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ツァイス地方編(6/29 33,34,35話修正)
第三十三話 ノバルティス博士誘拐事件!
<ツァイスの街 中央工房 工房長室>

新型エンジンの設計図が盗まれたとの報告を受けたマードック工房長は、ヨシュアとエステルとアネラス、そして設計図を最後に見たと言う設計士のフーゴと設計主任のイゴールを工房長室に呼び出した。
設計図はリベール王国の友好の証としてエンジンと共に帝国と共和国の両方に進呈される事になっていた。
フーゴとイゴールは、盗まれた時の状況をマードック工房長とエステル達に説明し始める。

「僕達は設計室で新型エンジンの設計について会議を行う予定だったんだ」
「それで設計室のデスクの上に、設計図を広げておいたんじゃが……」
「工房船のライプニッツ号とアルセイユが予定より早く空港に到着してね、僕達は全員そちらに行ってしまったんだ」
「じゃあ、設計図のあった設計室には誰も居なくなったの?」
「ああ、誰か一人でも残っているか、金庫に設計図をしまって居たりすれば良かったんだ」

フーゴは悔しそうな顔でエステルの質問に答えた。

「設計図のデータはカぺルにも記憶してあるから、その点は問題は無いんじゃ」
「それなら、設計図をすぐに作り直す事ができる。やれやれ、外交問題に発展せずに済んだか」
「よかったですね」

イゴールの言葉を聞いて、マードック工房長がホッとした表情を浮かべると、アネラスも笑顔になった。

「でも、良くない組織の手に渡ってしまったら悪用されてしまうのではないですか?」
「そうなんだよ」
「むむ、それはマズイ事態だな」

ヨシュアの言葉にフーゴもうなずくと、マードック工房長の表情は再び曇った。

「でも、どうして気付かれないように設計図を盗んだのな?」
「きっと、あの小火騒ぎは犯行前の下見をするために起こしたんだと思うよ」
「ええっ、ラッセル博士の実験のせいじゃないの?」

ヨシュアの推理を聞いてエステルは驚きの声を上げた。

「きっと、みんなそう思って詳しい調査はしないと考えたんじゃないかな」
「確かに取るに足らない事件として処理してしまったな、出火元の調査すらしていない」

マードック工房長はヨシュアの言葉に納得したようにうなずいた。

「では設計図を盗んだ犯人は中央工房の内部事情に詳しい人物か……」
「ええ、関係者を疑うのは心苦しいですが」
「いや、聞き込みも遊撃士の大事な仕事だろう」
「そうですね」

マードック工房長に言われてヨシュアはうなずいた。

「工房長、ワシらはまたカぺルから設計図のデータをプリントアウトして、会議を行いたいと思うんじゃが」

しびれを切らしたようにイゴールがそう言うと、マードック工房長は困った顔で返事をする。

「仕方無い、アルセイユもツァイスに来ている事だしこの機会を逃す手は無いな」

イゴールとフーゴはマードック工房長に一礼をして、工房長室を出て行った。

「それでは、僕達はまずアガットさんとレーヴェ兄さんに小火騒ぎの時怪しい人を見なかったか聞いてから、中央工房の人達に聞き込みをしたいと思います」
「ああ、なるべく作業の邪魔にならないようにな」
「任せて下さい!」

