FILE150:「“塀の中”の真実 その2」
2011年6月30日放送
7月5日(火)午前1:30〜<総合>(月曜深夜)再放送予定です。
ニュースや特別番組等の影響で、放送時間変更や休止の場合もございます。ご了承ください。
NHKオンデマンドで7月1日(金)午後6時〜配信予定です。
杉良太郎(法務省・特別矯正監)
爆笑問題が日本最大の府中刑務所に潜入するシリーズ第二弾。法務省特別矯正監の肩書きを持つ杉良太郎の案内で、さらなる“塀の中”の真実に踏み込んでいく。そこはまさに、現在の日本社会の縮図だった・・・。単独室のドアに貼られた「豚食禁止」や「ベジタリアン」などの表示。風呂場の壁の注意書きは、十数か国語で書かれている。府中には47か国550人の外国人受刑者がいるのだ。高齢化も深刻だ。行き場がなく、数百円の無賃乗車や無銭飲食で舞い戻ってくる者も多い。刑期満了で出所する受刑者に杉が「二度と戻ってくるなよ」と諭すと、「鬼!」と言われたという。寝たきりの受刑者を、刑務所職員が介護するケースも増えている。
そのほか、塀の中でも誰かをダマし続けずにはいられない詐欺師や、刑務所内でも増えるひきこもりなど、半世紀に渡り刑務所慰問を続けてきた杉ならではの、懲りない面々のエピソードが語られる。杉が「自分の宝物」だという、受刑者からの真情あふれる手紙の数々も紹介。刑務所は今後どうあるべきか?犯罪の根幹にあるものとは?爆笑問題と杉との塀の中のトークは熱を帯びる。
杉良太郎(すぎりょうたろう)
著書に「いいってことよ」「これこそわが人生」「人生すきま風のごとく 愛に生き、愛に傷ついて」などがある。
今回の対戦内容
杉良太郎(すぎりょうたろう)/爆笑問題
杉:受刑者の中にも高齢者が一万数千人いるんですね。この人たちは刑務所を出されると生きていけない。ここでしか生きていけないというような、まあ身寄りもいない。引き取り手もいない。体も病気でもうほとんど駄目だと。で、ある受刑者なんかは、職員が「もう二度と戻ってくるなよ」と言うと、「先生、そんなこと言わないで置いてください」と。「駄目だ」と。「先生お願いします、私が病気なのを知っているでしょ。」「駄目だ。ここは置いておけないんだから、もう刑は終わったんだ。」「何とか駄目でしょうか?」って。「駄目」って言ったら、もうこの受刑者怒ってね、「鬼!」って。
太田:出してやるって言っているのに。
杉:「鬼!」って言って怒って出ていった。そしてもうすぐに無銭飲食とか無賃乗車で、すぐ刑務所に戻ってくる。
太田:戻るの簡単ですもんね。
杉:簡単に戻ってきちゃう。
結局は高齢者を抱えてね、この刑事施設っていうのは、将来はまあ後期高齢者の介護施設になってしまうかもしれない。
先生の対戦感想
杉良太郎(すぎりょうたろう)
二人ともすごいまじめで礼儀正しくて、正直面食らったね。だからやっぱり、人というものは、自分の目で見て聞いて、判断すべきものだと。人から聞かされたものとか、そういうものでは全く計り知れない。実際に人物に会って、印象が全く違った。二人とも好青年でした。
爆笑問題の対戦感想
田中:僕はこのすぐそばの府中競馬場にはよく行くんだけど、こういう世界もあるんだなって改めて思いました。しかし広いですね。
刑務所の生活はテレビなんかで見たことはもちろんあるので、そんなに大きな印象との違いということはなかったんだけど。まあ大体こんな感じだろうなっていうのはあったし。でもまあ改めて、これは結構いい暮らしだな、みたいな気がしたね。もちろん精神的なものも含めて自由がないっていうことはあるんですけど、食事だとか生活上の設備だとかっていうことで見るとそういう気がする。一部の受刑者が、いったん出所してもすぐまた戻ってくるっていうのは、まあそうだろうなって思っちゃいますよね。こんなに環境が良くてどうするんだってどうしても思いますね。
あとは杉さんがやっぱり、それこそ半世紀以上も慰問を続けてたり、この間も被災地支援に行ったりっていうのは見ていて、そういう方なんだっていうのは知っていたけど、杉さんは軽い気持ちではやっていないなっていうのをすごく感じました。それこそライフワークというかね。芸能生活より刑務所慰問歴のほうが長いっていうのは本物ですよね。
太田:刑務所に限らず、人間はどんどん、少しでも環境を良くしようとしていくんだけど、何かそれが逆に人間を苦しめちゃうっていうか。そこに依存する者をつくり出しちゃったりするという。便利になったり、住み心地が良くなったり過ごしやすくなったりっていうのは、人間を幸福にしてくれるはずなんだけどそのことが逆に人間を苦しめるっていうかね。そのバランスの難しさというか、矛盾っていうのを、今回の刑務所でも感じにましたね。
杉さんは、何なんだろうな。正義感なのかな。どうしてあそこまでできるのか、不思議ですね。でもざっくばらんな方でね、お話は面白かったです。
ディレクター観戦後記
下見と取材で計3回、日本最大の広さを持つ府中刑務所に入らせていただいた。一生足を踏み入れることがないであろう場所、刑務所。貴重な経験ではあったが、その広大さと、塀を境に全く違う社会が存在することに少しばかりショックを受けた。例えば、廊下で受刑者と遭遇すると受刑者は全員壁を向き直立不動の姿勢をとり、私たちとぜったいに目を合わせることはしない。訪問者と目を合わせることは受刑者には許されないのだ。
さらに、見せていただいた単独室や共同室は想像と違い、小奇麗な空間だった。
人の生活の匂いがそこにはあるが、受刑者の私物は決められた狭い棚と黒いバッグひとつだけに入る量しか許されないなど細かい規則がある。当然だが、刑務所に自由はない。行動の自由を制限されるということがどういうものであるのか。刑務所を出た時に感じた安堵感に、それを実感した。
今回は、今まで例のない刑務所取材であったが、多くの府中刑務所職員の方々の全面協力をいただいた。あらためてここで御礼を申し上げます。
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人間
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