2011年5月3日 20時37分 更新:5月3日 23時12分
「生肉を規制しなければ、同じような惨事が起こる可能性はある」。焼き肉チェーン店を経営するフーズ・フォーラス(金沢市)が2日に開いた記者会見で、勘坂康弘社長は語った。「生肉」に関する国の衛生基準に罰則がなく、全国の焼き肉店で提供される生肉の大半は、国の基準を満たしていないとみられる。
厚生労働省によると、「生肉」に関する衛生基準は98年、「生食用食肉等の安全性確保について」として各都道府県知事などに通知。▽と畜場、食肉処理場、飲食店の各段階で専用の処理設備、器具を設けるなどの基準を満たしている▽ふん便系大腸菌群やサルモネラ菌が検出されない▽販売する場合に「生食用」と表示する--ことを要件とした。しかし、要件の専用処理施設を持つと畜場は全国で5カ所しかなく、基準に適合した「生食用」の牛肉が流通すること自体がまれで、09年度の出荷実績は0件だった。
勘坂社長は会見で、提供したユッケが基準を満たしていないと認識していたことを認めた上で、「殺菌処理しているとの前提で仕入れた肉を、独自の管理基準を作って管理し販売していた」と説明した。全国1400店が加盟する「全国焼肉協会」(東京都北区)の担当者は「『生食用』のお墨付きがある精肉が市場に出回っていないのは事実。通常の店では細菌検査や調理器具の消毒で危険性を限りなくゼロに近づけて出している」と基準を満たさない肉を「生」で提供している実態を語った。
同省もこうした実態を把握。今後、「衛生基準を満たしていない肉が生食で提供されるのは問題がある」として、都道府県を通じて基準順守の徹底を飲食店に呼びかける。【岩嶋悟、松井豊】