告を行う。その内容は

『娘が世話になった。だが、娘に手を出すようならお前の息子であろうとも容赦しないからそのつもりで』

…一人娘に手を出す輩には制裁を加える事に何の躊躇もない親バカな父は、たとえ長くチームを組んで信頼の置ける人物の息子であろうともその矛先がぶれる事はない…

そんなこととは知らない いの。実際は時を戻ってきているので、父が何を思っているのか手に取るように分かるのだが、知らないフリをする。

リビングでは父と同じく娘を心配していた母に抱きしめられた いの。

その母からようやく解放された いのは

「パパ、ママ。大事が話があるの」

と切り出した。大事な一人娘からの『大事な話』と聞き何を勘違いしたのか、いの父は何処からとも無く取り出した忍具を装備していた。

「パパ!何忍具なんて装備してるの!?」

「いのは気にしなくていいよ。念のためってやつだから」

≪いの…いい加減本題に入ったらどうじゃ≫

このままでは埒が明かないと判断した玉尾が声を出す。

「っ!!今の声…」

「一体何処から」

いきなり三人以外の声が聞こえ、驚く いの母と気配を察知しようとする いの父。

「それもそうね…パパ、ママ、声の出所はここよ」

そんな二人に いのは手を出しながら答える。

「え…」

「…いのの手?…っ!?これは口寄せの印!」

「じゃ、二人ともよく見ててね。口寄せの術!」

いのが口寄せの術を発動させ、同時に白煙が舞う。

無意識の内にクナイを構え妻を護るいのいち。だが、その行為は目の前に現れた者が、よく知る人物であることが分かり杞憂に終わる。

「玉藻さん?」

いの母がそう答えるが、

「…よく似ているが少し違う…」

いの父は目の前に現れた人物がナルトと共に行動している玉藻と似ているが、どこか違うと否定する。

「よく分かったな、いのいち。わたしは玉尾。玉藻はわたしの姉様です。この世界では初めましてじゃな」

「この世界では?」

「いのちゃん、一体どういうことなの?」

戸惑う二人に いの、玉尾は答える。自分達が未来の世界からやってきたこと、自分達の他にも何人か一緒に戻ってきた事、これから木の葉の里で何が起きるのかを…

ついでに、いのが今ではナルトにゾッコンだという事を…




「……」

「……」

話を聞き終えたいの父・いの母は真剣な顔でお互いを見ていた。

「まあ、いきなりこんな事を言われて信じろっていう方がおかしいよね」

「そうじゃな」

二人の様子を見ていた いの・玉尾だが、次の瞬間 いの父がいの母の頬を、いの母がいの父の頬を思いっきりつねっていた。

「!!ちょっとパパ、ママ、何してんの」

「痛いね、母さん」

「痛いわね、あなた」

驚く いのと、つねられた結果を言い合う いの父・いの母。一方の玉尾はその様子を一人冷静に見ていた。

「つまり、これは」

「夢じゃないってことね」

「…へ?う、うん」

今度は身を乗り出して いのに問い詰める いの父・いの母。いきなり話を振られた いのは何とか肯定する。

「いやー良かった。いのがナルト君を好いているとは」

「しかもベタ惚れですって。これが夢だったらどうしようかと思ったわ」

「ちょっと二人とも、驚く方そっちなの」

「やはりな…」

変な感想をいう両親に突っ込みを入れる いのと、想像通りの結果になったらしい玉尾が呟いていた。

「だって いのに力があるって事は玉尾さんを口寄せで呼び出した時点で想像出来るし」

「だいたい いのちゃんが私達に嘘言った事無いじゃない」

「…まぁ、それはそうだけど」

全面的に娘の事を信頼しているからこその言葉だが、いのは頬をかきながら答える。

「家に戻るまでどうやって話せば信じてもらえるか、考えてた私がバカみたいだわ」

「まあ、わたしのことを元の世界で話したときも同じような反応じゃったし」

一人いじける いのと、慰める玉尾。二人を見ながら

(本当にいいパートナーに巡り会えたようだね、いのは)

(そうですね)

