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中国:暴動相次ぐ 格差拡大など社会的弱者の不満が爆発

広東省広州市郊外の増城市新塘で警戒にあたる武装警察=2011年6月17日、隅俊之撮影
広東省広州市郊外の増城市新塘で警戒にあたる武装警察=2011年6月17日、隅俊之撮影

 中国で地方当局の不正や格差の拡大に抗議する大規模なデモや暴動が相次いでいる。広東省広州市郊外の増城市では今月10日から3日連続で暴動が発生し、政府機関の建物が破壊された。出稼ぎ労働者などの社会的弱者が不満を爆発させるケースが目立ち、中国指導部は7月1日の中国共産党創建90周年を前に引き締めを強めている。【増城(中国広東省)で隅俊之】

 広州市内から車で約1時間。増城市新塘はデニム製品の主要生産地で、零細工場が建ち並ぶ。日系企業の工場もある。働くのは四川省などからの出稼ぎ労働者だ。現場周辺を訪れると、暴動から約1週間が過ぎても、街頭には多数の警官が立ち、当局の街宣車が「多数が集まって国の機関を攻撃するのは違法行為だ」と拡声機で警告を繰り返していた。

 暴動のきっかけは新塘のスーパー前で10日夜、営業していた四川省出身の露天商の妊婦が治安要員から暴行を受けたことだった。中国メディアによると、抗議した目撃者らに別の治安要員が「(出稼ぎ労働者の)お前たちが死んでも(賠償金はわずか)50万元(約620万円)だ」と吐き捨てるように言ったことに出稼ぎ労働者が反発し、数千人が政府機関の建物や警察車両に放火した。

 背景には、当局の横暴に加え、物価高、格差拡大に対する民衆の不満がある。特に出稼ぎ労働者は賃金水準が低い上、都市戸籍を持っていないため、社会保障を十分に受けられない。ジーンズ工場で働く四川省出身の労働者(45)は「物価は上がり続けるのに月収は多くて2000元(約2万5000円)。生活環境は改善されない」と不満をぶちまけた。

 中国では5月ごろから内モンゴル自治区や広東省、湖北省、浙江省などで抗議デモや暴動が続発。広東省潮州市では今月上旬、四川省出身の出稼ぎ労働者への賃金未払いをきっかけに暴動が発生した。上海紙・東方早報は、四川省出身者でつくる「同郷会」が金で若者を雇って暴動を拡大させたと指摘したが、立場の弱い出稼ぎ労働者にとっては、自分たちの利益を代弁する「同郷会」に頼らざるを得ない側面もある。

 当局は暴動やデモを抑え込む姿勢を崩していない。新塘では地元公安当局が捜査協力者に5000~1万元(約6万2000~12万4000円)の報奨金を支払い、暴動に関わった人物のあぶり出しを図る。協力者が出稼ぎ労働者の場合は都市戸籍を与える「見返り」付きだ。

 今年度の国家予算で、暴動鎮圧などに使われる公安費(6244億元)は国防費(6011億元)を上回っている。暴動やデモの広がりを受け、胡錦濤指導部は格差是正に積極的に取り組む姿勢をアピールすると同時に、「社会管理」と称する引き締め策を強化している。

毎日新聞 2011年6月21日 19時39分(最終更新 6月21日 23時38分)

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