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駆動系超私的解説
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はじめに
現在、原付クラススクーターの多くが採用している機械式無断変速AT(Vマチックというらしい)について、ここでは筆者の自分なりの解釈の再確認、また同じように楽しもうとする方への参考資料(?)の意味で私的解説を述べてみたいと思います。
Vマチックは、原付の少ない馬力をなるべく無駄なく扱いやすく動力として引き出すために考え出されたオートマチックトランスミションです。ATとはいっても電子制御などは一切使わず全てが遠心力とバネ、カムといった機械的な要素で構成されています。各メーカーは長年この方式を使い続け、今日では様々なアレンジが車種毎に施されるようになりました。
ここで面白いのは、このミッションの原理が比較的単純であるためかちょくちょく互換性があることです。前途したように様々にアレンジされた駆動系が存在していますから、それらの部品をイレギュラーに組み合わせることで自分なりのアレンジを創り出すことができる可能性があるということなのです。多くの愛好家がスクータの駆動系に夢中になりやすいのも、こういった事情によるのではないかと、筆者は考えています。
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spl.thanks! このページをつくるのに参考にさせていただいたページです。是非お立ち寄り下さい。
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まずスクータのミッションの代表的構成要素を挙げてみましょう。
●プーリ変速部分
┣プーリー
┣ランププレート
┣ベルト
┣セカンダリ(トルクカムを含む)
┣センタースプリング
┣ウエイトローラー
┣プーリーボス
┗ボスワッシャ
●クラッチ
┣クラッチシュー
┣クラッチスプリング
┗クラッチアウター
●ファイナルギア
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上記の要素がおのおのどのような役割を持つのか、という点については後述することとしますが、注意しなければならないのはこれらの要素はお互いに深い結びつきがあり、どれかひとつの変化が全体の動作に影響を与える場合があるという事です。
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【1.発進:エンジン回転上昇→変速開始&クラッチIN】
実際にVマチックの駆動系の発進時には、まずエンジン回転の上昇に伴ってプーリー変速も開始されます。これらの相乗効果でセカンダリ側の回転数が増加し、セカンダリと一体になっているクラッチも回転します。
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【2.トルクカム動作開始】
クラッチの回転が一定を越えると、クラッチシューがアウターと接触しクラッチアウターに動力を伝達する。ここで初めて走行負荷が駆動系に加わります。
走行負荷が加わるとクラッチが滑るのと同時にセカンダリの1部であるトルクカムが動作し、トルクカム・センタースプリング・プーリーの相互作用によってプーリー変速が制御されるようになります。
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【3.加速】
この時、実際のフィーリングとしてはアクセル開と同時にエンジン回転が上昇、徐々にクラッチがつながりつつ回転数は一定を保ったまま加速していきます。
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【4.変速終了→再びエンジン回転上昇】
加速の最中、設定によっては回転の上下がありますが、一定の速度に達すると変速が終了しあとはエンジンの回転数上昇に従って速度が伸びるようになります。
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【5.アクセルを閉めると】
減速時には、アクセルを閉する事でエンジン回転数が下がろうとします。駆動系は走行負荷から解放されるため、あとはウエイトローラーにかかっている遠心力がエンジン回転の下降に伴って減少していき、ある程度回転が落ちるとセンタースプリングに押し戻されて最初の状態に戻っていきます。
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【!注意】
注意したいのは、変速時は必ずプーリー、センタースプリング、トルクカムの影響が相互作用をもって動いているということです。ですから、どこか1カ所を変更した場合にも全体的な影響が出る可能性があるかもしれないという事です。
また、変速範囲の大きなプーリーを使用する場合、セカンダリの開き方が足らなかったりベルトの長さが足らなかったりした場合にプーリーの軸がセカンダリの軸を不必要に引っ張る場合があります。これにより駆動系に余計なロスが発生し、【4】の行程が十分に行われない場合があります。
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多くの場合、まず注目されるのはプーリー変速部分ではないでしょうか。確かに最も目に付きますし、ハイプリ等はメジャーなチューンドパーツのひとつですね。諸元表に出てくる「変速比」を司っている部分です。
