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臓器売買:病院に虚偽報告書 逮捕の医師、弁護士通じ 臓器提供「金銭授受ない」

 生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された開業医、堀内利信容疑者(55)が宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で移植手術を受ける際、「腎臓提供は自発的で、金銭授受はないと思われる」という弁護士作成の報告書を病院に提出していたことが関係者の話で分かった。病院は報告書を判断材料の一つとして移植を実施していた。警視庁組織犯罪対策4課は、堀内容疑者が不正を隠蔽(いんぺい)する目的で弁護士に報告書作成を依頼した可能性があるとみて、経緯を調べている。【川崎桂吾、前谷宏、浅野翔太郎】

 堀内容疑者は指定暴力団住吉会系組員、滝野和久容疑者(50)からドナー(臓器提供者)を紹介されたが、金銭トラブルになり移植を断念。その後、別の住吉会系組員から新たなドナーとして紹介された男性(21)と昨年6月に養子縁組し、宇和島徳洲会病院で手術を受けようとした。

 関係者によると、堀内容疑者は同月、東京都内の弁護士が作成した報告書を病院の倫理委員会に提出。報告書は、弁護士が堀内容疑者とドナーから別々に聴取した内容をまとめた体裁で(1)ドナーは腎臓を提供したいという自発的意思を有する(2)意思形成にあたり、金銭的、財産的誘因は存在しないと思われる--と結論付けている。

 報告書で堀内容疑者は「ドナーは長女の知人。16歳で親元を離れて一人暮らしをしていたので、家族ぐるみで付き合うようになり、養子として迎え入れたいと考えた」と説明。ドナーの男性は「感謝の念を持っていた。病気を知って臓器提供を申し出たが、(未成年だったので)なかなか承諾してくれなかった」と話したという。

 毎日新聞の取材に同病院は「報告書を一つの判断材料にした」と回答。移植は報告書提出直後の昨年7月に実施された。だが、捜査関係者によると、堀内容疑者がドナーを紹介されたのは移植直前で、報告書の内容は虚偽の疑いが強い。弁護士は「堀内容疑者の依頼で2人から聴いた話を文書にした。(虚偽とは)思い至らなかった」と話している。

毎日新聞 2011年6月26日 東京朝刊

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