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玄海原発説明番組:出演の県民からも批判続々/評価の知事、国担当者と大きなズレ/佐賀

県民説明番組を放送するケーブルテレビ会社の前で行われた原発への抗議集会=佐賀市で2011年6月26日、山下恭二撮影
県民説明番組を放送するケーブルテレビ会社の前で行われた原発への抗議集会=佐賀市で2011年6月26日、山下恭二撮影

 「納得以前に理解できない」「時間が短すぎる」。運転再開問題で揺れる九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の安全性をPRするため、経済産業省が26日に佐賀県で放送した1時間半の生番組。福島第1原発事故後、初めて国が原発立地県の住民に理解を求める直接の機会となったが、出演した県民はそろって説明不足を批判。理解を得るにはほど遠く、「いいやり取りができた」と評価した古川康知事や同省担当者との認識のずれが際立った。

 番組は午前10時に始まった。まず原子力安全・保安院の黒木慎一審議官が玄海原発の緊急津波対策は十分と説明。質問1分、回答2分以内の条件で、出演した県民7人が次々と質問した。

 玄海町の農業、平田義信さん(49)は「30年以内に震度6強以上の地震が起きる確率は福島第1も玄海も0%だった」と指摘し、政府が浜岡原発(静岡県)にだけ停止を要請した理由をただした。経産省の担当者は「浜岡周辺はプレートがせめぎ合っている。玄海周辺の断層調査は十分に行われている」と答えたが、福島第1が推定0%だった点には触れなかった。

 佐賀大4年の伊藤友美さん(21)は、36年前に稼働し、想定以上の老朽化が明らかになった玄海原発1号機の安全性を質問した。黒木審議官はデータを列挙し「運転管理は厳しめに行っている」と説明したが、司会者に「よろしいですか?」と聞かれた7人は首をかしげて苦笑した。

 終了後、出演者6人が県庁で記者会見。佐賀市の映画評論家、西村雄一郎さん(59)は「時間が短すぎる。納得する以前に言葉が分からない」。唐津市の主婦(35)は「再質問をしづらい雰囲気があった」。原発再稼働に理解を示す島内正彦・佐賀県商工会議所専務理事(69)ですら「国からは『安心、安全』とか断定的なことが出ない。安心の対策が不足しており、不安は残ったまま」と話した。

 一方、黒木審議官は「論点は一通り出た。前回(の県議会での質疑)より柔らかい印象だった。一定の理解をいただいたのでは」。知事室で職員と視聴した古川知事は「やらせでなく、本当にいいやり取りだった」と振り返った。

◇反対派、公開の場での説明会求める◇

 番組を放映した佐賀市のケーブルテレビ会社前には26日朝、原発に反対する市民約50人が集まった。番組に先立ち、佐賀県で活動する反原発団体側にも出演依頼があったが、全員が「運転再開のアリバイ作りに利用される」としてボイコット。メンバーは公開の場での説明会開催を改めて求めた。

 福島市で被災し、佐賀県鳥栖市に家族と避難中の木村雄一さん(51)は「福島の事故が収束していないのに、再稼働を検討することが信じられない」。番組出演を拒否した「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表(59)は「予想通り、国は安全と繰り返すばかり。『放射能を浴びるかもしれないけど、こらえて』と言っているようなものだ」と怒りをあらわにした。

 玄海原発から半径10キロの防災対策重点地域に住む佐賀県唐津市の古賀弘さん(75)は、説明番組を食い入るように見た。「専門家が専門用語で話しており、出席者が理解できたか疑問」と不満を漏らし、出演者の人数制限についても「7人で県民を代表しているとは……」と納得できない様子だった。【阿部周一、蒔田備憲、原田哲郎】

2011年6月27日

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