エステルは胸を張ってマードック工房長に答えた。

「エステルは、何かをいじって壊してしまいそうな気がするよ……」
「だ、大丈夫なのかね?」

ヨシュアのつぶやきを聞いて、マードック工房長が慌てた様子で聞き返した。

「いざとなったら縄で縛って動きを止めますよ」
「ヨシュアってば、ひどいわ!」

サラッと言ったヨシュアにエステルが顔をふくれさせて言い返した。

「そうだよヨシュア君、それはやりすぎだよ」

アネラスもエステルに同調して、少し怒った顔でヨシュアに詰め寄った。

「ごめんエステル、言いすぎたよ」

謝ったヨシュアの姿を見て、アネラスは側に立っていたエステルの手を取るとヨシュアの手に握らせる。

「ほら、こうしてヨシュア君がずっとエステルちゃんの手を押さえていればいいんだよ!」
「い、いやそれはとても恥ずかしいと言うか……」

ヨシュアとエステルの顔は耳の先まで真っ赤になった。

「こほん、じゃあよろしく頼む」

マードック工房長も手を繋いだエステルとヨシュアから目を反らしてそう言った。
エステルとヨシュアは照れ臭そうにお辞儀をしてアネラスと共に工房長室を出た。



<ツァイスの街 中央工房 廊下>

エステル達が工房長室を出ると、青い顔で怯えた様子のジミーが近づいて来る。

「良かった、遊撃士さん達が居て助かったよ」
「どうしたの、そんなに怖がって?」
「待っている間に工房を見て回って居たら、突然持っていた《銀露の宝珠》が光り始めたんだ」
「ええっ、工房の中に危険な物があったの!?」
「すると白衣を着た金髪の女性が、とても怖い顔をして赤毛の青年を追いかけていたんだよ」

ジミーがエステルの言葉にそう答えると、エステルとヨシュアはため息をつく。

「それってもしかしてエリカさんとアガットさんよね」
「きっとそうだよ」
「何であそこまで仲が悪いんだろうね」

アネラスは不思議そうにつぶやいて首をひねった。

「あれは人の皮を被った鬼のようだったよ。もうこんな所には長居したくない、街へ帰らせてくれないか?」

ジミーの様子を見て、ヨシュアは苦笑しながらアネラスに提案する。

「アネラスさんはジミーさんを街まで送って、遊撃士協会のキリカさんの指示を仰いで下さい」
「ヨシュア君達はどうするの?」
「僕達は聞き込みをしますから」
「うん、分かったよ」

ヨシュアの言葉にアネラスはうなずいて、ジミーと共に街へ向かって去って行った。
二人が立ち去ったのを見て、エステルはヨシュアに尋ねる。

「それで、レーヴェさんとアガットさん、どっちから話を聞こうか?」
「どっちからでも構わないんだけど……」

エステルとヨシュアがエレベータの前で考えていると、下の階から大声の言い争いが聞こえて来る。

「まてーっ! 私のティータに手を出すなんて、100年早いわよ!」
「何を言ってやがる、ただ頭を軽く撫でただけじゃねえか!」

エリカ博士とアガットの声を聞いたエステルとヨシュアには直接見なくても、何が起こっているのか想像がつく。

「アガットさんは取り込み中だから、レーヴェ兄さんから先に話を聞こうか」
「そうね」

ヨシュアの提案にエステルも同意した。



<ツァイスの街 空港>

中央工房に居る人達にレーヴェの行方を聞くと、レーヴェとカリンはボース地方に帰るために定期便に乗り込んだと言う。
エステル達が空港に駆けつけると、すでに定期便が到着し、レーヴェとカリンは飛行船に乗り込んでいた。
事情を話してエステル達はレーヴェとカリンを甲板に呼び出してもらった。
搭乗口を挟んでエステル達とレーヴェ達は向き合って話す。

「兄さん、帰るなら知らせてくれても良かったのに」
「俺達も探したんだが、仕事中だと聞いてな」
「あたし達、レーヴェさんに聞きたい事があったのよ」
「何だ?」

エステル達は手短に設計図が盗まれた事件の事を話した。

「俺とアガットはほとんど同時に工房に入ったが、怪しいやつは居なかったな」
「そうか、残念ね」
「俺が見た人物は、アガットも知っているから、あいつに話を聞くと良い」
「わかったよ」

ヨシュアがレーヴェの言葉にうなずいた時、定期便の汽笛が鳴った。
いよいよ出発が近いらしい。

「兄さん、今日は助けてくれてどうもありがとう。兄さん達が来てくれなかったら、僕達はどうなっていたことか……」
「あたし達、あの魔獣に手も足も出なかったわ」
「そう恥じる事は無い、あの魔獣は俺達4人で追い払うのがやっとだったからな」
「倒せなかったの?」
「ああ、湖の中へと逃げ込んでしまったからな」