プーリに内蔵されたウエイトローラーが遠心力で動くことによりプーリを動かし、プーリのベルトを挟んでいる部分が広くなったり狭くなったりすることでベルトと接している部分の直径が変化してプーリー比が変化します。プーリーが動いている最中はスクーターが加速している最中であり、最もエンジンの馬力が必要とされる時といえます。
最初、プーリーはセンタースプリングによって抑えられている状態になっています(最もローギヤ)。遠心力がウエイトローラーに加わるとこの力関係が崩れて、プーリーが動き出します。ウエイトローラーを軽い物に変更すれば働く遠心力が小さくなり、相対的に高いエンジン回転数でプーリーが動くことになります。逆に重い物に変更すれば低いエンジン回転数でプーリーが動きます。また、センタースプリングを変更すればウエイトローラーにも変更が必要でしょう。
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Vマチックでは遠心力を利用して自動でつながる自動円心クラッチを採用しています。回転の上昇に伴う遠心力の変化を利用して、動力伝達を制御しています。
クラッチスプリングはクラッチシューを常に引っ張っており、シューにかかる遠心力がクラッチスプリングの力にに勝りシュー自体を外に押し出そうとすることでクラッチアウターと接触し動力伝達を開始します。遠心力を利用するので、クラッチスプリングが強ければクラッチ動作回転数が上がり、弱ければ下がります。また、クラッチシューの重量が軽ければ高い回転数で、重ければ低い回転数で動作することになります。
クラッチの動作に関しては「如何にクラッチシューをアウターに接触させるか」という点も重要になってきます。例えばシューとアウターの接触面積が小さければ接触が弱く滑りやすくなります。考え方は様々なのですが、”ガツン!”というつながりかたを求めるならば、クラッチシューを細かくチェックして接触部分をペーパーで整形して接触面積を増やすという方法も有効とされていますし、逆に回転数を高めるためにわざと滑るようなセッティングにする場合もあるそうです。
注意しなければならないのは、クラッチとエンジンの間にプーリ変速部分があることです。このため、プーリ変速部分の変更がクラッチ動作の回転数に影響してくる場合があります。特にプーリーボスやボスワッシャを変更して僅かにプーリー比を変更しても影響が出る可能性があります。プーリ自体の影響もあるでしょう。
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また、重要な要素としてセカンダリの存在が挙げられます。セカンダリには、前途のプーリーの動きやセンタースプリングの働きと共に変速全体を制御しています。機構的には、セカンダリがプーリの変化に応じて開く際に少しだけ”ねじれ”て動くようになっており、タイヤの方から伝わる走行負荷によってこの”ねじれ”る力が発生するのでこれを利用してプーリの動きを抑えています。セカンダリを手にとって動かしてみると、その”ねじれ”がよくわかると思います。この”ねじれ”をプーリーを抑える力に変換する比率が、車種によりちょくちょく変更されている場合があります。
プーリ変速部分やクラッチもそうですが、セカンダリは変速機構全体の要素のひとつですから、変更する際には全体での影響も考慮するべきでしょう。
他にもプーリーに刻まれたウエイトローラのガイド(プーリー裏側の坂になった溝)の形状も全体に影響があります。
セカンダリの性質やガイド傾斜は目に見えるデータが少ないので表現が困難なのですが、実際に走行してみてのフィーリングやタコメータを使って走行中の回転数の変化を読みとることで変化を実感することができると思います。
また、プーリーフェイス(プーリーのベルトと接触するツルツルの面)の角度を標準値から変更して(旋盤で削ったりして)ベルトに対する直径の変化を大きくする場合もあります。

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ファイナルギアは、Vマチックからタイヤへ動力を伝達する部分です。一般的にVマチックはエンヂンの発生する回転の最も速い部分に同調して高速で動いていますから、それを走行に適した回転数に変換する部分と考えましょう。
ただ、この部分については互換性のあるエンジンでも細かくレシオを変更している場合があります。例えばjogZRとjogZ2は同じ馬力のスポーツタイプですが最終減速比は僅かに違っています。DioZXとDioSRでも同様です。これらを利用して、好みの最終減速比を流用品を使ってチョイスするのも良いでしょう。タイヤを変更し直径を変えた場合にも有効かも知れません。
最終減速比が変化すると走行負荷も変化する場合がありますから、プーリー変速部分の設定変更の必要が出てくるでしょう。
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前途のように各部はお互いに結びつきを持っていますから、部分的な変更をしたい場合は他への影響を考慮するべきでしょう。といっても、しっかりとしたデータがない以上は一度に全てを把握することは困難です。そこで、あえて変更点は1つずつとし、影響を考慮し走行・確認しながら進めましょう。特にタコメータを使用すると走行中のエンジン回転数の変化がわかりやすいので駆動系の動きを考えやすくなりますから、推奨いたします。