と いのに聞こえないように呟いていた。もちろん玉尾の耳には届いていたがあえて聞き流す。

「うん。玉尾さんと出会えて本当に良かったと私も思ってるよ」

「いの!?そち聞こえておったのか」

そう答えたいのに流石のいの父・いの母が驚く。隣にいた玉尾も驚いていた。

「私、玉尾さんと契約という名の同化をしてるのよ。忘れたの」

「あーそうじゃったかなー」

「…玉藻さんの言葉、そっくり忘れてるでしょ」

「…すまん。覚えておらん」

「同化っていっても感覚共有みたいなものだけで、私自身の寿命が増えるって事じゃないってことは」

「?そうなのか」

「はぁー、玉尾さん…もしかして玉藻さんの役に立てるからってろくに説明聞いてなかったでしょ」

「…はい…」

いのに問い詰められだんだん涙目になりつつある玉尾。その姿は恐怖に怯える子供そのものだった。

「いのそれ位にしてあげたら」

流石に玉尾が可哀相になってきた いの父が、助け舟を出す。

「…はーい…」

「…ホッ…」

まだ、言い足りないようだが、いの父に言われ玉尾から離れる いの。残された玉尾は心底ホッとした表情をしていた。

…九尾である玉尾をここまで怯えさせる いの…はっきり言って怖いです…

「…実際、怖いってもんじゃすまんぞ」

「悪かったわね!!」

「ひ!!」

「まあまあ いのちゃん、それで…ナルト君とはどこまでいったの?」

「え…ママ?どこまでって」

「それはパパも知りたいな。いの、どうなんだ」

「もぉパパまで…えっとね…」

その後、ナルトとの関係や交友関係を根掘り葉掘り聞きだした いのいちは、ある父親と一度話をつけねばならないと心に誓っていた。




「…がたがた…姉様、助けて」

一方部屋の片隅で一人涙を流しながら震えている玉尾は姉である玉藻に助けを求めていた。

ただ、助けを求められている玉藻は某蛇使いと死闘を繰り広げていたので玉尾の言葉が聞こえなかった。

代わりにこんな言葉が返ってきたとか。

『いい加減しつこいぞ。サッサと死になさい蛇女!』

『それはこっちの台詞よ。とっととくたばれ年端駄狐!』

「…がたがた…誰でもいいから助けて」




------------

いの父・いの母・いの。三者三様の暴走機関車に巻き込まれる玉尾さん。

こんな山中家はどうでしょうか?



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第9話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/27 23:56
【第9話 報告---日向家】

ナルトと玉藻さんに送られて日向家の屋敷に戻ったヒナタ。瑠璃はヒナタの服の中に隠れている。

瑠璃は玉藻や他の霊獣達と同じく、姿を消してヒナタの口寄せの印に戻れるのだが、なぜか姿を消さない。

≪だって、ヒナちゃんとはいつも一緒にいるし~。それに…このフカフカさに慣れちゃったら他の所でなんて寝れないよ~≫

すりすり

「っ!!瑠璃ちゃん、くすぐったいよ~」

「?どうした、ヒナタ」

瑠璃が何やらちょっかいを出したようで、小さく抗議するヒナタに気づき声をかける父 日向ヒアシ。

現在、黄弧・紺弧に助けられたヒナタを部屋まで送っている最中である。別に怪我を負っていないから一人で戻れるというヒナタの意見を無視し、俗に言う『お姫様抱っこ』で半ば強引に部屋へ連れて行くヒアシ。

ヒアシも某親バカな花屋店主と同等、或いはそれ以上の親バカで、文字通り目に入れても痛くない可愛い娘であるヒナタと一歳年下のハナビに手を出す輩には制裁を加える事に何の躊躇もない所は似たもの同士である。

ただ、その相手がナルトであれば話は別、という意見を持っている部分も同じである。もちろん、黄弧=ナルト・紺弧=玉藻であることは知っており、先の大戦争の内容を知る者の一人でもある。

ヒナタの部屋に着き、やっと降ろしてもらえたヒナタは連れて来てくれた父親に向かい

「お父様、すぐお話しなければならない事があります。お時間よろしいでしょうか?」

と唐突に切り出した。

「…かまわぬが、一体どうした?」

あまりにも真剣な眼差しに、尋常ではないことを察したヒアシが答える。

「ありがとうございます。此処では何ですから部屋の中へ…」

ヒナタは部屋にヒアシを入れ自分に起こった出来事を話した。

自分が先の未来から帰ってきたこと、その時一緒に戻った者がいること、ナルト及び玉藻の事情を知っていること、修行中に瑠璃と出会い口寄せの契約を交わした事を…

ついでにナルトにベタ惚れであることを…




「…………」

「…信じて頂けるかは分かりませんが、事実です」

愛娘から衝撃的な事実を聞かされ、思考が停止している父の様子を見てヒナタは淡々と告げる。

「…いや…ヒナタ…お前のチャクラの総量が昨日と比べ明らかに違う事もそうだが、その者がいることが何よりの証拠だ…」

ヒナタの言葉に我に返ったヒアシは、ヒナタの隣で浮いている小さき者を見ながら答えた。

≪こちらの世界では初めましてですね~、瑠璃っていいます≫

「なるほど、言葉も理解できるのか」

話を聞いた当初はその内容に圧倒されていたヒアシであったが、元の威厳を取り戻しつつ冷静に瑠璃を観察するところは、流石日向家当主というところか。

「このことを火影様には?」

「多分、今頃はナルトと玉藻さんが話しているかと」

「そうか…」

今までナルトのことを君付けで呼んでいたヒナタが、呼び捨てで呼んでいることからナルトとは親しい仲であることに気づいたヒアシは内心喜んでいたが、勿論顔には出さない。

≪…ヒナちゃん…≫

「うん。お父様…」

「二人とも気づいていたか。流石だな」

瑠璃・ヒナタが何かに気づいたようだが、既にその何かに気づいていたヒアシが手で押さえ答える。

父に褒められ、お互いを見て笑顔になるヒナタと瑠璃。その様子を見てヒアシにも笑みがこぼれるがすぐに真顔に戻り

「…ハナビ、そこに居るのは分かっている。出て来なさい」

部屋の外から息を呑む音がした後、すぐに姿を現す少女…名を日向ハナビという。ヒナタとは一歳年下なので背丈はヒナタより少し低いだけだが、それ以外の体型はヒナタと同等で某花屋の娘が嫉妬するような体つきとのこと。