エステルの質問にレーヴェは少し悔しそうにうなずいた。

「じゃあ2人とも、遊撃士のお仕事を頑張ってね」
「うん」

カリンに言われて、エステルとヨシュアはうなずいた。

「……ヨシュア、私達の事は良いから、あなたが決して後で後悔する事の無い道を選びなさい。きっともうじき決断しなければいけない時が来るわ。そろそろ、限界だと思うもの」
「そうかな?」
「あんまり待たせちゃいけないわよ」
「そうだね」
「ねえ、一体何の話をしているの?」

突然真剣な顔で見つめ合って話すカリンとヨシュアを見て、エステルが尋ねるとヨシュアは慌てて首を横に振る。

「別に大した話じゃないよ」
「本当? あたし達の間に隠し事なんてあっちゃいけないんだからね」
「エステルの助けが必要な時は相談するから」
「そっか、分かった」
「ふふ、2人は心の底から信頼し合っているのね」

ヨシュアとエステルのやり取りを見ていたカリンは嬉しそうに穏やかに微笑んだ。
飛行船の発車を知らせる汽笛が鳴った。
どうやら別れの時が来たようだ。
レーヴェとカリンは手を振るエステルとヨシュアに見送られて甲板から客室の中へと姿を消した。
定期船が飛び立った後も、エステル達はしばらく空を見つめていた。

「あれ、あの飛行船は?」

定期船が飛び立って空っぽになった滑走路の向こうに、別の飛行船が泊まっているのにエステルは気が付いてヨシュアに尋ねた。

「多分、王女親衛隊の飛行船アルセイユだよ」
「綺麗なデザインの船ね」
「リノンさんの雑貨屋にも模型があったじゃないか」
「そういえば、あたしには触らせてもらえなかったわね」
「エステルは壊し屋で有名だったからだよ」

ヨシュアはそう言ってため息をついた。
エステル達はしばらく作業員が詰めかけているアルセイユを眺めた後、聞き込みを再開するために中央工房に向かう事にした。



<ツァイスの街 中央工房 地下実験場>

アガットの姿を探してエステル達はラッセル博士達の所へ向かったが、そこには怒った顔のエリカ博士と側でオロオロするティータ、面白そうにその様子を眺めるレンしか居なかった。

「あのー、アガットさんは?」
「ふん、全く逃げ足だけは速いんだから」

恐る恐るエステルが尋ねると、エリカ博士はそう言って鼻を鳴らした。

「困ったな、アガットさんに聞きたい事があるのに……」
「あんた達、あの赤毛男を探しているなら良いものがあるわよ」

そう言うとエリカ博士は手のひらサイズのオーブメントのようなものを白衣のポケットから取り出した。
それは試作品の生体反応を調べる新しいセンサーだった。

「あの赤毛男ってば、あのじいさんの試作品のクオーツを使って気配を消しているって聞いたわ」
「ふふ、レンが貸してあげたのよ」
「だからアガットさんの姿を見かけなかったのか」
「これがあれば、こそこそ逃げ隠れしているあの赤毛男の居場所を突き止められるってわけよ」

そう言ってエリカ博士は不敵な笑みをこぼした。
エステルとヨシュアはエリカ博士から発せられる黒いオーラに寒気を覚えた。

「そう言うわけだから、あの赤毛男を見つけたら私の所へ連れて来なさい、このパワーアップしたオーバルギアで処刑してあげるから」
「おかーさん、止めてよ……」

黒い笑みを浮かべながら戦闘用のオーバルギアの調整を再開したエリカ博士の側で、ティータはオロオロとしていた。

「アガットさんを見つけたら逃げるように行った方が良いかな」
「そうだね」

エステルとヨシュアは遊撃士協会の条項である『民間人の保護』を頭に思い浮かべながら顔を見合わせてそうつぶやいた。

「それでは、失礼します」

生体反応を調べるセンサーを受け取ったヨシュアは、エステルと一緒にエリカ博士にお礼を言って地下実験場を立ち去ろうとした。

「待って、面白そうだからレンも2人について行くわ」
「だったら私も……」
「待ちなさい、ティータにはこのオーバルギアの調整を手伝ってもらいたいのよ」

レンと一緒にエステル達に加わろうとしたティータはエリカ博士に引きとめられてしまい、結局エステル達に同行したのはレンだけだった。
地上へと向かうエレベータの中で、エステルはレンに尋ねる。