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プーリ比を決定づける要素としては、前途のようにプーリー、プーリーボス、ボスワッシャ、そしてベルト長・幅等があります。市販の社外品プーリではこれを如何にワイドレンジとするかを売りにする場合もあるようですが、それだけに囚われずに範囲の狭いプーリーを使った場合の、変速のフィーリングにも目を向けてみましょう。特にチャンバーの使用によりトルクバンドが狭くなり調整がとれない場合とか、いくらハイレシオにもっていってもエンジンのトルクが至らず逆効果になる場合もあり、必ずしもワイドレンジが好結果をもたらすとは限りません。
純正プーリーでも種類があるのですが、目に見えてわかりやすい部分ではウエイトローラーのガイドの始まる点・終わる点が変更されている物があります。前途したように必ずしもワイドレシオが優れている訳ではないという理由から、セッティングのためにこういった物が存在しているのだと筆者は考えています。
プーリーボス及びボスワッシャは、それらを合計した長さがプーリ比に関係してきます。この部分はプーリの軸であるとともに、ランププレート(プーリの最もローギヤ側の出発点を決定する要素)とドライブフェイスの間隔を決定する役目を持っています。ボスワッシャは比較的交換が容易なことから、ウエイトローラーと並んで最終的な微調整に使われる事もあります。この部分が長ければプーリー比全体がローレシオ、短ければハイレシオになります。
また、ボスやボスワッシャを必要以上に増減させると、次第にセカンダリとプーリの間が直線でなくなってきます。構造上ある程度は仕方のない事なのですが、場合によってはこれが変速に悪影響をもたらし「変速ムラ」が出る事があるそうです。 |  |
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ベルトの長さと幅も、プーリ比を変更できる要素です。プーリーやボスを不変とすれば、短かいベルトはハイレシオ傾向になりますし、長いベルトはローレシオ傾向になります。また幅が広ければプーリーボスを短くするのと同様にハイレシオ傾向になります。ただベルトは消耗が比較的激しく、幅は次第に減ってきますし材質そのものも次第に劣化してきます。
元々はゴムの部分がプーリーやセカンダリにしっかりグリップすることで動力の伝達をしているのですが、Vマチックの場合は側面の接触面積が大きいことや変速に際して横方向に積極的にスリップさせる(プーリーやセカンダリの上で上下するため)という動きをするので、あまりグリップが良すぎても逆にロスが発生するそうです。そのため、ある程度劣化したベルトが好まれる場合もあるようです。 |
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センタースプリングには、自由長(組み付けていない状態での長さ)が長く線径が細い物と自由長が短く線径が太い物があります。これらは変速途中からのバネレートの変化という点において、違った性質を持つことになります。
図Aにおいて、セカンダリ側直径が縮まるときセンタースプリングも縮められることになります。例えばAの寸法を50mm、Bの寸法を30mmとすると、変速中に20mm縮むことになります。バネレートが0.1kg/mm(1mm縮めるのに0.1kgの力が必要)だとすると、20mm縮めるには2kgの力が必要になります。
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ここで、自由長とバネレートの異なる2種類のスプリングを図Aのセカンダリに組み込んだ場合を考えてみましょう。ひとつは自由長100mm、レート0.1kg/mm、もうひとつは自由長150mm、レート0.05kg/mmとします。図Aでは組み込んだ場合にセンタースプリングは50mmまで縮められますから、100mmの方は50mm縮めるので0.1×50=5kgで抑えられます。150mmの方は100mm縮めるので0.05×100=5kgとなり、同じ強さになっていますね。つまり、変速の最初の段階ではどちらも同じ回転数で変速が始まる訳です。
が、変速が進んで30mmまで縮められた場合はどうでしょう?100mmのものは、70mmの縮みですから0.1×70=7kgの強さになっています。これに対して150mmのものは120mm縮められますから0.05×120=6kgになってしまいます。センタースプリングの強さはどの回転数で変速させるかという事に深く関わってきますから、即ち、変速の初期はどちらも同じ回転数で変速が始まっても後の方では100mmのスプリングを使用した場合はより高い回転数にならないと最後まで変速できないのです
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[※注:この説明は、ヤマハ車を例にしています。他社では他の考え方をしている場合があります]
↓【参考例:ヤマハFCカム(?)】
 
トルクカムの溝は、多くの場合2段階に角度が変化しています。ベルトにあたるフェイス面から遠い方が変速の前半を司り、近い方が後半を司っているのです。それぞれの溝の角度が、ベルトに対して水平に近ければ近いほど、変速は抑えられる傾向になりローギヤ(高回転)傾向を維持したまま加速するようになってきます。
例えば図Bのように後半から変速しやすくなる角度の構成の場合は、まず0からの加速にて前半の溝に沿って動くので、加速と同時に回転数を増加させます。ここである程度の回転を上げたら、その状態のまま後半の溝にさしかかるように調整されています。後半の溝は変速を抑える効果がないためにその時点から回転数は上がらなくなり、同時にプーリー比の変化が進むのでどんどんシフトアップして速度が上がります。場合によっては走行負荷に負けてエンジン回転数が下がる事もあります。
