B細胞が肺炎球菌などに反応して活性化する仕組みを解明
−シグナル伝達を担うアダプター分子CIN85の機能が明らかに−
平成23年6月27日
免疫反応で重要な役割を担っているB細胞は、生体に侵入した細菌やウイルスなどの抗原に遭遇すると、抗体を産生して攻撃、排除します。従って、その働きが悪いと免疫不全を引き起こしてしまいますが、逆に過剰に活性化すると、アレルギーや自己免疫疾患、リンパ腫を発症します。このもろ刃の剣のようなB細胞の活性化の仕組みについては、まだまだ謎が多い現状です。1998年に研究グループは、B細胞の表面に存在するB細胞抗原受容体(BCR)が抗原を認識すると、その情報を「BLNK」と呼ぶアダプター分子が伝達することを突き止めていました。しかし、その後BLNKがどんな分子の修飾を受けてB細胞を活性化させるかについては謎のままでした。
免疫・アレルギー科学総合研究センターの分化制御研究グループは、大阪大学らと協力して、B細胞が肺炎球菌などの抗原に反応して抗体を産生するためには、別のアダプター分子「CIN85」が必須であることを解明しました。まず酵母を使った研究により、BLNKにCIN85が結合することを発見した研究グループは、CIN85欠損マウスを作製して野生型マウスと詳細に比較しました。
その結果、CIN85が免疫・炎症反応の制御に重要な「NF-κB」という転写因子の活性化に欠かせず、CIN85が存在しない場合には、病原体成分の一種であるU型T細胞非依存的抗原を投与されても、抗体を産生することができなくなることを発見しました。
CIN85によるBCRからNF-κBへのシグナル伝達経路の解明は、免疫不全や自己免疫疾患など、免疫疾患の創薬開発に貢献すると期待されます。