「ラッセル博士達が実験室に居なかったけど、どこにいるの?」
「博士達はアルセイユに行っているわ。新型エンジンを載せるための準備をしているみたいね」
「ふーん、レンちゃんはそっちに行かないで良いの?」
「だって、エステル達と居た方が面白そうじゃない」

レンはそう言って小悪魔のような笑みをこぼした。
とりあえずエレベータから降りたエステル達だったが、それなりの広さのある中央工房のどこを探せばいいのか迷っていた。
そこでまずラッセル博士に小火騒ぎの時の状況をもう一度聞きに行く事にしたのだった。



<ツァイスの街 空港 アルセイユ船内>

空港に停泊しているアルセイユにはエンジンの整備をするために多くの中央工房の技師が集まっていた。
関係者以外立ち入り禁止だったが、エステル達は遊撃士の紋章を見せて事情を話すと中へ入る事が出来た。
ラッセル博士達はエンジンルームに居ると聞いてエステル達はそこに向かう途中、オリビエの姿を見つけた。

「あれ、どうしてオリビエさんがここにいるの?」
「温泉から街に戻ってみると、あの有名なアルセイユが空港に停泊していると言う話を聞いてね。友達に頼んで入れてもらったのさ」
「……全く、困ったやつだ」

エステルの質問にオリビエが隣に立っていた背の高い黒髪の男性にウインクしながらそう答えると、その黒髪の男性は不機嫌な顔でそうつぶやいた。

「紹介するよ、彼の名前はミュラー。僕のステディさ」
「気持ちの悪い言い方をするな」

オリビエの言葉に、ミュラーは低い声でツッコミを入れた。

「オリビエさんったら相変わらずね」
「ミュラーさんはオリビエさんと正反対の性格に見えるけど」
「ボケとツッコミでバランスがとれてるんじゃないかしら、エステルとヨシュアみたいに」

エステルとヨシュアに続いて、レンがそうつぶやくと、エステルは不満そうな顔でレンに文句を言う。

「レン、あたしがボケ役ってどういう事よ?」
「ふっ、知的な僕にボケ役は出来ないよ」
「まったく2人とも自覚が無いとは恐れ入ったわ」
「騒がしいやつらだ」

冷めた目で見ていたミュラーはため息をついた。

「ほらエステル、ラッセル博士に話を聞きに行かないと」
「そうだったわね」

見かねたヨシュアがエステル達に忠告すると、エステルは本来の目的を思い出した様で、オリビエ達との話を切り上げて先へと進んだ。
エステル達がエンジンルームに到着すると、そこには多数の技師に囲まれながら作業をするラッセル博士とダン博士の姿があった。

「お忙しいのにすいません」
「何じゃ、ワシに用があるのか?」

ヨシュアが声を掛けると、ラッセル博士は作業の手を止めて顔を上げて答えた。

「今朝の火事騒ぎの件ですが、本当に博士達の実験が原因だったんですか?」
「多分、実験で電力を上げ過ぎてコードから発火でもしたんじゃろ。アイツは熱中すると限度を知らんからな」

ヨシュアの質問にラッセル博士がそう答えると、ヨシュアはさらに質問を続ける。

「それではもし放火をされても分からないと言うわけですね?」
「何じゃ、誰がどうしてそんな物騒な事をするんじゃ?」
「イゴールさん達から聞いてない? 設計図が盗まれた事」
「ああ、そんな事を言っておったな」

