金融委が家計債務対策、庶民の融資獲得困難(下)
■政策主導でローン抑制
政府は銀行が高リスクの融資を行えないように誘導する方針だ。年収の5倍を超える債務を抱える人やローンを3件以上抱える人に対し、銀行が追加融資を行った場合、銀行の財務健全性を判断する国際決済銀行(BIS)基準の自己資本比率を算定する際に、不利益を受けることになる。
また、銀行は現在、債務者の27%に当たる総負債償還比率(DTI)規制の対象者以外には、ローン審査をしっかりと行っていないと指摘されている。このため、担保付き住宅ローンの審査時に申込者の所得証明資料を確認し、債務返済能力を細かくチェックすることを銀行に求める。
ノンバンクに対する規制も強化する。カード会社の場合、経営規模の行き過ぎた拡大を防ぐため、総資産が自己資本の一定倍数を超えないようにする「レバレッジ規制」を導入する。今年3月末現在で、カード会社の総資産は自己資本の4.1倍だ。基準値を何倍に設定するかは決まっていない。
政府はクレジットカードを使用した場合よりも、チェックカード(デビットカード)を使用した場合の所得控除を拡充し、チェックカードの使用を促す方針だ。預金残高の範囲内でのみ使用できるチェックカードの利用を促すことで、クレジットカード債務を減らすのが狙いだ。現在の所得控除上限は、チェックカードが25%まで、クレジットカードは20%までとなっている。
■来年の選挙を意識、対策を強化
しかし、今回の対策は金錫東(キム・ソクトン)金融委員長が「市場から厳しすぎると言われるほどの対策を発表する」と述べていたのに比べると、内容がかなり緩和された。家計債務が一定限度を超えないようにする総量規制などが導入されなかった上、固定金利型融資についても、今後5年間に段階的に拡大するというように猶予期間が設けられた。
金融業界では、来年の選挙を控え、金融当局が規制強度を調節したという観測が出ている。金融業界の幹部は「強硬な対策を講じた場合、短期的に庶民層が大きな被害を受けるため、選挙で悪材料となることを懸念したようだ」と述べた。与党が一連の対策に難色を示していることから、金融委は与党に報告はしたものの、政府・与党協議を経ずに対策発表に踏み切ったという。
羅志弘(ナ・ジホン)記者
孫振碩(ソン・ジンソク)記者