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閣僚人事:首相・亀井氏VS民自公 退陣圧力に抵抗

 菅直人首相が27日に断行した原発事故収束・再発防止担当相の新設などの閣僚・政務官人事は、矛盾をはらんでいる。夜の記者会見で再生エネルギー法案など3法案の成立を退陣の条件と明言しながら、今回の人事が妨げになるためだ。参院自民党議員の政務官への引き抜き工作に自民党が強く反発、独走は民主党執行部との溝も広げた。首相が会見で9月以降の続投に含みを持たせ、衆院解散を否定しなかったことも加わって「延命人事」との見方が広がり、「復興国会」の行方は一層不透明になってきた。

 「極めていいこと。今後とも徹底的に支えていきたい」。国民新党の亀井静香代表は27日、官邸で首相と会談後、引き抜きについて記者団にこう述べた。

 進言していた大幅な内閣改造にはならず、自らも副総理就任を固辞し、首相補佐官に落ち着いた。それにもかかわらず、引き抜きを高く評価したのは、大幅改造と同様の効果を秘めているからだ。

 自公両党との連携のために首相の早期退陣に動く民主党執行部をけん制したい首相と、連携による存在感低下を避けたい亀井氏の利害が一致した形。いくら首相が会見で「本人の適性とやる気」を強調しても「菅-亀井ライン」の人事であることは否めない。

 また、首相は原発事故担当相の新設にこだわり、執行部が「延命につながる」と警戒していた閣僚人事も小規模にせよ仕掛けた。両者は一定の目的を達したとみられる。

 民主党幹部は「発端は亀井氏が首相に『参院のねじれを解消するために自民党を引き込むポストが必要だ』と持ちかけたことにある」と説明する。大幅改造でポストを作り出し、そのポストで自民党議員を釣るというシナリオだった。

 参院の与党会派は与党系無所属を加えて110人。過半数は121のため、自民党から11人が転じれば、「ねじれ」は解消する。「参院が安定すれば、あわよくば続投の目もあるんじゃないかという首相の色気もあったのだろう」と参院民主党幹部は指摘した。

 民主党執行部は「ポスト菅」の政権運営もにらみながら、自公両党との与野党協議の枠組みを進めることを最優先に据える。26日に政権幹部6人が、首相は8月末の延長国会の会期末を待たずに退陣すべきだとの認識で一致したのもそのためだ。これに対し、「用済み」となることを恐れた首相が、亀井氏と組んで「解散カード」をちらつかせて抵抗している構図だ。

 人事は野党だけではなく、民主党執行部の反発も買った。安住淳国対委員長は27日、国会内で記者団に「(延命のためと)嫌悪感をもたれたらかえってマイナスになる」と不快感を表明。執行部側の党幹部は「15匹釣り上げたらあっぱれだが、釣り針たらして1匹というところだ」と冷笑した。

 「あなたはどうせもう辞めるのだから、最後に誰と一緒にやるのかよく考えたほうがいい」。亀井氏らとともに引き抜き工作にあたった民主党の石井一選対委員長は27日午前、電話で首相を鼓舞していた。【須藤孝】

毎日新聞 2011年6月28日 0時00分(最終更新 6月28日 2時04分)

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