エステルの質問に、ラッセル博士はうなずいた。

「僕達は火事騒ぎの間に犯人が中央工房の内部構造の調査をしたと思ってます。火事の前後に、怪しい人影など見ませんでしたか?」

ヨシュアが尋ねると、考えた後ラッセル博士は運搬業者らしき人影達と避難する途中にすれ違ったと話した。
それ以外の人物は全て顔見知りだったと言う。

「それでは、その運搬業者が怪しいですね」
「ロレントの時もそうだったわね、ジョゼット達は今どうしているんだろう」

ヨシュアの言葉を聞いたエステルは遠い目をしてそうつぶやいた。

「でも、どうしてその時に設計図を盗まなかったかな?」
「他に目的があるのかもしれない」

エステルの疑問のつぶやきに、ヨシュアはそう答えるのだった。
ラッセル博士から話を聞き終わったエステル達は、遊撃士協会に戻ってツァイスの街に出入りをした運送業者について調べようと意見をまとめた。

「ねえ、博士はどこに居るの?」
「ノバルティスのやつならお前さんの所へ行くと言って出て行ったが」

それまで辺りを見回していたレンがラッセル博士に尋ねるとラッセル博士はそう返した。

「それじゃ入れ違いになってしまったのかしら」

エステル達は実験場に戻ると言うレンと別れて、遊撃士協会へ戻るのだった。

「ラッセル博士から有力な手掛かりが得られて、アガットさんに話を聞く手間が省けたわね」
「でも、アガットさんはどこへ行ってしまったんだろう?」
「きっと、エリカ博士が怖くてまだ逃げているのよ」

遊撃士協会へ戻る道すがら、エステルとヨシュアはそんな事を話していた。



<ツァイスの街 遊撃士協会>

エステル達が遊撃士協会に戻ると、受付では緊迫した雰囲気が漂っていた。
そして、エステル達の姿を見たアネラスが慌てた様子で声を掛けて来る。

「エステルちゃん、大変だよ!」
「アネラスさん落ち着いて、どうしたの?」

エステルはアネラスの両肩を押さえて呼びかけた。

「あのね、アガットさんが、アガットさんが……!」
「アガットさんがどうかしたんですか!?」

驚いたヨシュアが尋ねても、アネラスの説明は要領を得ない。
困惑するエステル達に、受付のキリカが声を掛ける。

「よかった、あなた達を呼ぼうと思っていたのよ」
「何か起きたんですか?」
「それが、アガットの話によるとノバルティス博士が連れ去られてしまったみたいなの」
「えっ!?」

キリカの言葉を聞いたエステルとヨシュアは驚いて固まってしまった。

「アガットは怪我を負っていたから、今は2階のベッドで寝かせているわ」
「大丈夫なんですか?」
「ええ、命に別条は無いみたいよ」

ヨシュアの質問にキリカがそう答えると、エステル達はホッと胸をなで下ろした。

「それで今は怪我の特効薬の材料のゼムリア苔をジンとヴァルターに鍾乳洞に行かせているわ」
「あそこって、危険な魔獣が出ていた所じゃないですか」
「苔を採りに行くぐらい、何も問題は無いわ」

ヨシュアに対して、キリカはキッパリとそう言い切った。
そしてキリカはエステルとヨシュアに気を失う前のアガットから聞いた話を説明し始めた。
中央工房に居たアガットはノバルティス博士に声を掛けて外へと連れて行った人物が気になり後をつけて行った。
人通りが少ない場所で、運送業者の扮装をした数人の人物達が強引にノバルティス博士をコンテナの中に押し込もうとしたので、アガットはこれはただ事ではないと確信したと言う。
アガットはノバルティス博士を助けに入ったのだが、逆にやられてしまった。
ボロボロになって倒れていたアガットを、街の郊外を散策していたジンとヴァルターが見つけ、遊撃士協会まで運んで来た。
そしてアガットはキリカにノバルティス博士が連れ去られてしまった事を話したのだった。

「小火騒ぎの時、設計図を奪わなかったのはノバルティス博士の誘拐と言う目的があったからなのか」
「そうね」

ヨシュアの推理に、キリカは同意した。

「ねえヨシュア、この事をティータとレンが知ったら……」
「うん、ショックを受けるだろうね」

悲しそうな目でそう言うエステルに、ヨシュアはうなずいた。
そしてその心配は現実のものとなった。
真っ青な顔をしたティータと、付き添いのレンが遊撃士協会に姿を現したのだった。
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