2011年6月28日 11時34分 更新:6月28日 11時35分
東京電力福島第1原発事故で計画的避難区域に指定された福島県飯舘村で飼育されていた和牛の最後の競りが28日、同県本宮市の県家畜市場であった。成牛234頭と子牛51頭が競りにかけられ、通常ならまだ競りに出されない生後半年足らずの子牛もいた。畜産農家たちは愛情をかけて育てた牛の頭をなで、別れを惜しんだ。
競りに参加した菅野今朝男さん(63)は県内和牛の「美人コンテスト」で2位になった雌牛を、先月生まれた雄の子牛と一緒に手放した。雌牛の目尻に涙がたまっているのを見て、ぽつりと言った。「牛にも別れが分がんだろうな。せめて牛を大切にする人に買ってほしい」。月内に村を離れ、隣の伊達市で避難生活を始める。
牛を抱えて避難できない畜産農家を助けようと、臨時の競りが5月下旬から計4回開かれ、約1600頭が競りに出された。原発事故の前に比べて値段は5~10%下がったという。【高瀬浩平】