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=「正論」創刊30年記念臨時増刊=
「靖国と日本人の心」好評発売中



定価 860円(税込み)


 <知を楽しむ人のためのオピニオン誌・「正論」>



1月号(2)


 ☆編集者へ=横浜市の八巻明彦さん(75歳)から。

 私は、旧陸軍士官学校最末期の六十一期生です(産経新聞系には野地二見、故・芳地昌三といった同窓生がおられました)。

 四十七期の大先輩から、十一月号「編集者へ…」の切り抜きを送って来られ、「♪万里の長城で…の『蒙疆ぶし』は作者不詳となっているが、四十七期生歩兵のトップ(御賜)であった故・小林友一の作である。軍歌に詳しい君から申し入れてほしい」旨のお便りを頂きました。

 小生も、小林さんからジカに自作と伺っておりました。現在、偕行社で刊行している軍歌集『雄叫』にもその旨記載してあります。

 

 ☆編集者へ=八女市の近藤将勝さん(福岡工業大学社会環境学部二年・22歳)から。

 十二月号「クロスライン」に八木秀次先生が「保守が否定される保守政治」という文章をお書きになられていましたが、そのことを日々実感しております。

 私の住む福岡県八女市は、全国的に有名な八女茶、電照菊、イチゴの栽培や仏壇、提灯などで知られ、穏やかな農村風景が広がる保守的気風が強い土地柄にあります。しかしその保守的な八女で過激なジェンダーフリーに基づいた「男女平等のまちづくり条例」づくりが行われようとしている。

 男女共同参画というと非常に聞こえがよい言葉で、初めは男性と女性がその違いを認めながら共に助け合うことだと考えていたが、実態はそういう穏健な男女平等ではない。男らしさ、女らしさは性差別に繋がるから「性別にかかわりなく自分らしさを」とか「固定的な役割分担は解消しなければならない」といったラディカルなフェミニズム思想に基づいた社会変革運動である。その思想的淵源をたどると共産主義者エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』という本に行き着く。そのような思想に基づく条例をつくれば、福岡県は全国でも稀に見る教育正常化が進んだところなのに、それに逆行する動きに法的なお墨付きを与えることにもなりかねない。

 本誌でたびたび取り上げられているように、福岡県は長いあいだ保革対立構造のなかで、日教組ご三家ともよばれたほど強かった社会党左派系の福教組と保守系の福岡教育連盟のあいだで激しい対立が続いてきた。私は高校まで公立学校だったが、いずれも日教組の先生が多い学校であった。先生たちが男女一律に生徒を「さん」づけで呼んだり、高校の家庭科の授業で「夫婦別姓」を賞賛し、戸籍制度を廃止しないと個人の人権が守られないという内容を試験問題に出したり、体操服の男女共用を進めるなど、違和感を覚えることが多々身の回りであったことを思い出す。

 蛇足ながら『正論』との出合いも高校一年生のときであり、高校時代は生徒会活動に取り組んでいたので、広島での国歌斉唱をめぐる校長先生の自殺や所沢高校の分裂卒業式はとても他人事とは思えなかった。今では思い出の一つになっているが、日教組の先生たちとは国旗国歌のことなどで随分激しく議論を戦わせたこともあった。そうするうちに、教育正常化運動や北朝鮮拉致被害者救出運動に関わるようになり、運動で知り合った方々とのお付き合いが始まった。あれよあれよと福岡県南部の有志で今年四月に「日本の心を育む会」を結成することが決まり、私も若輩ながらその一員に加わることとなった。

 そうしたご縁で男女共同参画にも首をつっこむことになったのだが、私の恩師にあたる先生のほとんどが日教組組合員で、これも何かの縁なのかもしれないがジェンダーフリー教育に熱心な人が多い。

 六月に大川市で日本時事評論社の山口敏昭編集長をお招きして講演会を開催した際、中学校のとき直接担任ではなかったが、ある女性の先生が講演を聞きに来られていた。正直私も躊躇したが、思い切って話しかけてみると、私のことを覚えてはおられなかった。しかし、情報が先生を通じて組合に流れたせいか、それから一か月後、八女市で男女共同参画条例の意見聴取会が開かれた際、クラス担任や教科担任としてお世話になった先生方が随分たくさんお見えになっていた。聴取会ではやじも飛んだりして激しい口論になったし、会が終わってから皮肉たっぷりに言われたりもして、教育正常化がまだまだ終わっていないことを痛感せずにはおれなかった。

