生体腎移植を巡る臓器売買事件で逮捕された開業医、堀内利信容疑者(55)が、臓器提供を仲介した指定暴力団住吉会系組員、滝野和久容疑者(50)と金銭トラブルになった際、別の暴力団組員らに仲裁を依頼したことが新たな臓器売買のきっかけになったことが、捜査関係者への取材で分かった。仲裁依頼後にこの組員らからドナー(臓器提供者)を紹介されて、実際に移植手術を受けており、警視庁組織犯罪対策4課が経緯を調べている。
捜査関係者によると、堀内容疑者は当初、飲食店員、佐々木ひとみ容疑者(37)を通じて知り合った滝野容疑者から3人のドナー候補を紹介された。適合検査を経て元組員の坂上文彦容疑者(48)をドナーとすることを決めると、10年1月に養子縁組し、同年6月に板橋中央総合病院(東京都板橋区)で生体腎移植を受けることになっていた。
堀内容疑者は滝野容疑者側に報酬として1000万円を分割して支払ったが、移植手術を間近にひかえた5月末になって、滝野容疑者がさらに1000万円の上乗せを求めてきたため金銭トラブルに発展。手術は直前になって中止された。
堀内容疑者は、滝野容疑者からの金銭要求から逃れるために別の住吉会系組員に仲裁を依頼。これをきっかけに組員らと関係を深め、新たなドナー候補の男性(21)を紹介されたという。この際、組員らには、移植までにかかる諸経費200万円を含む計1000万円の報酬を支払ったという。
堀内容疑者は、男性が生体腎移植のドナー手続きが容易になる20歳になった直後に養子縁組を結び、昨年7月に宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で移植を受けていた。【川崎桂吾、前谷宏】
毎日新聞 2011年6月25日 15時00分