また、センタースプリングには前途したように線径と全長の関係から最初は同じ力で動き出しても後半からレートが強くなるものとそうでないものがあります。後半にレートが強くなるタイプ(自由長が短く線径が太い物)の場合は、丁度図Bの様な溝形状と裏腹のフィーリングを持つことになるため、双方を組み合わせてバランスをとっている場合が多いようです。
逆に、溝形状が図Bと違って直線的な形状の場合は、センタースプリングのレート変化の影響をもろに受けることになるために、ウエイトローラーにもっと強い遠心力をかけなければ変速が進まなくなる(回転数が上がっても満足に速度があがらない)場合があります。このような場合では、前述とは逆の性質を持つセンタースプリング(自由長が長く線径が細い物)と組合わせる事でバランスをとるようです。
実際にはこれらの中間的な仕様のものもあります。
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←【参考例:ヤマハ24Gカム】
※前半・後半とも傾斜がついており、変速中は常にトルクカム効果があります。
因みに、前半と後半の溝のきりかえをどの様にしてエンジン回転数と調整するか、という事なのですが、これはウエイトローラーの重さををほんの少しずつ(市販のWRでは当てはまらないほど本当にすこしずつだそうです)変更することで見つけると言われています。あきらかにずれてしまっている場合には、セカンダリそのものとかセンタースプリングから見直す必要があるという事かもしれません。
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ベルトの長さが違ってくると、セカンダリに対してどこまでベルトが食い込んでくるかが違ってきます。これを逆手に取り、セカンダリの使いたい部分に照準をあわせるために積極的にベルトの長さを変更するといった例もあるようです。ただプーリーの変速範囲によっては無理が生じることもあり、これもワイドレシオを敢えて追求せず、フィーリングやセッティングを重視するといった考え方に通じる部分があると筆者は考えています。
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セカンダリのトルクカムの反対側、つまり溝にはまるピンの位置についても車種により少々違いがあるようです。本来はベルトの幅に合わせるなどの考え方から造られたバリエーションかもしれませんが、これを利用して溝の切り換えポイントを任意に調整するという方法もあり得るのではないでしょうか。
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通常、加速時には駆動系を総動員してエンジン性能を引き出すための働きをしていますが、減速時、とりわけアクセルOFF時はどうでしょう?一般的にはエンジン回転の減少に伴ってウエイトローラーにかかる遠心力も減少するため、センタースプリングの力によってプーリー変速全体がローギヤになってくると言われています。が、一説にはこれが上手くいかず、プーリー比がなかなかローに戻らないという現象があるそうです。この原因として、ベルトの寸法安定性が関連していると聞いています。アクセルOFFにした時点でベルトにかかるテンションが低下し、ベルト自体の安定性が悪いと外へ外へと逃げる現象があるらしいのです。
筆者は残念ながらこの現象の解決方法について有効な手段を知りませんが、一般的にはセンタースプリングを強い物と交換(もちろん他の部分の見直しも併せて行うことが前提)することで対処できると言われるようです。ウエイトローラーにかかる遠心力は回転数の2乗に関係してくると仮定すれば、センタースプリングを強く、ウエイトローラーを重くという事を行った場合には遠心力の変化が大きくなりますから、回転数が下がったときのプーリー側の力の抜けかたも大きくなりセンタースプリングの力で押し戻しやすくなる、という理由がなりたつでしょうか。しかしながらこの現象は加速時にも起こりうるわけで、遠心力の立ち上がりが急激になることで加速のフィーリングに影響があるかもしれません。
また、この動きに対する能動的な対処法として、いわゆる「ブレーキ引きずり走法」があります。これは、コーナリング時にリヤブレーキをかけながらアクセルを開けることで意図的に駆動系を高負荷状態にするという運転方法で、これによりベルトにテンションがかかり元の変速中の状態に戻すことができるわけです。
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クラッチの動きは前途したように遠心力とクラッチスプリングの引っ張り合いによって制御されています。ここでアクセルOFF時のウエイトローラーにかかる遠心力の話と同様、遠心力が回転数の2乗に関係すると仮定してみるとどうでしょうか。
回転数が一定の値を超えた瞬間から、遠心力がスプリングに勝りクラッチミートを始める訳ですが、クラッチシュー重量が重ければ重いほどミートして以降の圧着力は大きくなります。これにより滑りを抑えてよりつながりやすいクラッチになるとも考えられるのですが、マイナスの効果として慣性が大きくなり回転の上がり方そのものが抵抗を受けて遅くなってしまい、加速フィーリングに影響を与える可能性もあります。また、クラッチシューの摩擦材そのものについても、必要以上の力が加わったところで摩擦係数の上がり方はそう変わらないという事もあり得ます。
このような理由からか、敢えて重いクラッチというのはあまり例が無いようで、それよりは摩擦材とクラッチアウターの接触面積を増加させるための工夫が有効という事のようです。
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