 八木先生が指摘しておられるように、多くの自治体は革新政権ではない。わが八女市も革新政権ではなく、保守政権である。しかし、市の担当部署である企画財政課に何度も足を運んだりする中で、八女市は保守的気風が強いから、いざとなれば大丈夫ではとの淡い期待は脆くも崩れ去っていった。それは、運動を進めていく中で理論武装をしっかりした自治労と日教組がスクラムを組んで市長や議会を無視してやりたい放題を何十年も続けてきたことが分かってきたからである。

 先日発表された「八女市男女平等のまちづくり条例(案)」はまさに最初から最後まで左翼イデオロギーに沿った内容だった。恐らく全国的に見ても過激な条例ではないだろうか。いくつか内容をかいつまんで紹介してみたい。

 たとえば、当初前文は未定だったのだが、いつのまにか前文が決まっており、「八女市は緑豊かな自然に恵まれ、歴史と伝統のまちとして人情味あふれる風土が培われてきた」としながら「しかし一方で、今なお性別による差別や固定化された役割分担にもとづく制度や慣行やあるいは意識が見うけられ、男女平等の実現には多くの課題が残っている」とこき下ろしている。

 また第七条五項には二月二十六日の産経新聞で百地章日大教授が憲法の表現の自由の侵害につながると指摘している「すべての人が公衆に表示する情報において、性別によって慣習的に固定された役割分担及び女性に対する暴力等を助長し連想させる表現、並びに過度の性的な表現を行わないように努めなければならない」との規定がある。極めつきなのは第八条三項に「市長は行動計画を定めるにあたっては、審議会の意見を聞かなければならない」という審議会による市長権限の拘束ともとれる規定まであって、まるで学校現場で日教組が校長交渉をして確認書を交わし、職員会議を最高議決機関とした手法そのままに、民主主義を根底から覆しかねない危険な内容である。

 地方自治法には「普通地方公共団体の長は、その補助機関たる職員を指揮監督する」(第一五四条)とあり、審議会など付属機関については一三八条三項において「普通地方公共団体は、法律または条例の定めるところにより、執行機関の付属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、調査、諮問、又は調査のための機関をおくことができる」となっているだけで、あくまで自治体の長たる市長の諮問機関に過ぎないのだ。

 国会において良識ある国会議員の先生方が質問をされ、担当大臣、担当局長いずれの答弁もジェンダーフリーと男女共同参画は無関係とのことだった。そのことは担当省庁である内閣府男女共同参画局が全国の都道府県および政令指定都市の担当部署に対して通知され、関係市町村までそれは下ろされているはずである。それなのに政府の見解など全く無視しているではないか。このような問題だらけの条例を絶対に成立させるわけにはいかない。十二月議会でいよいよ条例案が市議会に上程される。我々の戦いもこれから正念場を迎える。

 

 ☆編集者から=冒頭で柳澤さんから指摘されたばかりですが、近藤さんの文章は長すぎます。でも、今回にかぎって思い切って掲載しました。これは八女市にかぎらず全国でみられる現象であり、重要な提言だからです。近藤さんのご活躍に期待しています。いずれ中間報告をお知らせ下さい。ただし、短く、要領よく。

 

 ☆編集者へ=小田原市の坪井和也さん(浪人生・19歳)から。

 教養としての軍事学の必要性が叫ばれているにもかかわらず、未だに日本の大学では軍事学講座がほとんど設置されていないようです。これは今後、日本が総合的な国家戦略を模索する上で非常に憂慮すべき事態と言えるのではないでしょうか。

 そこで、私は軍事学講座の普及に「寄付講座」という制度を利用できないか、と思い、各大学の「講座寄付」の条件を見たところ、早稲田大学では「世界の平和および人類の福祉に貢献する研究を行うものとし、軍事研究および軍事開発はおこなわないこと」とガイドラインが制定されていました。その一方、慶応義塾大学では、(寄付講座によるものかは知りませんが)軍事学講座が開講されているようです。

