社説

東日本大震災 汚染がれき処理/早急に最終的な方針を示せ

 震災で発生したがれきは、今も多くの住宅地や市街地、港湾を覆う。岩手、宮城、福島3県のがれき総量は約2500万トンに上るとされる。
 仮置き場の確保さえ困難な状況が続く。中でも福島は特殊な事情を抱える。広範な地域で、がれきの県外持ち出しが認められていない。福島第1原発事故で放射性物質による汚染の可能性があるためだ。
 環境省は「警戒区域」と「計画的避難区域」を除く、県沿岸部と中央部のがれき処理方針をようやく決めた。汚染濃度が低いがれきについては、焼却や埋め立てを認める。これまで手を付けられなかったがれきの処理が、これで動きだす。
 一方で、濃度が高いがれきの最終的な取り扱いや、焼却灰の処分場の建設をどう進めるかなどは、全く決まっていない。
 がれき処理は復興への第一歩。原発事故に振り回される地元住民の心情に十分配慮し、誰もが納得できる処理の在り方を早急に打ち出すべきだ。
 県内でも汚染レベルが低い会津地方と、中通り地方南部の10町村については、通常のがれきと同じ処理が認められてきた。だが、それ以外の地域については対応が遅れに遅れた。
 環境省が5月上旬に「当面がれきの移動、処分を行わない」よう要請した後、一向に方針が定まらなかった。地元の不満が募る一方だったのは当然だ。
 今回決まった処理方針によると、木くずなどの可燃物は、放射性物質を含むばいじんが外部に漏えいしないよう、排ガス処理用のフィルターを備えた施設での焼却を認める。
 放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8千ベクレル以下の不燃物や焼却灰は、一般の最終処分場での埋め立てが可能とした。
 8千ベクレルをめどとしたのは、この値だと、埋め立てに従事する作業員の年間被ばく線量が、一般人の年間限度の1ミリシーベルトを超えないとされるためだ。
 問題なのは、汚染濃度がより高い場合。コンクリートなどで放射線を遮蔽(しゃへい)できる施設に一時保管することになった。最終的な処分方針は決まっていない。早急な対応が求められる。
 環境省は、高濃度汚染の焼却灰などの最終処分場を福島県内に建設するよう要請している。これに対し、県側は断固拒否する姿勢を示す。
 佐藤雄平知事は県内での最終処分について、「あり得ない」と強くけん制。「原子力政策はしっかり国で考えてほしい」と注文をつけた。
 「福島県内で起きたことなので、県外に最終処分場を造ることは考えにくい」というのが環境省の見解だが、理不尽な押しつけは到底、容認できない。
 また、原発から半径20キロ圏内の警戒区域と、隣接する計画的避難区域でのがれき処理は、依然白紙の状態。方向性だけでも一刻も早く示すべきだ。
 安全性確認のため、処理施設周辺の放射線量や地下水などの調査なども強化する必要があろう。これ以上県民に負担をかけないよう、迅速かつ慎重に問題に対処してもらいたい。

2011年06月28日火曜日

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