…日向家の娘達…普段から何を食べたらそう育つのだろう…

「何時から気づき、そこで聞いていた?」

「…それは…」

言いよどむハナビだが、

≪ヒナちゃんが黄弧と一緒に歩いて屋敷に戻ってくるのを『白眼』で見てから…だよね≫

「な…」

「…ッ!!」

「…やっぱり…」

瑠璃に指摘され、驚くヒアシとハナビ。そのハナビの様子を見て確信したヒナタが呟く。

「…だって…昔助けてくれた人に似たチャクラを感じたから…居ても立ってもいられなくて…」

「…ちょっと待ちなさい。昔助けてくれた人というのは」

「…以前私が雲隠れの忍びに攫われた時、助けに来たお父様とは別の男の子」

「ハナビ!お前、その時意識があったのか」

「はい…その頃から白眼が使えるようになっていたので…練習も兼ねてと」

「ハナビちゃん、私と比べて白眼が使えるの早かったのは知ってたけど…そんなに早かったんだ」

ハナビは以前雲隠れの忍びに攫われており、その事を知ったヒアシが激怒、攫った忍びを追いかけていた時に合流したのが当時暗部として働き出していた黄弧・紺弧であった。

その忍びを追い詰めた時に、紺弧が止める間もなくヒアシが殺してしまい、その事が原因で双子の弟である日向ヒザシの命を奪う結果を生んでしまったのだが…

その時、父とは違うチャクラを感じて白眼でその少年を見た瞬間、ハナビの心はその少年の事で一杯になっていた。もちろん、少年…黄弧は面をつけていたのだが、白眼で透視し少年の顔を見ていたのだった。

そして今日、その時の少年と同じチャクラを感じたハナビは白眼でその少年を探していたのだ。

その少年を発見し、姿が見えなくなるまでうっとりとした表情で見ていたハナビが部屋に戻ろうとした矢先、ヒナタとヒアシの話が聞こえてきた。その話の中にあの少年の秘密が無いか聞き耳を立てていたのだった。

「お姉様、教えて!あの人は誰なの?どんな人なの!!」

「ハナビちゃん、落ち着いて」

父親そっちのけでヒナタに掴み掛かるハナビと宥めるヒナタ。

≪…ヒナちゃん、話していいの~?≫

「どうせ話すなら早い方がいいよ…ハナビちゃん痛いよ」

どうやら気が動転しているようで、瑠璃の言葉が耳に届いているはずなのにヒナタから目を離そうとしない。その目は…据わっていた…

≪じゃなくて~、恋のライバルを増やさなくても…≫

「遅かれ早かれこうなるんだから尚更だよ。瑠璃ちゃん、悪いけどお父様に説明の続きお願いしてもいい…はいはい、分かってる、話すから、落ち着いてってば」

「…ハナビがこんなに一途だったとは…」

今まで見なかったハナビの意外な一面を見ながら呟くヒアシ。

その視線の先にあるのは黄弧のことを聞きまくるハナビと、首を揺さぶられながら答えるヒナタの姿。

≪ヒナちゃんのお父さん、元いた世界では二人ともナルトにベタ惚れで~、他にもナルトにベタ惚れな子達とよくケンカしてたよ~≫

「…その話し、詳しく聞かせてもらおう」

≪うん。え~とね…≫




その後、瑠璃からナルトの交友関係を聞いたヒアシは、某花屋の店主と一度腹を割って話しをせねばと心に誓っていた。




「ナルト様っていうんだ、あの方…」

「…先に言うけど、ナルトは渡さないよ」

「別に構いません…奪いますから」

「……」

「……」

姉妹だけあって、一途な性格が災いし一触即発な雰囲気を醸し出す二人。

その背後には竜虎が睨み合っている姿が見えたとか。

ともかく日向家の話し合いは、まだまだ尽きそうにないようである…



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恋に一途な姉妹と愛娘を応援する親バカ。

楽しんで頂ければ幸いです。



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第10話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/29 21:58
【第10話 ナルト・玉藻の長い三日間】

「…こんなに長く感じるとは思わなかったってばよ…」

「…色々とあり過ぎたからのぉ…」

ナルトの両親 四代目火影夫妻の生家を譲ると、三代目火影に言われてから今日で三日目。その三代目から呼び出しを受けたナルトと玉藻は、何故か足取り重く火影執務室へ向かっていた。

不測の事態に備え、一応黄弧・紺弧の姿でいるが、ナルトはアカデミーで過ごす時と同じ口調で呟いていた。

そして、その呟きに答える玉藻も遠い目をしている。

「まったく…面倒事が次から次に押しかけて来おってからに…」

「…ごめん…ほとんど、俺のせいだ…」

「…主だけではない…妾にも責はある…」

といいつつ、二人はこの三日間を思い出していた…




ナルトと玉藻の身に起こった現状を話し、二人のことを信じた三代目。その結果 ナルトの両親の生家を譲ってもらえることになった。そこまではいい。

その後、火影執務室から出てくるのを見張っていたアンコに捕まり問い詰められるが、玉藻の一言にブチ切れたアンコが玉藻と言い合いになり、意見の相違も相成って大喧嘩に発展したのだ。

