映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」神戸から“元気光線”
夕暮れの神戸・メリケンパーク。ポートタワーとテクノスーパーライナーが見事なコントラストを描く。かつて国家プロジェクトとして開発され、“海の新幹線”と呼ばれた超高速貨物船の実験船は、ウルトラマンの忘れ物のようだ。
シリーズ誕生40周年記念として製作された映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」(平成18年公開)は神戸が舞台だ。超獣との闘いで変身能力を失った「ウルトラ兄弟」。彼らは一般人の姿で20年間にわたって神戸の街に暮らしていたが、地球の危機に再び立ち上がろうとしていた−。
映画は、阪神大震災から10年たち、神戸の元気な姿とパワーを日本中に届けたい、という思いも込められた特別な作品だ。
ヒーローと怪獣との闘いの合間には、クルーズ船や北野異人館、六甲山牧場など、神戸の名所が次々と登場する。テンペラー星人の襲来に逃げ惑う神戸の人々の向こうには、真っ赤なポートタワー。大暴れする怪獣は気になるけれど、やっぱり神戸はすてきな街だなと思った。
「お母さん、飛行機、もうすぐ飛ぶ?」
日曜日。神戸・ポートアイランド沖にある、神戸空港の展望デッキには、飛行機を見ようと子供連れがずらりと並ぶ。
神戸の海底に異変を感じた宇宙警備隊のルーキー、ウルトラマンメビウスが「ヒビノ・ミライ」の姿で、調査のため降り立つのが、神戸空港。さっそうと滑走路を歩くウルトラマンメビウス。出迎えた女性海洋学者も、スポーツカーで乗り付ける。
そもそも滑走路での映画の撮影は、不可能なはず。だがこの撮影が行われたのは平成 年 月。神戸空港が開港する3カ月前だったことから実現した。「開港後はもちろん無理だったし、開港より早すぎると工事中でうまく映画にならない。絶妙のタイミングでした」。撮影に携わった神戸フィルムオフィスの代表、田中まこさんは振り返る。
撮影は街のあちこちで行われた。空港の北にあるポートアイランド市民広場。国際会議場やホテルに近く、いつもは静かな広場だが、映画では「ニセメビウス」の攻撃を受けて市民が阿鼻叫喚、逃げ惑う現場となった。
一般人になって神戸に暮らしていたウルトラ兄弟の仕事先も、神戸空港、ホテル、サーキットと、神戸らしいラインアップ。ウルトラセブンは「モロボシ・ダン」の名前で六甲山牧場に勤務。羊を追う姿は、なんともほほえましい。
阪神大震災を描いた映画としては、「男はつらいよ 寅次郎紅の花」(平成7年)や「ありがとう」(18年)、「その街のこども 劇場版」(23年)などがある。一方で、震災10年の節目に撮影された「ウルトラマンメビウス―」には、阪神大震災そのものは直接描かれていない。だから、震災を知らない子供たちは、ヒーローの活躍に無邪気に心を躍らせる。その隣で、「あの日」を知る大人たちは、甦(よみがえ)った街の姿にそっと思いを重ねる。
映画の最後、ウルトラ兄弟たちの活躍により、地球に平和がもどる。映し出された美しい神戸の街。そこには、確かな希望と未来がみなぎっていた。(文・岸本佳子)
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