「寄付講座」とは企業や団体といった学外機関や個人からの寄付金に基づき設置される講座のことですが、実際に、この制度を利用して軍事学講座を普及させていくことは可能なのでしょうか。また、軍事学を普及させる活動は、大学側や、篤志家によって行われているのでしょうか。軍事学の必要性を説く識者はいても、軍事学を広める活動家がいないのがこの国の現状のように思えてなりません。

 

 ☆編集者から=坪井さんは「ハイ、せいろん調査室です」へ投稿されたのに、この欄に掲載してしまいました。軍事学というのは、社会生活に活用できる学問です。一般の大学に講座があれば、受講を希望する学生も少なくないでしょう。ただ、坪井さんの質問に答えるだけの知識はありませんので、どなたかお願いします。

 

 ☆編集者へ=茨木市の井上弘樹さん(会社員・37歳)から。

 先般の小泉首相による中曽根元総理への引退勧告劇に、私はとても大きなショックを受けました。自民党の衆議院比例区の七十三歳定年制の例外事項については、首相経験者の中曽根、宮沢両氏が対象でありましたが、まさか、小泉首相自らが中曽根事務所にまで乗り込んで行き、あたかも中曽根元総理の正面から斬りつけるかのようなことをするとは、私自身たいへんな驚きでありました。

 この定年制の例外の扱いについては、最終的に小泉首相が日頃から口にされている決まり文句、「出処進退はご自身の意志で決めるべきこと……」という言葉どおり、中曽根さんに対しても、「引退されたければどうぞ、議員として今後も職務を続けたいならそれも結構」となり、今までどおりに落ち着くものと予想していましたが、あのような非礼を首相自らがマスコミの目の前でされるとは、まるでショーを演出しているかのようで、中曽根さんをさらに激怒させてしまいました。

 中曽根さんが小泉首相の一連の動きに対して、「いきなりやってきて、爆弾を投げるようなものだ、一種の政治テロだ」と話されていたことは決して誇張ではなく、客観的にみても正にその通りなのであり、残酷ですらありました。

 現在の日本社会において、企業のリストラも、肩たたきなどをする時は似たようなことをやっています。「余人をもって代えがたい」人がどの組織にもいるはずですが、日本人が古くから持っていた経験深い年配者に対する尊敬の心を、小泉首相という日本のトップ自らがブチ壊してしまいました。

 そして街頭演説において堂々と、「年寄りはいつまでも居座っちゃいかーん」と何の恥じらいもなく日本の首相が言っている無礼さに、マスコミはほとんど反応していないようでした。石原都知事の演説、講演などにはつまらない言葉狩りをする一部マスコミは、一体首相のこの馬鹿げた演説に何の非難もしないのか、全くどうかしているのではないかと思う次第です。

 一部議員さんには、「お年寄りは大切にしましょう」を選挙のたびに連呼して、まるで自分の政見には、老人しか対象がないという気味の悪い人もいて、あれも困ったことですが、中曽根さんのようなしっかりとした国家観、歴史観を持った首相経験者を、まるで企業の定年制のような軽い感覚で単純に線引きして引退勧告をした行為を、まことに醜い姿だという思いを抱いたのは、私だけではなかったと思います。

 あの「政治テロ」の後、小泉首相の中曽根さんに対する行為が各方面から非難され始めると、自らの人気に異常なほど敏感な小泉首相は、十月二十五日の千葉県内の街頭演説で、「八十代以上の人にも頑張ってほしい。お知恵を借りないといけない」と成田市や鎌ケ谷市では日本が世界一の長寿国であることを強調し、「八十歳以上のみなさんも元気はつらつだ」などと演説していたそうで、小泉首相の思想の基軸というものは、最初からどこにもないのだとわかりました。

 小泉首相はどこまでいっても、やはり大衆に受けそうなことしか関心がありませんね。国民に受けそうなこと、受けそうなことばかりに手をつけてしまい、ニッチモサッチモいかなくなると、他人に丸投げしてしまう。

 国家観という土台のない、とても危険な衆愚政治です。

 

 ☆編集者から=井上さんも次回からコンパクトな文章でお願いします。

【次回掲載は12月15日以降です】

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【編集者へ・編集者から(1)】 | 【編集者へ・編集者から(3)】

 「正論」平成16年1月号   編集者へ・編集者から



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