元の世界でも玉藻とアンコが(おもにナルトを巡って)よく大喧嘩をしていたので、それほど気にせず一人 家で仮眠を取ることにしたナルト。

約一時間半後に起きたナルトは、疲れ果てて戻ってくるであろう二人のために元気が出るような料理を作っていた。

大体の料理が出来上がった頃…二人が争いだした約二時間後にナルトの部屋に現れた玉藻とアンコ。

二人とも、髪はボサボサで顔や服等が所々切れたり穴が開いてたりしているので、相当派手にケンカしたんだなと思いながら冷やしておいたタオルと冷水を二人に渡すナルト。

玉藻はもちろん大事だが、その思いと同じくらいアンコを慕っているナルト。その思いを知っている二人だからこそナルトのことになると大人げない態度を取ってしまうのだが…

「二人とも、大怪我したら俺…悲しいからあんまりケンカすんなよな」

と言いながら、どんな女性でも堕とせる必殺の笑顔を見せられたもんだから玉藻・アンコ共に顔を真っ赤にしながら首を縦に振りつつ

(…この笑顔を見るために本気で戦ってるのかも…)

と二人して思っていたとか…

その後、ナルトの手料理に舌鼓を打ちながら、改めてナルト・玉藻を質問攻めにするアンコ。昔から一人で料理をする事が多かったナルト。なので、材料さえあればそこ等の料理店なんか目じゃない料理を作れるので、二人が話す内容はアンコにとっても衝撃的だったのだが思いのほか暗い雰囲気にならずに話しが進んだ。




「ふ~ん。じゃ、今のナルトと玉藻は未来から魂だけ戻ってきたって事?」

唐揚げを頬張りながら問いかけるアンコ。

「う~ん。どうなんだろ…元の世界で起こった出来事や、覚えた術に関する記憶、それにこっちの世界に来る前のチャクラの総量はそのままみたいなんだけど…」

「主に関しては身体能力は当時のままじゃが、妾はこの時代の妾と同化した様じゃから身体能力はそのままで且つチャクラ・妖力は倍化したようじゃ」

「…私そんな奴にケンカ吹っかけたの…よく死ななかったわね~」

我ながらとんでもない事をしたもんだと乾いた笑い声を出すアンコ。

「…妾も少々タカが外れておったが…アンコ、よくアレだけ戦えたな」

「凄いな、アンコ姉ちゃん。昔以上の力を持ってる玉藻と張り合えるなんて…」

「まぁ、昔っていても妾達にとっての昔じゃがな」

ナルトの感嘆の台詞に付け足す玉藻。

因みにこの三人がプライベートで一緒にいる時、ナルトはアンコのことを『アンコ姉ちゃん』と呼んでいる。

この言葉から察するにナルトにとってアンコは姉のような存在である事が伺える。尚、玉藻はナルトにとって本当の母であるクシナ以上に母親のような存在であると共に、一番心を許し甘える事が出来る異性でもある。

「…恋する乙女に不可能は無いのよ…玉藻、アンタもよく分かってるでしょ」

ナルトの感嘆の台詞と尊敬の眼差しを受けて頬を朱に染めつつ答えるアンコ。

その答えに納得する玉藻。

…いつの時代も、恋する乙女は無敵ということか…

「そういうこと」

「誰に向かって言っておる」

あらぬ方向に対し笑顔で答えるアンコに対し突っ込む玉藻。

「俺や玉藻もよくやるじゃん」

「…ッ!主は黙っておれ!!」

「へぇー、そうなんだ。んじゃ次見かけたら派手に突っ込んでア・ゲ・ル」

「いらぬ気遣いじゃ!!」

と言いつつ笑いあう三人。

この日は、忍者育成アカデミーが休みである事と、暗部としての任務が無かったことも重なり、ナルト・玉藻・アンコの三人は情報交換と称して、この世界の木の葉の里についてとか元いた世界でどんな事があったのか等々を話し合っていた。




「まぁ、アンコのことは大体予想出来てたから、ある意味ここまでは良かったんだよね…」

「…問題が次の日じゃ…」

と呟きつつ、盛大にため息を吐く二人。

そう、この二日目が大変だったのだ…




次の日、ナルトはアカデミーへ、玉藻は暗部として任務が入ったため普段であれば二手に分かれて行動するのだが、この日に限って玉藻がナルトの傍を離れないと言い出してきたのだ。

