茶の放射性物質検査、出荷制限想定せず(6/ 9 08:08)

 県が国の方針に従い実施している茶の放射性物質検査について、政府から意見を求められた原子力安全委員会(班目春樹委員長)が、流通段階での規制を想定せず、飲んだり食べたりする「経口摂取する際の安全性が重要」とする意見書を原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)に提出していたことが8日、委員会の議事録で判明した。委員は暫定規制値について、荒茶や製茶の出荷制限のための基準ではないことを明言している。
 意見書は3項目から成る。「経口摂取の段階」を規制の基準とすることを最初に求め、継続的なモニタリング(データ監視)や、食品健康影響評価を踏まえた新たな規制値の策定も提案した。
 議事録によると、意見書決定のための協議は2日に行われ、厚労省輸入食品安全対策室長が「荒茶はそのまま摂取される可能性もある」と強調。室長は生茶葉と荒茶をいずれも、暫定規制値の1キロ当たり500ベクレルを基準に出荷制限する考えを示し、意見を求めた。
 最初に発言した委員は暫定規制値を出荷制限の基準にすることに異論を唱え、別の委員も「(暫定規制値を)金科玉条のごとく使うのは望ましい状況でない。新たな規制値を早く作ってほしい」とした。
 県は「中途半端な検査は不安を増大させる」として当初、荒茶検査を拒否していたが、県内茶業関係者から検査の未実施が続くことで買い控えなどが生じるとの指摘を受け、川勝平太知事が3日、政府方針に従った検査実施を表明した。

【解説】科学的根拠欠く政策判断
 茶の放射性物質検査を検討した原子力安全委員会の議事録によれば、政府が専門家の意見を十分に踏まえた政策判断をしたとは言い難い。背景に「災害対応に追われる政府が地方の声を吸い上げることができず、放射性物質と食品の安全をめぐる議論が曖昧になっている」(県幹部)実態がある。
 農薬や添加物などの規制と異なり、茶と放射性物質をめぐる調査研究は政府内で不足している。今回の検査実施は「荒茶は普通食べない」として生茶葉の検査で安全性確保が可能とする農林水産省を、食品検査を所管する厚生労働省が押し切る形で実施が決まった。
 新茶の生葉は天ぷらなどにして味わうことがある。だが、政府による「荒茶が消費者の口に入る可能性はゼロではない」との政策判断は、何をどれだけ摂取したら健康被害が懸念されるのか、明確にされていない。
 福島第1原発事故は想定外の事態であり、国民の健康維持のため食の安全に関する政策が規制強化に傾くのはやむを得ない。ただ、科学的根拠を欠いた政策判断がまかり通れば社会不安をあおり、仮に製茶が1キロ当たり500ベクレルを上回る結果となれば、県や市町、茶業界はそのダメージ回復の手だてを講ずることすら難しくなる。
 (政治部・中島忠男)

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