孫や娘の世代が心惹かれるのはよくわかる。だが、僕の年代の女性からも支持されるキャラクターとは、いったい何なのか。不思議でならないのがミッキーマウスだ。出自やら何やらを語るのは、ファンの間では野暮な話以外の何物でもない。だから僕も語るつもりはないのだが、間違いなく言えることはある。それは、ミッキーマウスは象徴だということだ。
オールドアメリカンの象徴。勧善懲悪、健康的、ファミリーオリエンテッド。活発で饒舌で、たくさんの仲間に囲まれた人気者。そして、ディズニーブランドの象徴、つまりアメリカンコマーシャリズムの象徴。ミッキーマウスは、100年以上に及ぶグローバル化の流れのなかで、その姿を確実に変えてきた。モノクロからカラーへ。卵形の目から自然な目へ。細い顔から丸い顔へ。これは僕の持論だが、グローバルになるとものは丸くなるのだ。その意味では、変化する世界の象徴とも言える。
一方、日本にも世界の人を虜にしているキャラクターが存在する。それがキティだ。面白いのは、同じ愛されるキャラクターでありながら、ことごとくミッキーマウスとは違う、ということである。
何かの象徴、というものがほとんど思い浮かばない。日本の象徴というわけでもないし、所属するサンリオの象徴というわけでもない。しかも、その姿は生まれて30年以上、ほとんど変わっていない。ミッキーマウスが映画のヒーローだったのに対し、キティの映画は、ほとんどの人の記憶にはない。
東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。クオンタムリープ代表取締役。ソニーアドバイザリーボード議長、アクセンチュアや百度(Baidu)の取締役も務める。1960年ソニー入社。スイス、フランス赴任後、オーディオ、コンピューター事業の責任者を経て、社長、会長兼グループCEO、最高顧問を歴任。近著に『日本大転換』(幻冬舎新書)。