「そんなこと言ったって、じぃちゃんからの任務じゃ断るわけにもいかないし…」

「じゃがしかし、何かあったらどうするのじゃ。…まぁ、主であればある程度の事は平気じゃろうが」

「だったら…」

「妾のカンが主を一人でアカデミーに向かわせたら危険じゃと告げておるのじゃ」

駄々をこねる玉藻の理由がカンと聞いたナルト。世間一般ではそんなカンは信じないと突っぱねるだろうが

「…玉藻のカン…結構当たるんだよな…」

頭を掻きながら答えるナルト。

そう、玉藻の何故だか分からないが、主であるナルトが危険な目に遭うというカンは良く当たっている。それも異性絡みが殆どなのだ。

だからこそ一緒について行きたい玉藻なのだが、三代目からの任務も大事であることも事実。

「…あっそうだ!玉藻お前この世界の玉藻と同化したって言ってたな」

「?そうじゃが…主よ、いきなりどうしたのじゃ」

何か閃いたのか、ナルトのいきなりの問いに対し疑問に思いながら答える玉藻。

「いや、同化したんなら分離も出来るんじゃないかなと思って」

「…フム…」

ナルトの閃きを聞き、一言呟いて何か考えている玉藻。

「主の十八番である影分身の術を使うかの。あの術であれば籠めるチャクラ次第で傷ついても実体化したままじゃし、元に戻った時にお互いで何が起きたか分かるしの」

「でも、影分身の術じゃ分身にもしもの事があったら…」

玉藻の意見に対し疑問を投げかけるナルト。

本来、影分身の術は実体のある分身体を出す上忍クラスの術で、一定以上の傷や怪我等を蓄積すると分身体は消滅してしまう。

しかし、籠めるチャクラ次第で分身体に傷や怪我に対する耐性を持たせる事が出来る。以前、ミズキに対して分身体に死体の役をやらせたナルト然り。

「心配無用じゃ。妾のチャクラ・妖力は昔の倍。つまり、分身体とはいえもう一人妾がいるのと変わりない。主よ、今まで妾が苦戦した相手はおったかや?」

「俺と俺に関わる異性達」

自信満々に問う玉藻に対し真顔で答えるナルト。

「…それは否定できぬ…主よ、その答え方はずるいぞ…」

「だって事実だし。でもまぁ、その例を除いて苦戦するとしたらあの変態ぐらいじゃない…玉藻…さん?」

「…ぐすん…」

「あー、ごめんだってばよ。玉藻、機嫌直してくれってばよ。この通り! m(_ _)m 」

「(`へ´*)フンだ…」

「玉藻ぉ~(ToT)」



その後、三十分以上かけて何とか機嫌を直した玉藻が、影分身の術を行い分身体が暗部の任務に、本体が『八卦封印式』でナルトの臍に戻り付いていく事でこの場を収めたナルト。

…アカデミーに行く前から大変なナルトであった…

「まぁ、自業自得だし…」

≪分かっておるなら少しは懲りよ!≫






『忍者育成アカデミー内庭』

「サクラちゃん、おっはよーだってばよ」

「うるさい」

ドゴッ

「ぐあっ」

「フン。あっ、サスケくーん、おはよー」

「おうおう、こりゃまた手痛くやられたな、ナルト」

「いてて…おっす、おはよーだってばよ、シカマル」

忍者育成アカデミーきっての美少女 春野サクラちゃんに声をかけただけで、文字通りぶっ飛ばされたナルト…に声をかけるシカマル。そのシカマルに返事を返すナルト。

いつものアカデミーでの出来事であり、ナルトの正体を知るシカマルと共にどうやったらナルトがアカデミー内でドベを演じる事が出来るかを話し合った結果、今の出来事が挙げられたのだ。

その少女は上記の台詞のように他の者に好意を寄せており、ナルトのことは眼中に無いので猛アタックしても後腐れないと言うことで意見が一致したのだ。ただ、毎度殴られるナルトとしてはどうかと思うのだが…

「…あの…おはよー、ナルト君」

「おはよーナルト。…しっかしサクラの奴、本当に容赦ないんだから」

「よぉ、ヒナタに いの、おはよーだってばよ。別に、これくらいどーってことないってばよ」

嫌でも目立つ騒動を起こしているのだから、自然を装いつつ近づいて挨拶を交わす面々。勿論、他にも数名ナルトに挨拶をする者もいて、その者達に挨拶を返す四人。

元の世界に置いても いの・ヒナタの二人が、ナルトの正体を知っているので、基本この四人でアカデミー生活を過ごす事が多い。だが、この日は違っていた…

「おはようございます。ナルト様」

「「「ナルト様!?」」」≪いきなり何なんじゃ、この小娘は…≫

ヒナタの背後から声がして、その台詞を三人して聞き返す。ナルトの中では今まで静観を貫いていた玉藻が呟いた。ただ、封印された状態の玉藻の声はナルトが許可しない限り基本的にナルトにしか聞こえていない。

声の主はヒナタの妹 日向ハナビであった。ナルト達は現在十一歳でアカデミー二年生。対するハナビは一歳違いで現在十歳、アカデミー一年生である。因みに、アカデミーは三年課程である。

