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2011/6/12
(日)
<まる見えリポート>名張市の斎場問題
【旧斎場建設予定地=名張市滝之原で】
平成六年、富永栄輔市長時代の名張市が、同市滝之原区に新斎場の建設受け入れを求めたことに端を発する、いわゆる「斎場問題」。土地を売却した男性に、未払い金の支払いを市に命じる二審の名古屋高裁判決が五月五日、確定した。市はこれを受け、適正額を上回る金額で男性と契約し、市に損害を与えたとして、富永氏に約二億四千九百万円の賠償を求める訴訟を、津地裁伊賀支部に起こした。富永氏は本紙の取材に対し、訴訟では全面的に争う姿勢を示している。問題の決着点とも言える訴訟の行方に注目が集まる一方、仮に富永氏が請求金額を支払ったとしても、市がこの土地に費やした全額は戻らない。同問題が、十七年を経た今も、市政に重くのしかかっている。
(伊賀総局・海住真之)
富永市長時代に市が購入した同市滝之原の旧斎場建設予定地は、市東部に位置し、滝之原工業団地に隣接する約三・一ヘクタール。うち、約三分の二を所有していた男性は当時、この地で畜産業を営んでいたが、牛舎はすべて撤去され、現在は空き地となっている。平成十六年に完成した新斎場が、旧斎場建設予定地からわずか約五百メートルの距離というのも、長年にわたってこの土地をめぐる問題が続いてきたことがうかがえる。
その間、旧建設予定地の価格は下落の一途をたどった。市が試算した現在の土地評価額は約一億二千万円。一方、市が地権者らに支払った土地代金や物件移転補償費などを試算すると、総額約九億八千万円。その差額、八億六千万円が失われたことになる。市は土地をプロポーザル方式で売却する方針で、「損失回収のため、少しでも高い金額で売りたい」としている。
■ ■
平成十四年四月の亀井利克市長就任以降、男性に対する残金の支払いを停止した市は、男性との訴訟で一貫して契約の無効を主張した。しかし、津地裁伊賀支部は契約を有効とし、市に残金の支払いを命じた。市は判決を不服として名古屋高裁に控訴したが、一審の判決を覆すだけの新たな根拠を提示できず、全面敗訴。上告を断念し、男性に約三億六百万円の支払いを余儀なくされた。
市が訴訟に対して強気の姿勢を崩さなかったのは、十九年五月、名古屋高裁が言い渡した住民訴訟の判決をよりどころにしているためだ。地裁が認定した土地の適正額は約四億五千万円。市は男性との訴訟で契約の無効を主張するため、実際の契約額は住民訴訟で認定された適正額を上回っていたと主張した。しかし、二審の名古屋高裁は「民間人が所有する土地について交渉する際、価格が高くなるよう要求することは何ら責められるものではない」と言及。住民訴訟を盾にした市の主張を退けた。
富永氏との訴訟でも、市は住民訴訟で得られた適正額を根拠に賠償額を算定している。しかし、仮に市が勝訴しても、請求した全額が認められる可能性は低い。
男性と市の訴訟について、一貫して市が敗訴すると主張してきた森脇和徳市議は、「市が遅延損害金の算定対象とした期間、既に富永氏は退任しているため、富永氏の意思決定は介入していない」と指摘。市は「富永氏に請求できる最大限の額を求めた」としているが、森脇市議は「一部敗訴となれば恥の上塗りだ」と批判する。
■ ■
富永氏は斎場問題について本紙の取材に応じ、「市は判決に納得したから男性に残金を支払った訳で、損害を負っていない」とし、訴訟では全面的に争う姿勢。富永氏は既に、高裁が認定した適正額との差額に遅延損害金を含めた約二千八百万円を市に支払っている。しかし、「今回の裁判に住民訴訟の判決を引用するのは安易なやり方」と、市の方針を批判。「名古屋高裁と住民訴訟の判決が相反しているのならば、市は上級審の判断を仰ぐべきだった」と主張している。
「時の権力者の意思に従って事務手続きを進めることにジレンマを感じる時もある」と、ある幹部職員は話す。いくら不適正な額だったと主張しても、民法の原則として契約は簡単に覆せるものではないことを、市は男性との訴訟で思い知らされた。富永氏を相手取った訴訟で市が勝訴しても、「斎場問題」に費やした約九億八千万円は戻らない。
適正額を超える金額で契約したと住民訴訟で認定された富永氏、用地の取得を可決した当時の市議会、建設予定地を変更し、男性との訴訟の控訴審で敗訴した亀井市長、控訴を可決した市議会。それぞれがこの問題に責任を負っている。
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