昨年、琉球大学大学院医学研究科で、男性教授が実験データを不正に使い回ししていた件で、再調査に乗り出した学外の調査委員会は、岩政輝男学長が共著者となっていた論文についても不正だと結論付けた。懲戒解雇処分とされた男性教授が6月に復職するという和解成立に続き、同大医学部の教員らによる調査委員会の判断が覆る“ドタバタ劇”に、学内から「不信感が募る」と批判の声が上がっている。
一方、今回のケースからは、論文における共著者のあり方など学術研究が抱える問題も浮かび上がった。
実験なく「共著」
同大の最高意思決定機関である教育研究評議会は4月下旬、前調査委(同大医学部教員らで構成)が同論文を「不正だと認められない」とした判断は調査不十分だとして再調査を求めた。
これを受け、今回の調査委は、病理学、分子細胞生物学など学外の研究者5人で立ち上げ。約2カ月にわたり、関係者からの聞き取りに加え、実験ノートやデータファイルなど数千件の資料から照合作業を行い、実際に実験していない内容の掲載を確認した。
28日の教育研究評議会では、学内の調査委員長だった佐藤良也理事(前医学研究科長)も「調査不十分だった」ことを認めた。山崎秀雄副学長(教育・研究・社会連携担当)も「関係者への事情聴取が主流であり、数が膨大であったために(調査を)徹底できなかった」と釈明した。
同評議会に出席したことのある同大教員は、一連の対応について「すべて医学部で決められ、報道でようやく概要を知った学内関係者も多く、不信感を募らせている」と疑問視する。
他大にも類似例
不正と判断された論文の共著者だった岩政学長。「実験を担当したわけでもなく、出版されて初めて共著者だと知った」と、事前に断りがなかったことを挙げつつ「名前が載っている以上は申し訳なく思い、管理責任をとって給与の一部を返納した」と謝罪した。
共著のあり方について、同大のある教員は「医学部は慣例的に、実際に実験に携わってなくとも、共著者に名前を連ねるケースが多い」と背景を説明。2007年に論文データ改ざん問題が発覚し、共著者だった男性准教授を戒告の懲戒処分とした鹿児島大学医学部・歯学部付属病院など、他大学でも類似ケースがあると指摘した。
琉大は今回新たに不正と見なされた論文について、掲載誌からの撤回を進めるほか、学内に「研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」を設け、再発防止に取り組んでいくとしている。(社会部・渡慶次佐和)