そのアカデミー一年生のハナビからいきなり様付けで呼ばれたのだ。驚かない方がおかしいだろう。

「…ヒナタ…その子は…」

「…えっと…ここじゃ何だから…昼時間に屋上でご飯を食べる時に説明してもいい?瑠璃ちゃんも自由に話せないし」

「そうだな。何かすげーめんどくせぇ気配がプンプンするが」

質問しようとする いのに対し時と場所を変えて説明したいと申し出るヒナタ。その意見にシカマルが同意したので、一応その場はお開きになったのだが…

≪あの小娘の目…気になる…≫

玉藻はあの少女…ハナビの視線が気になっていた。某蛇女と同じような情熱的な目を…




そして昼時間となり、他のアカデミー生が思い思いの場所で昼食を取り始めるのだが、屋上では一つの修羅場が発生しようとしていた。

「で、この子ハナビちゃんよね?今朝の言動はどういう意味?」

「初対面の相手の名をちゃん付けで呼ぶのは止めてください」

…いのとハナビとの間で一瞬火花が散ったのは見間違いではないだろう…

「まぁ、確かにそうだが。ヒナタ…もしかしてこの子に話したのか」

「うん。お父様に説明してる所を聞かれちゃったんだ」

≪一応、瑠璃は止めたんだけど~。遅かれ早かれバレるんだからってヒナちゃん、ハナビちゃんに全部話しちゃったんだよね~≫

シカマルの問いに答えるヒナタと瑠璃。因みに、シカマルと いのはそれぞれ口寄せの契約をしている黒金・白金・玉尾を家に置いてアカデミーに来ていた。

「んで、何で俺の名前に様がついてんだってばよ」≪妾も同意見じゃ≫

皆が聞きたかった大きな疑問をナルトが聞いた。

「昔、私が霧隠れの里の忍びに攫われた時に、『白眼』でナルト様の顔を見た瞬間…」

…何となくこの先が予想出来た面々…

「…恋に落ちてしまいました」

頬を朱に染め体をもじもじさせながらはっきりと宣言するハナビ。

「…うそだろ…」≪…妾は頭が痛いぞ…≫

「…はぁー、めんどくせぇー…」

「…ヒナタだけならまだしも、ハナビちゃんまで…」

ナルト(玉藻)・シカマル・いのが三者三様の反応を見せる。

「そして、お姉様にも宣言したんですが…」

いつの間にか真顔に戻っているハナビ。この変わりようはやっぱり姉妹ですな…

「皆からナルト様を奪わせて頂きます」

「…へ?」≪…へ?≫

「…は?」

「…っ!調子に乗ってんじゃないわよ」

再びハナビからの衝撃発言に思考が停止しかけるナルト(玉藻)・シカマルと、遂に吠えた いの。しかし、大声で吠えた いのを一瞥したハナビは真っ直ぐナルトを見ながら

「私は今、ナルト様と話しをしに来ているんです。きゃんきゃん吠えるんなら他所でお願いします」

…ブチン…

…何…この嫌な音…

「…どうやら、小娘にはおしおきが必要なようね…ヒナタ、止める?」

「ううん。私も人の事言えないけど、話して分かるようなハナビちゃんじゃないから…遠慮なく殺っちゃって」

…あの…ヒナタさん…ルビが違ってません?

「…さて、お姉さんのお許しも出たし…殺りましょうか小娘」

「…はぁ、後悔しても知りませんよ。お・ば・さ・ん」

「………」

「………」

「…おい、ナルト。止めなくていいのか?」

「…どうして俺の周りにはこんな人達ばかりなんだ…」≪…ほぉ…≫

「…ナルト…それ…私も含めて?」

「…あーあ、俺 知ーらね」

「…(^-^)…」←注 ヒナタ

「…(-o-)…」←注 ナルト

「…(^-^#)…」←注 ヒナタ

「…(ToT)…」←注 ナルト




その後、屋上は無数のクナイや傷跡・何かで吹き飛ばしたような盛大な穴等があったとか…



…そして…

「…さて…主よ…覚悟は出来ておろうな?」

「…煮るなり焼くなり好きにして下さい…」

その夜、ナルトの家でも一騒動あったそうだが内容が内容なだけに割愛させて頂きます。




そして、今日がその三日目である。二人はこの日何度目かのため息を吐きながらやっと着いた火影執務室をノックして中に入った。

「おぉ、ナルトに玉藻殿よく来たな。…どうした二人とも何やらぐったりしておるようだが…」

「…じぃちゃん、気にしないでくれ…」

入ってきたのが二人だと分かり、机から顔をあげつつ声をかける三代目と返事をするナルト。

三日前とは別人のように疲れた様子の二人を疑問に思いつつ

「では、向かうかの」

といい二人を連れて通称 死の森と呼ばれる険しい森林地帯へ向かう三代目であった。




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話しを進めるつもりが思いっきり脱線してしまいました。

楽しんで頂けるか不安です…



[28551] NARUTO 時を戻りし者達-第11話-
Name: Wind◆425bdf5e ID:366b523c
Date: 2011/06/30 23:23
【第11話 四代目火影の生家】

三代目に連れられ、普段常人が踏み入る事がない死の森を突き進むナルトと玉藻。

本当にこんな所に家があるのかと二人が思い始めた時

「ここじゃ」

と三代目が指差す先に一軒家が…四代目火影の名に恥じぬ豪邸が目の前に建っていた。

「すっげー」

「まこと、見事な家…いや豪邸と呼んだ方が良いな」

ナルト、玉藻の第一声であった。

「いつまで眺めておるつもりじゃ。中を案内しよう」

「…あ、待ってよじぃちゃん。…ほら、行こう玉藻!」

「あぁ」

三代目に促され、家に入るナルトと玉藻。その顔からは、先程の疲れたような表情は消え失せていた。

玄関から居間、子供部屋や寝室らしき部屋、台所、風呂場、二階の書斎、地下の研究室らしき部屋、酒蔵(!?)、果ては中庭まで。豪邸の名に恥じぬ家作りである。

「にしても、中庭まであるとはな…」

「俺としては台所が気に入った。料理の奮い甲斐があるってばよ」

「中庭の方はミナトが薬草や毒薬などを育てるつもりじゃったといのいちから聞いたの。大方、何かしらの研究に使うつもりじゃったのじゃろう。台所に関しては、クシナ殿が料理好きじゃったからな。特に力を入れて設計しておったぞ。」

