北陸の経済ニュース 【6月29日03時31分更新】

「脱原発」で応酬、平行線 北電の株主総会
 福島第1原発事故を受け「脱原発」の流れが強まる中、北陸電力の株主総会が28日開 かれ、経営陣と一部株主が脱原発をめぐって応酬した。志賀原発の廃炉、撤退を求める反 対派に対し、経営陣は原発推進の姿勢を強調し、廃炉要求などの動議はすべて否決された 。昨年より約200人多い935人が出席し、議論は平行線のまま2時間半で終了。株主 からは「もっと議論を深めてほしい」との声も漏れた。

 総会の質疑応答は1人1回で5分以内と時間制限して行われた。株主12人が計18件 の質問、意見をした。

 株主は「今が原発撤退のチャンスで社長の決断の時だ」「脱原発が大前提」と追及。北 電側は「原子力を進めていくことが国民の生活、経済の安定を図るために重要」などと応 じた。

 また、震災以降、株価が下落していることに対し、久和進社長は「忸怩(じくじ)たる 思いがあるが、原子力の安全性、信頼性を高めて電気を届けることが株価の上昇につなが る。原発をやめれば、株価は大幅に下がる可能性が大きい」と述べた。

 原発事故に備え、防災対策を重点的に充実する地域(EPZ)の範囲拡大や、周辺市町 との安全協定締結を求める意見も出された。北電側はEPZについて「国の見直しが進め ば、それに基づいて対応する」とし、周辺市町への安全協定は「今後よく相談して検討し たい」と答えた。

 志賀原発の再稼働に関する事前質問には、松岡幸雄副社長が「安全強化策を実施し、周 辺住民に丁寧に説明することが大切で、再稼働時期について申し上げる段階ではない」と あらためて強調した。

 株主からは「答弁が不十分」とやじが飛び、議長の永原功会長に対する不信任動議が出 され、否決される場面もあった。修正動議では、配当を減額し、志賀原発の廃炉や再生可 能エネルギーの転換費用に充てることや、取締役11人に対する8千万円の賞与を減額す ることなどを求めたが否決され、提出された議案が原案通り可決された。

 総会終了後、株主からは「北電には安全の根拠をはっきり示してほしかった」「経営陣 に誠実さが感じられなかった」と不満の声が聞かれた。

 初めて株主総会に出席した富山市の無職男性(75)は「原発に反対していないが、経 営側が『安全』という根拠がはっきりしない。福島のような事故が起きた時、どんな対応 を取るのかをもっと具体的に示してほしい」と注文した。

 金沢市の主婦(46)は「経営陣は子供だましの回答で言い逃れをしようとしており、 誠実さが感じられなかった。もっと納得できるまで議論を深めるべきだ」と話し、南砺市 の農業男性(69)は「経営陣が身を切る覚悟で対策に当たってほしい」と求めた。

 志賀町議で志賀原発2号機運転差し止め訴訟の原告団長だった堂下健一氏は「原発事故 で今までとまったく違う状況にあるのに、原発を推進していくというのはおかしい。北電 には立ち止まって考えてほしい」と話した。

 総会前には「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」のメンバーが本店前で抗議活 動を行った。


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