玉藻が中庭を見ながら縁側に腰掛けて、ナルトは台所の設備に目を輝かせながらそれぞれの感想を述べており、その感想に笑顔で答える三代目。

「♪~どんな料理を作ろうかな~♪」

「ノリノリじゃな、主よ」

「ナルトの料理好きは、母親ゆずりじゃな」

ナルトの様子を嬉しそうに見ている玉藻と三代目。

「でも、元いた世界で死の森のど真ん中にこんな豪邸があったなんて気付かなかったてばよ」

「わしがこの辺一帯に幻術をかけておるからの。おぬし達の元いた世界でわしが死んだあと、この家の財産などを狙う悪しき者共が喰い潰したんじゃろう」

ナルトの疑問に何気なく答える三代目。その瞬間一気に下がる室内温度。

(そいつ等、絶対見つけ出して血祭りにあげてやる!!)

(その者共、必ず見つけ出して嬲り殺しにしてくれる!!)

(…この二人の手を下賎な輩の血で染めさせん為にも…わしがこの手で!!)

…静かなる殺気を放ちながら三者三様の思いが交錯する居間であった…

「んで、じぃちゃん。この家に近づいてくるイノ・シカ・チョウのおっちゃん達やヒアシのおっちゃん、アカデミーの同期のみんなにアンコ姉ちゃん達中忍・上忍の先生達は何?」

今しがた放った殺気を吹き飛ばすお気楽な質問をするナルト。

「それは妾も気になっておったが…」

「うむ。預っておった荷物を運んでもらっておるんじゃよ」

「…それって個人的な用件だよな…」

…個人的な用件で人を動かすのはどうかと思うが…

「火影の特権と言うものじゃ。それに、任務と言えば断る術はない。無論、報酬はそれなりに高くしておるし、ナルト…おぬしに興味を持っておる者共に声をかけたしの」

抜け目ない三代目であった。

「それにこれからこの家に住むんじゃろ。色々とあっても損にはならないはずじゃ」

「んじゃ、ありがたく受け取っとくってばよ」




暫くの後、手に荷物を持つ者達が家の前に到着した。

勿論、それ以外の物を持って来ているのはご愛嬌だ。


「ここが、四代目火影様の家…」

「…成程、英雄と言われるだけあるな」

「すっげー、流石火影を名乗る人が立てる家は違うぜ。そう思うだろ赤丸」

「ワン」

「…フン」

等と思い思いの感想を言っているアカデミー生の一角。


「親父、ここには何度か来てるのか?」

「あぁ、母ちゃんとクシナさんの手料理を肴によくミナトと晩酌してたな」

「パパもよくママと来てたの?」

「もちろん。ミナトさんから何かの研究で使いたいからって薬草や毒草の育て方を聞かれててね。よく、お邪魔していたよ」

「子供に何の話をしてるんだ?」

「ぼく、お腹空いたな~」

等と事情を知る子供の質問に答える奈良家・山中家とそのことを聞いて疑問に思っている秋道家面々の一角。


「懐かしいな」

「お父様もここに良く来られていたのですか?」

「うむ。ここの縁側で見える月がきれいでな。ヒザシと共によく来てはミナト・クシナさんを交えて月見をしておった」

「…ヒザシ叔父様と…」

「…よくもぬけぬけと…あんなことが言えるものだ…」

≪ヒナちゃん、抑えてよ~≫

「…分かってるけど…ネジ兄さんもあんな物言いしなくても…」

「お姉様、人の心はそう簡単には変われません。劇的な何かが目の前で起きない限りは…」

「三人とも気にするでない。全て私に責任がある。どう思われ、どう言われようとも構わぬ」

「「…はい」」

≪は~い≫

等と複雑な家庭事情を話している日向家の面々。因みにネジの年齢は十二歳でアカデミー三年生。なぜこの場にいるのかというと…


「ガイ先生。ここが四代目火影様の家ですか」

「そのとーりだ、リー。英雄と呼ばれる方だけあって立派な家を建てられたものだ。お前達もそう思うだろネジ・テンテン」

「俺は別に興味は無い」

「ネジ!」

「…フン」

「もお…でも…本当凄い家ですね。ただ、何で私たちが荷物運びを手伝ってるんです?」

「それはだな…我が永遠のライバル・カカシから声をかけられたんだ。何でも『度肝を抜くような出来事が起こるだろうから』という何とも曖昧な誘い方でな」

「…先生、分かってるなら断ればいいじゃないですか」

「テンテン!ガイ先生に向かってなんて事を…」

「テンテンが言う事ももっともだ。だが、私のカンが此処に来るべきだと告げていてな。そのカンを確かめる為にも此処に来たという事だ」

「…ま、俺もガイとあんまり変わらないんだよね。火影様から任務と称して依頼されたんだけど、俺のカンも此処に来るべきだと言ってんだよね~」

「だからって、私達も誘うってのはどうかと思うけど…ねぇ、イルカ君」

「そうですよ。ここにはアカデミー生がいるから監督を兼ねて手伝ってくれだなんて。火影様にもこまったものです」

「…俺は別にアンコを誘ったつもりは無いんだけど」

「あん。細かい事は言いっこなしよ」

「…なんで私まで呼ばれるわけ?」

「紅も、どうせ暇だったんでしょ?」

「まぁ、否定はしないわ」

「んじゃ、いいじゃない」


アカデミー三年生の卒業試験に合格し、下忍としてチームを組む事になったネジ・リー・テンテンの上官であるガイと知り合いであるカカシによって芋づる式に手伝う羽目になった面々の一角。




「いつまで話してんだってばよ…」

「まったくじゃ。言いたい放題いいおって…」

家の前で話し込んでいる面々に声をかけ、自分達の存在を知らせるナルトと三代目火影。

「火影様が家から出てくるのは分かるけど、何でナルトまで一緒に出てくるのよ」

その声に気付き、一番目に話しかけてきた春野サクラ。

「何でって…ここ俺の家になるからだけど」

「…おい、ウスラトンカチ。寝言はアカデミーで言え」

その問いに答えるナルトに、今度はうちはサスケが突っ込む。

確かにアカデミーでナルトはよく寝てるけどその突っ込みはどうなの…

「うっせーぞ!バカサスケ!!ここは俺の父さん、母さんの家だ」

そのサスケに食って掛かるナルト。しかし、埒が明かないと思っていたらしく、ここが自分の父と母の家だと告げていた。

「ちょっとまて!?んじゃ、お前四代目火影の子供って事か」

「…ナルト、そうなのか?」

その言葉の意味に気付き、声をあげる犬塚キバと、その言葉を受けて問い詰める油女シノ。因みに、双方ともに木の葉の里に大きく貢献する忍び達の子供である。

「だから、さっきからそう言ってるんだってばよ」

「そうは言っていない。…なぜなら、ナルトお前の言葉には主語と述語が繋がっていないからだ」

ナルトの返答をバッサリ切り捨てるシノ。後ろでもシノの意見に頷いている者が多数ある。

目に見えて落ち込むナルトの肩に手を添える三代目。

「では、わしから説明しよう。先程からナルトが言うように、ここは四代目火影夫妻の家で、ナルトはその二人の息子である。だから、この家は血族であるナルトの物ということになる。理解頂けたかな?」

ナルトの出生を知る者及びナルトの正体を知る者は、初めからナルトが言ってる内容が事実である事を知っているので頷いているが、ナルトのことをアカデミー史上最低のドベであると認識していた者達にとっては衝撃的な内容なので思考が停止している者が少なからずいた。

「…それじゃ、この里を救った英雄の息子なんでしょ?なのになんであんなに白い目で見られたり虐げられてるの?」

実際自分の親がそうなのだからと、思いつつ一番の疑問を口にするサクラ。

「そりゃ、昔里を襲った九尾の狐を、その四代目火影夫妻がナルトの臍に封印したからだよ」

「それで、その封印された九尾がナルトの体を乗っ取って、いつ里を襲うか分かったもんじゃないから」

「そうなる前にナルトをどうにかしたいって思う大人達が、ナルトに嫌がらせをしてるの」

ナルトと三代目の前に立ちつつサクラの問いに答えるシカマル・いの・ヒナタの三人。その、とても同世代とは思えないような冷めた口調に他のアカデミー生は勿論、他の中忍・上忍も固まる。なぜこの三人がナルトの事を知っているのかという疑問も口に出せないくらいに…

因みに…事情を知る三人の父親は笑顔を浮かべながら心の中で苦い思いを抱きつつ、少女と特別上忍は笑顔で目の前の出来事を見ていた…

「三人とも、まだ出てこなくてもよかったのに…」

「バーカ。お前一人だけに苦しい思いさせられっかってんだ」

「そうよ。前にも言ったわよね…他の人達の気持ちも考えて行動しろって」

「もー。本当にナルトは猪突猛進なんだから…でも、そこが素敵なんだけど…」

「…わたしもその意見には同意するわ…」

「へいへい。ごちそうさまっと」

「ナルト。この者達がお前が言っていた者達か」

「うん。そうだよ」

「そうか…三人とも、苦労をかけるな。これからもナルトをよろしくな」

「あぁ」「「はい」」

周りを明らかに置いてきぼりにしつつ話しを進める五人。と、そこへ

「…主よ…いつまで待たせる気じゃ。放置プレイもほどほどにせんと妾も反動でどんな事をしでかすか分からんぞ。…ム…これはどうした事じゃ」

「…お前のせいだってばよ…」

ただでさえ、目の前の出来事を飲み込むので精一杯なのに家の中から見た目は二十台半ばの麗しい女性が現れ、よもやナルトに対しとんでもない事を言い出すのだから、この言動に免疫が無い者達は一人残らず現実逃避…立ったまま気絶していた。

…無論、一部の女性陣が食って掛かっていたことは言うまでも無い…


------------

家の外での第一ラウンド終了です。

楽しんで見て頂ければ幸いです。


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